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COP26、気候に関する「妥協」協定とともに閉幕するも、国連事務総長は「不十分」と指摘(UN News記事・日本語訳)

2021年11月30日

©UN News/Laura Quiñones

 

2021年11月13日-およそ200カ国が参加してグラスゴー(スコットランド、英国)で開催されたCOP26気候交渉は、会期を1日延長した上で、13日に成果文書を採択しました。成果文書についてアントニオ・グテーレス国連事務総長は「今日の世界の利害や矛盾、政治的意思の状態を反映している」と述べました。

「重要な進展があったとはいえ、まだ不十分です。私たちは、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという目標を維持するために気候変動対策を加速させなければなりません」グテーレス事務総長は、2週間に及んだ会議の閉幕にあたって発表されたビデオ声明の中でこのように語りました

事務総長は、今こそ「緊急事態モード」に移る時だと述べ、化石燃料への補助金を廃止し、石炭の利用を段階的に廃止し、炭素に価格をつけ、脆弱なコミュニティーを守り、1,000億ドルの気候変動対策資金のコミットメントを果たすよう呼びかけました。

「COP26ではこうした目標を達成できませんでした。しかし、前進するために必要ないくつかの基本要素はできています」とも述べました。

グテーレス事務総長はさらに、若者、先住民コミュニティー、女性リーダーたち、そして気候変動対策支持者を先導するすべての人々に向けてメッセージを送りました。

「私は、皆さんの多くが失望していることを知っています。しかし、前進するための道筋は必ずしも真っすぐではありません。時には回り道もあります。時には溝もあります。しかし、私たちはそこにたどり着けると、私は知っています。私たちは、自分たちの命のための闘いの真っただ中にいるのです。決して諦めないでください。決して後退しないでください。前進し続けようではありませんか」

合意の概略

「グラスゴー気候合意」と呼ばれる今回の成果文書は197の国と地域に対し、2022年にエジプトで開催予定のCOP27で気候変動に対するより野心的な目標を目指す自国の進捗状況を報告するよう求めています。

また、今後10年間の気候変動対策を加速させるという世界的合意も強化しました。

しかし以前の草案にあった「排出削減対策を講じていない石炭火力発電所の廃止、および化石燃料への非効率的な補助金の段階的廃止」という文言が弱められることとなったインドと中国による採択直前の気候合意の変更を発表した際に、COP26のアロック・シャルマ議長は声を詰まらせました。13日に採択されたように、その文言は、石炭の使用を「段階的に削減する」に修正されたのです。

シャルマ議長は「このような展開になったこと」を謝罪し、最終合意により強い文言が盛り込まれなかったことに「深く失望している」代表団がいることを理解している、と述べました。

COP26の成果文書を構成する多岐にわたる決定、決議、声明のその他の文言により、各国政府は、自国の排出量削減計画の更新期限をより厳しくすることを特に強く求められました。

開発途上国の気候変動対策を支援するための資金を先進国が融資するという難題について、成果文書は「開発途上である締約国への支援を年間1,000億ドル超へ大幅に増やすことを含め、パリ協定の目標達成に必要なレベルに到達するためにあらゆる資金源から」気候変動対策資金を集める必要がある、と強調しています。

グラスゴー(スコットランド、英国)で開催された国連気候会議が閉幕、パトリシア・エスピノーサ国連気候変動枠組条約事務局長(中央やや左)とアロック・シャルマCOP26議長(中央右に着席)©UNFCCC/Kiara Worth

 

1.5℃を維持するも「勢いは弱弱しい」

「交渉というものは決して容易ではありません。これがコンセンサスとマルチラテラリズム(多国間主義)の本質です」と、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のパトリシア・エスピノーサ事務局長は語りました

この2週間に行われたすべての発表に続いて、それらを実施するための「計画と細則」が示されることを期待しているとエスピノーサ事務局長は強調しました。

事務局長は、とりわけ適応に関するいくつかの前進を認めた上で、「私たちが成し遂げたことを喜びつつも、これから起こることに備えましょう」と述べました。

一方、アロック・シャルマCOP26議長は、代表団は、1.5℃目標を達成可能な範囲に維持したと「自信を持って」言えると述べました

「しかし、その勢いは弱弱しいものです。そして、その勢いは私たちが自らの約束を守ることでようやく保たれるのです。コミットメントを迅速な行動に移し、 このグラスゴー気候合意で設定した期待を現実のものとし、2030年とそれ以降に向けて野心を高めることで、そして、埋めなければならない、残された大きなギャップを埋めることで、ようやく保たれるのです」と、シャルマ議長は代表団に語りました。

議長はまた、ミア・モトリー首相が会議の前半に語った、バルバドスやその他の小島嶼国にとって「2℃は死刑宣告である」という言葉を引用しました。このことを念頭に置き、シャルマ議長は、資金の流れを作り、適応を促進する取り組みを継続するよう代表団に求めました。

そして最後に、歴史はグラスゴーでつくられたという言葉で締めくくりました。

議長はさらに、次のように宣言しました。「私たちは今、次の段階として、グラスゴー気候合意で一緒にかつ厳粛にコミットしたことを成功させる計画の立案に、万全を期さなければなりません」

「一番まし」な成果

合意採択を協議する最終全体会合の冒頭、多くの国々が、合意された一連の決定では不十分だと落胆しました。「失望している」と表現した国もありましたが、全体的には、現時点で合意し得る内容と各国の違いを考慮すると、バランスが取れていることを認識した、と語りました。

ナイジェリア、パラオ、フィリピン、チリ、トルコなどの国々はすべて、不完全な点はあるものの、概ねこの成果文書を支持すると述べました。

「前に進むための漸進的な一歩ですが、必要とされる前進に沿ったものではありません。モルディブにとっては手遅れになるでしょう。協定はモルディブ人々の心に希望をもたらすものではありません」と、モルディブの交渉責任者はほろ苦さをにじませたスピーチの中で語りました。

米国のジョン・ケリー米国気候問題担当大統領特使は、この成果文書を「力強い声明」と表現し、交渉責任者たちの合意が最も困難であることが判明した「損失と被害」、そして適応という2つの問題の対話にあたって、米国が建設的に参画することを各国の代表団に明言しました。

「この文書は、『一番まし』な成果を表すものと言える」と、ニュージーランドの交渉責任者は総括しました。

COP26におけるその他の主な成果

政治交渉やリーダーズ・サミット以外に、約5万人がオンラインや対面でCOP26に参加し、革新的なアイデアや解決策を共有したり、文化イベントに参加するなどして、パートナーシップや連携を育みました。

COP26では、心強い多くの発表がありました。最も大きなものの一つは、貧困に終止符を打ち地球の未来を守るという、持続可能な開発目標(SDGs)の達成期限である2030年までに、森林破壊を止め、森林を元に戻すことを、世界の森林の約90%を有する120カ国以上のリーダーたちが誓約したことでした。

また、温室効果ガスであるメタンの排出量を2030年までに削減することを、米国と欧州連合(EU)が主導し、100カ国以上が合意した「メタン・プレッジ」も発表されました。

一方、ポーランド、ベトナム、チリなどの主要な石炭使用国を含む40カ国以上が、二酸化炭素排出量が最も多い燃料の一つである石炭からの転換に合意しました。

民間セクターもまた強い関与を示しました。500社近いグローバル金融サービス企業が世界の金融資産の約40%に相当する130兆ドルを、地球温暖化を1.5℃に抑えるなどのパリ協定で定められた目標と連携させることに合意したのです。

そして多くの人を驚かせたのは、米国と中国が向こう10年にわたって気候変動対策での協力体制を強化するという誓約です。両国は、メタン排出量やクリーン・エネルギーへの移行、脱炭素化などのさまざまな課題に対策を講じることで合意したことを、共同宣言で発表しました。さらに両国は、1.5℃目標を維持することへのコミットメントも再度述べました。

グリーンな輸送に関しては、100以上の中央政府、都市、州、主要自動車会社が、主要市場では2035年までに、全世界では2040年までに、内燃エンジンの販売を終了するという「Glasgow Declaration on Zero-Emission Cars and Vans(ゼロエミッション車とバンに関するグラスゴー宣言)」に署名しました。 また、少なくとも13カ国が、2040年までに化石燃料を動力源とする大型車の販売を終了することも約束しました。

この2週間のうちに、“小規模”ながら同様に人々を鼓舞する多くのコミットメントが出され、その中には11カ国による「脱石油・ガス連盟(BOGA)」の設立が含まれます。アイルランド、フランス、デンマーク、コスタリカなどの国々と一部の地方政府は、国家による石油とガスの探査・採掘の終了日を設定するという、この種で初めての同盟を発足させました。

グラスゴー(スコットランド、英国)で開催されたCOP26で、出席者たちが色とりどりの葉っぱの形に書いて吊るした、世界のリーダーたちに向けた約束や請願のメッセージ ©UNFCCC/Kiara Worth

 

これまでの経緯の概要

COP26を簡単に説明すると、迫り来る気候緊急事態を回避すべく国連が数十年にわたって進めている取り組みの中で、最新かつ最も重要なステップの一つです。

国連は「地球サミット」と呼ばれる大規模なイベントを1992年にリオデジャネイロで開催し、そこで採択されたのが、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)です。

各国はこの条約で、「大気中の温室効果ガス濃度を安定させ」て、人間活動による気候システムへの危険な干渉を防ぐことに合意しました。現在、197の国と地域がこの条約に調印しています。

国連は、同条約が1994年に発効して以来、地球上のほぼすべての国々が参加する地球規模の気候サミットである「締約国会議(COP、Conference of the Parties)」を毎年開催しています。

今年は27回目の年次サミットになる予定でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により昨年のサミットが延期されたため、一年遅れて今回の会議がCOP26となりました。

さらに詳しく知りたい方は国連の特集ページをご覧ください。ストーリーやビデオ、解説、ポッドキャスト、ニュースレターなど、COP26気候サミットに関するあらゆる報道をご覧いただけます。

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原文(English)はこちらをご覧ください。