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国連の新たな諮問機関、共通善のためのAIの活用を目指す(UN News 記事・日本語訳)

2023年11月21日

諮問機関は、AIの国際的なガバナンスについて提言を行うことが期待されている © Unsplash/Steve Johnson

2023年10月26日 — 政府、民間セクター、テクノロジー、市民社会、学術界の各分野の経験豊富な専門家たちが、人工知能(AI)が人類のより大きな利益のために活用されることを目指す国連の取り組みを支援する任務に就くことになりました。

アントニオ・グテーレス国連事務総長が10月26日に立ち上げたAIに関する諮問機関のメンバーは、これらのテクノロジーのリスク、機会、そして国際的なガバナンスについて検討を行う予定です。

事務総長は、チャットボット、音声クローン技術、画像生成ソフト、動画アプリなどを通じて、この一年でAIの能力と利用状況に著しい進展があったと指摘しました。

グローバルな目標を「大きく加速」させる

事務総長は、「AIがもつ善のための変革を生み出す可能性の大きさは、把握することさえ困難だ」と述べ、各国が気候変動の影響に直面し、持続可能な開発に向けた取り組みが停滞している中で、この問題に緊急に取り組む必要があることを強調しました。

「AIには状況を好転させる可能性があります。AIは気候行動や、2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標を達成するための取り組みを大きく加速させる可能性がある」と事務総長は述べました。

事務総長は、危機の予測と対処から、公衆衛生・教育サービスの展開に至るまで、AIが各国政府、市民社会、そして国連の活動を拡大・増強させる可能性があると考えています。

可能性と危険性

開発途上国にとって、AIは「時代遅れのテクノロジーを飛び越えて、ニーズがより大きく、最も必要としている人々に、直接サービスを提供できる可能性」を示しています。

しかしそれは、AIが責任ある形で活用され、すべての人が利用できるようになるか否かにかかっていると、事務総長は付け加えました。

現在、AIの専門知識は一握りの企業や国に集中しており、それが「グローバルな不平等を深刻化させ、デジタル格差を亀裂へと変えてしまう」おそれがあると、事務総長は警鐘を鳴らしました。

引き起こされるおそれのある損害には、誤情報や偽情報の拡散の加速化、偏見や差別の定着、監視やプライバシーの侵害、詐欺、その他の人権侵害などが挙げられます。

国連事務総長の「シュールな体験」

さらに、AIの悪意のある利用によって、制度に対する信頼が損なわれ、社会的な結束が弱められ、民主主義が脅かされるおそれがあります。

グテーレス事務総長は、AI諮問機関の発足に関する会見の冒頭で、ある動画アプリによる自身の「シュールな体験」について語っています。事務総長は中国語を話さないにもかかわらず、そのアプリでは自身が完璧な中国語でスピーチを行い、唇の動きも一語一語とシンクロしていたというのです。

「これはAIの計り知れない可能性と潜在的な危険性を示す、ほんの一例にすぎない」と事務総長は述べました。

諮問機関について

AIに関する諮問機関は、世界中の39名の専門家で構成されています。メンバーはジェンダーのバランスがとれており、地理的にも多様で、多世代にわたっています。【*メンバーには日本から2名が選ばれています】

諮問機関は、AIの国際的なガバナンス、リスクと課題に関する共通理解、そしてSDGsを加速させるためのAI活用の鍵となる機会と実現手段、の各分野について年内に提言を行う見通しです。

提言は、持続可能な開発へのコミットメントの再確認を目的として2024年9月に開催される「未来サミット」の準備や、特に、新たなテクノロジーの時代に誰もが恩恵を受けられるようにすることを目的として策定される予定の「グローバル・デジタル・コンパクト」をめぐる交渉にも反映されます。

効果的なAIガバナンスに向けて

アマンディープ・シン・ギル国連事務総長技術特使は、グローバル・ガバナンスにおける取り組みがAIの進展に追いついていない現状を踏まえて、専門家たちが誤情報や偽情報に打ち克つにはどうすればよいかを尋ねられました。

ギル特使は、テクノロジーが社会、経済、政治にどのように影響を与えているかについての最新の知見をメンバーたちが持ち寄り、「そうすることで、私たちはテクノロジーの進歩、つまりテクノロジーの最前線と、ガバナンス対応の最前線とのギャップを縮めることができるだろう」と答えました。

またメンバーは、AIガバナンスをより効果的なものとするために、こうした新たな課題への対応だけでなく、既存のギャップについても検討を行う予定です。

「これ(諮問機関)はその方向性へ向けた第一歩であり、私たちは、来年はこうした取り組みをより多く進めていきたいと考えている」とギル特使は語っています。

「グローバル・デジタル・コンパクトには、こうした取り組みをより多くの持続可能な長期的視点で組み込むことで、テクノロジーの急速な発展に不意を突かれることがないようにする機会があるのです」

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原文(English)はこちらをご覧ください。