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北朝鮮の人権に関する調査委員会 Q&A

プレスリリース 13-057-J 2013年08月26日

朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の人権に関する国連調査委員会

調査委員会に関するQ&A

1)朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の人権に関する国連調査委員会は、どのような経緯で設置されたのですか。

調査委員会(COI)は、韓国NGOと国際的人権NGO、さらにはDPRKの人権状況に関する国連特別報告者を務めるマルズキ・ダルスマン氏による近年の積極的な働きかけを受け、国連人権理事会が2013年3月に設置しました。今年の1月中旬、ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官は、DPRKで数十年間にわたって続いているとされる深刻な犯罪に関し、本格的な国際調査を求めました。高等弁務官は、人権理事会と総会がともに、DPRK政府による組織的な人権侵害を強い言葉で非難する決議を再三にわたり全会一致で採択していることを指摘したうえで、さらに断固とした行動を取るべき時期はすでに訪れており、独立の国際的調査の開始は極めて有意義な第一歩になりうると述べました。ジュネーブで開かれた第22回人権理事会は2013年3月22日、日本と欧州連合(EU)の共同提案による決議に基づき、調査委員会の設置を承認しました。委員会は1年間の任期で、特に人道に対する罪に相当しかねない人権侵害につき、全面的なアカウンタビリティ(説明責任)の確保を目的に、DPRKにおける組織的、広範かつ重大な人権侵害について調査する任務を与えられました。人権理事会は5月7日、マイケル・カービー(オーストラリア)、ソニア・ビセルコ(セルビア)およびマルズキ・ダルスマン(インドネシア)の3氏を委員に任命すると発表しました。委員長はカービー氏が務める一方で、ダルスマン氏は委員会の活動中、DPRKの人権状況に関する特別報告者を引き続き務めることになっています。3人の委員は2013年7月1日、ジュネーブで初会合を開きました。委員3人の経歴をまとめた文書もご覧になれます。

2) DPRKの人権に焦点を当てた調査は、国連としてはこれが初めてですか。

人権理事会を含む国連の人権機構は長年にわたり、DPRK情勢をつぶさに監視しています。DPRKは条約機関や、主要な国際人権条約の履行を監視する独立専門家委員会により、他の国連加盟国と同じレベルの精査を受けています。条約締約国にはそれぞれ、条約に定める権利をすべての国民全体が享受できるようにするための措置を講じる義務があります。DPRKは、助言、所見および提言を提示するこれら委員会の監視対象となっています。国連人権理事会は2004年、DPRKの人権状況に関する特別報告者のポストを創設しました。それ以来(他に国別報告者の対象となっているのは12カ国のみ)、歴代2人の特別報告者がDPRKの人権状況に関し、人権理事会と総会の双方に定期的な報告を行ってきました。DPRKの人権状況に関しては、国連事務総長と国連人権高等弁務官もともに報告を行っています。DPRKは2009年、国連全加盟国の人権事情を審査する人権理事会独自のプロセス「普遍的・定期的レビュー(UPR)」でも検討対象となりました。 DPRKは人権上の義務につき、いくつか一般的な約束はしたものの、他の国々から出された提言を明確に受け入れることはありませんでした。また、DPRKに関する特別報告者にも、同国訪問を希望するその他の特別報告者にも協力していません。こうした事情から、人権理事会は調査委員会の設置を決議しました。この委員会の設置は、人権侵害の疑いを裏づける文書を作成し続けた多くの国内・国際NGO、ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官、同国の状況に対する国際的な関心の喚起に努めた現特別報告者兼調査委員会メンバーのマルズキ・ダルスマン氏による尽力の賜物でもあります。

3)委員会はどのような人権侵害を調査するのですか。

人権理事会決議22/13によると、調査対象となる侵害には、食料への権利に関するもの、拘禁施設に関連するもの、拷問と非人間的な処遇、恣意的拘束、差別、表現の自由の侵害、生命に対する権利の侵害、移動の自由の侵害、および、外国人の拉致をはじめとする強制失踪が含まれています。委員会はその任務に従い、こうした侵害がどの程度、人道の罪に相当しうるのかについても調査します。

4)DPRKは委員会に協力していますか。委員会は同国を訪問しますか。

人権理事会は委員会の設置にあたり、DPRK政府に対しても、人道援助の全面的、迅速かつ支障のないアクセスを確保し、特別報告者と調査委員会に全面的に協力するよう強く促しました。委員会はDPRK訪問を要請しています。しかし、委員会は今のところ、前向きな回答を受け取っていません。

5)委員会はその責務をどのように果たしていくのですか。

委員会は独立かつ公正に、先入観を持たずに調査に臨みます。また、DPRK政府にも発言と証言への回答の機会を与えるため、呼びかけを行っていますが、今のところ前向きな回答は得られていません。DPRKにアクセスできないことから、委員会は8月後半、ソウルと東京で公聴会を開き、さまざまな証人から情報を収集することを決定しました。公聴会に加え、委員会は人権侵害の疑いに関する証人や被害者との面談も数多く行います。さらに、両国では政府高官やNGO、研究機関との会合も開かれる予定です。

6)委員会が聞き取り調査の公開を決定したのはなぜですか。

委員会がソウルと東京での公聴会開催を決定したのは、その任務に関連する情報を収集し、DPRKの人権状況に国際的な関心を集めるためです。公聴会のプロセスは、透明性の原則に則って進められる一方で、被害者がその体験を安心して話せる環境も整備されています。DPRKに対しては、当初一連の公聴会への出席を呼びかけていますが、回答は得られていません。

7)世論の関心の高まりは、北朝鮮の人権状況をどのように改善しますか。

韓国でのテレビ番組を含め、DPRKの人権状況については数多くの証言が得られているにもかかわらず、世界ではこの問題の大きさがほとんど認識されていません。公聴会での証言により、調査委員会は一般的な国際世論だけでなく、国連加盟国の間でも、この問題に対する認識が高まるものと期待しています。人権理事会の全メンバー国が、公聴会の模様をビデオで閲覧できる予定です。最終的に、証言は適切なウェブサイトに掲載され、一般市民と国際社会がオンラインで閲覧できるようにする予定です。

8)委員会は収集した情報をどのように処理するのですか。

委員会設置に関する決議22/13は、2013年9月の第24回国連人権理事会と10月の第68回国連総会で進捗状況を口頭で報告するよう委員会に要請しています。完全版の最終報告書は2014年3月、第25回人権理事会に提出される予定です。人権理事会は最終報告書を検討するとともに、これを適切な国連機関に回付し、フォローアップを求めることをすでに約束しています。

9)2014年3月に人権理事会へ最終報告書を提出した後はどうなりますか。

調査委員会は人権理事会への最終報告書に、その結論と人権理事会への提言を盛り込みます。COIはDPRKその他の関係国や、国連システム機関その他の国際機関にも提言を出す決定を下す可能性があります。提言をどのように受け入れ、実施するかについては、提言の対象国・機関が決定します。

10)委員会の活動はどのように「完全なアカウンタビリティ」の確保に役立つのですか。

COIは人道に対する罪の可能性を含め、特にアカウンタビリティ(説明責任)の問題に着目しています。委員は、様々な人権侵害の疑いの全貌を明らかにする決意を固めています。このような人権侵害が起きたことを確認できる範囲で、委員会は、様々な国家機関や当局者がどの程度の責任を負うのかに関する判定にも努めます。しかし現状では、責任の線引きができたとしても、COIがどれだけ詳細にこれを成し遂げられるのかを予測することは不可能です。

11)ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官は、委員会の設置を「極めて有意義な第一歩」として、さらに次のステップがありうることを示唆しています。これは国際刑事裁判所(ICC)を通じたものを含め、さらに進んだ法的措置の可能性が念頭に置かれているという意味ですか。

COIの設置自体が本格的なプロセスの開始を示唆するものです。国際社会がそれ以上の行動を取らないとすれば、驚きと落胆を呼ぶことでしょう。具体的にどのような形の行動が取られるかを現時点で予測することはできません。今後のことはほとんど、COIの調査結果、そこから引き出される結論と提言、そして、委員会の提言を実施に移すか、移さないかに関する国連の担当機関およびその他の国際諸機関の決定にかかっています。人権理事会はすでに、委員会の報告書を適切な国連機関に回付し、フォローアップを求めることを約束しています。

委員会は独立かつ公正に、先入観を持つことなく調査に臨みます。このため、COIが現段階で、人道に対する罪の疑いに関するICCの管轄権を確定できるかどうか、または、これをどのように確定できるかについてコメントすることは適切ではありません。ローマ規程によると、ICCは当事国がローマ規程の締約国であるか、ICCの管轄権を受け入れる宣言を発した場合(いずれも現時点ではDPRKに当てはまりません)、または、国連安全保障理事会が国連憲章第7章に基づき採択した決議により、事案をICCに付託した場合にのみ、人道に対する罪を審理することができます。

2013年8月16日

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