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気候危機:国連事務総長、クリーンエネルギーへの移行に向けた解決策の青写真を提示(UN News 記事・日本語訳)

2026年07月13日

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「ロンドン気候アクションウィーク」で、他の野心的な対策とともに、データセンター使用に環境フットプリントが伴うことをAI企業が「明らかにすべき」時が来たと強調した(2026年6月23日)
United Nations/Florence Mondou

執筆者・ダニエル・ジョンソン

2026623 人命に関わる熱波がヨーロッパに居座る中で、アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日、取り返しのつかない被害を防ぐため、化石燃料に起因する気候変動に対処する野心的なグローバル・アクションを求める熱烈なアピールを発しました。

「ロンドン気候アクションウィーク」での重要な基調演説で、事務総長はデータセンターがカーボンフットプリント、ウォーターフットプリント、土地フットプリントという点で環境に与えている影響の全体像を「明らかにする」ようAI企業に求めました

事務総長はまた、世界の石油への依存が気候危機とエネルギー主権危機の両方を助長していることも明らかにしましたが、後者はホルムズ海峡での海運の大混乱や、イランとイスラエル、米国が関与する戦争にも関連しています。

グテーレス事務総長は「気候危機とエネルギー危機は、別々のように見えるかもしれませんが、その破壊的な起源は共通しています。それは、化石燃料です。そして、求められる解決策も同じです。クリーンエネルギーへの迅速かつ公正な移行、気候変動の被害に既に直面している人々のための適応策、レジリエンス(強靭性)、気候正義の推進です」と述べ、政治的リーダーシップによって、有鉛ガソリンの段階的廃止や、オゾン層を破壊する化学物質の禁止に必要となったものと同様のグローバルな変革を推進するよう求めました。

概要:化石エネルギーへの依存からの脱却に向けた国連の計画

  • 排出量の急速な削減:メタンによる汚染の抑制を図るグローバルな取り組みなどを通じ、温室効果ガスの排出量を今すぐ頭打ちにし、2050年までにネット・ゼロを達成しなければなりません。
  • クリーンエネルギーへの転換の加速:再生可能エネルギーの普及を継続し、化石燃料プロジェクトに対する補助金を廃止し、化石燃料による利益に課税することで、脆弱なコミュニティーとエネルギー移行を支援しなければなりません。
  • AIのクリーン化:大手AI企業に対し、データセンターの環境への影響を開示し、2030年までにその電源を再生可能エネルギーで賄うよう要求しなければなりません。
  • 公正な移行の確保:クリーンエネルギーへの移行で雇用を創出し、コミュニティを支援するとともに、開発途上国に開発の恩恵が及ぶようにしなければなりません。
  • 気候レジリエンスの推進:適応や早期警報システムなど、気候変動の影響を最も受けやすい人々を守るための対策への投資を増やさねばなりません。
  • 公正な資金供与:開発途上国がクリーンエネルギーや気候変動への適応、持続可能な開発に投資できるよう、利用しやすい資金の供与を拡大しなければなりません。
  • 科学と真実の擁護:科学への信頼を高め、気候にまつわる偽情報と闘い、環境関連のジャーナリストと人権擁護活動家を守らなければなりません。

地球の転換点

世界のリーダーたちがパリに集い、世界の気温上昇を産業革命以前の水準から1.5°Cに抑えることに合意してから、10年以上がたちました。そこには国連の主導による国際的連帯が見事に表れていました。米国が今年1月、再び正式に離脱したとはいえ、パリ協定は現在も有効であり、国連の支援を受けた科学者たちは、年間平均気温が今後数年で、この水準を超える可能性が高いと警告しています。

「気温がほんのわずかに上昇しただけでも、重大な問題です」と事務総長は強調し、水温の上昇でサンゴ礁が生息できなくなり、取り返しのつかない被害が生じたり、氷床が融解して海岸線がその形を変え、何百万もの人々が故郷を離れることを余儀なくされたり、現実的可能性として、波の底に消えてしまう小島嶼国が出てきたりする事態が生じかねないと警告しています。

この人類の存亡に関わるシナリオに直面し、グテーレス事務総長は「オーバーシュートを最低限に抑え、その期間を短縮し、できるだけ早期に気温上昇を1.5°C未満に抑え込むことが、私たちの任務」だと主張しました。

「あらゆるエネルギー・ショックの元凶」

事務総長は、スイスで行われているイラン・米国間の交渉を継続できるよう、戦闘行為が60日間停止されたことに言及し、「どのような和平合意も歓迎でき、また、絶対に必要な安心感につながるもの」だとしたうえで、中東危機が1970年代の石油危機とロシアによるウクライナの全面侵攻に匹敵する「あらゆるエネルギー・ショックの元凶」を解き放ったと指摘しています。

中東戦争が先進工業国に大きな被害を及ぼしている一方で、事務総長は開発途上国がそれをさらに上回る打撃を受けていると断言しました。

事務総長はロンドンの聴衆に向けて、「それは債務ショックであり、食料ショックであり、開発ショックでもあります」と事務総長は語りました。

再生可能エネルギーによる公正な未来

「よい知らせもあります。過去のエネルギー危機とは異なり、今の私たちには明らかな、そしてクリーンな出口があるからです」事務総長はこのように続けました。

事務総長によると、2010年以降、太陽エネルギーのコストはほぼ90%、陸上風力発電のコストは70%以上、そしてバッテリーエネルギー貯蔵のコストは95%、それぞれ低下しています。

グテーレス事務総長は、再生可能エネルギーによって、米国、欧州連合(EU)、日本を合算した年間排出量を超える二酸化炭素の排出が回避されていると述べたうえで、現在では化石燃料のほぼ2倍に相当する投資がクリーンエネルギーに向けられていると付け加えました。

「太陽光に禁輸措置は存在せず、風力に封鎖措置は存在しません」と事務総長は語っています。

エネルギー自立に向けた7項目計画

事務総長は、化石燃料のクリーン化に向けた青写真の一環として、7つの重点項目を取りまとめています。

1: 排出量を今すぐ頭打ちにし、2020年代のうちに急速に減少させることにより、2050年までにネット・ゼロを達成しなければなりません。グテーレス事務総長は、世界全体の排出量の約80%を占める先進20カ国グループ(G20)がその「先頭に立たなければならない」と述べています。野心的な対策として、グローバルな「メタンに関する行動喚起」は、二酸化炭素のおよそ80倍の熱を吸収しながら、わずか10年か20年のうちに大気圏で分解するメタンの排出量削減を目指しています。

「世界は有鉛ガソリンを段階的に廃止しました。私たちはオゾン層破壊化学物質を全廃しました。次はメタン汚染を終わりにしなければなりません」と、事務総長は強調しています。

2: クリーンエネルギー・プロジェクトを促進するとともに、新規化石燃料プロジェクトへの公的助成金を廃止すべきです。グテーレス事務総長は「世界最大の化石燃料企業8社は今年の第1四半期だけで、さらに65億ドルの収益増を計上しています。…脆弱な家族やコミュニティーを支援し、クリーンで安価なエネルギーへのシフトを図るため、私はこれに対して課税するよう、各国政府に要請します」と述べています。

3: 大手AI企業はそれぞれ、データセンターの「環境への影響」、すなわちそのカーボンフットプリント、ウォーターフットプリント、土地フットプリントを「測定、公開」するとともに、2030年までに各データセンターの電源を再生可能エネルギーとすることを約束すべきです。現時点で、AIデータセンターはすでに、大半の国よりも多くの電力を消費しています。事務総長は「今こそそのことを明らかにすべき時」だと指摘しています。

事務総長によると、AIデータセンターは2030年までに、サハラ以南アフリカの住民13億人の基本的ニーズに必要な水1年分に匹敵する量を消費することになるおそれがあります。

4: 「開発なき採掘は止めること」:グテーレス事務総長は、トルコで開催された第31回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP31)で提言されたとおり、あらゆる場所の労働者とコミュニティー、そして開発途上国にも資する形でのクリーンエネルギーへの移行に対する支援強化を求めました。事務総長は「こうした移行が進んでいること自体は、疑いがありません」と強調した上で、「問題はそれが管理されているか野放しになるのか、公正なものになるのか不平等なものになるのか、安定をもたらすのか分断をさらに深めることになるのかという点にあります。私たちにはその選択を行う責任が残っています」と付け加えました。

5: 最も大きなリスクにさらされている人々を、気候カオス(大混乱)から守ること。そのためには、その適応を支援する必要があります。なぜなら、これによって「人命が救われ、家やコミュニティーが守られ、経済がショックを吸収し、社会の連帯を保つことに役立つからです」とグテーレス事務総長は主張し、ショックが人道的、経済的な大災害へと発展する前に、緊急事態対応システムを確立する必要があると付け加えました。事務総長はさらに、先進国が「気候適応資金の供与を倍増させるとともに、さらにそれを3倍に増やす明確な方向性を示すという長年の約束」を果たさねばならないとも述べています。

6: 化石燃料の段階的廃止と、グリーン移行をスケールとスピードをもって支援するため、公正な金融を支援しなければなりません。多くの開発途上国は、経済的に豊かな国々の2倍から3倍に上る借入コストに直面しているからです。

事務総長は「再生可能エネルギーを活用できる可能性が高い国が、クリーンエネルギー革命から締め出されているのが現状です」と指摘し、その例として、世界で最も有力な太陽エネルギー資源の60%を有しながら、クリーンエネルギー投資全体に占める割合がわずか2%に過ぎないアフリカ諸国を挙げました。

グテーレス事務総長は、世界銀行などの多国間開発銀行には、6,000~8,000億ドルの追加的融資能力があることを明らかにしました。そして、この能力は、排出量の多い部門への課税など、他の投資措置とともに、将来のインフラ整備と気候変動への適応のための資金として「積極的に」活用すべきだと主張しました。

また、事務総長はさらに続けて、損失・損害対応基金や緑の気候基金への支援を含め、「先進国はその約束を守らねばならない」とも述べ、開発途上国に対する誓約額3,000億ドルを供与するとともに、2035年までに年1.3兆ドルを動員するための具体的なステップを踏まねばならないと指摘しています。

7: 最後に、事務総長は真実と早期警報システムの基盤としての科学への支援を要請するとともに、「気候変動対策を遅らせ、既得権益を固定し、信頼を損なう目的で、偽情報が故意に拡散されている」ことから、気候変動に関する嘘への対策を強く促しました。

グテーレス事務総長は、人権擁護活動家や気候と環境について報道するジャーナリストを保護し、エビデンスや制度機構に対する信頼を高めるべきだと主張し、この目標を達成するため、国連と国連教育科学文化機関(UNESCO)、ブラジルの主導により「気候変動に関する情報の誠実性のためのグローバル・イニシアチブ」が発足していることに言及しました。

キューの木々からの警告

同日、キュー王立植物園から国際メダルを授与された事務総長は、グローバルな科学と保全の拠点となっている同植物園に敬意を表する一方で、気候危機が自然界に既に大きな被害を及ぼしていると警告しました。事務総長は2022年の干ばつにより、キュー植物園では400本を超える樹木が失われ、園内の多くの植物種がますます大きなリスクに直面していることに言及しながら、自然と人類は運命共同体であると語りました。

事務総長は、化石燃料への依存を終わらせ、再生可能エネルギーへの移行を加速させると同時に、森林を保護し、劣化した生態系を回復し、海洋を守り、科学を擁護しなければならないことを強調しています。「気候危機の影響がキューの大木にまで及んでいることは、私たち全員に対する警告なのです」事務総長はこのように述べ、人間と地球の双方にとって、より安全で持続可能な未来を確保するための一助として、自然に基礎を置く解決策への投資拡大を要請しました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。