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世界には、石炭の時代に終止符を打ち、クリーン・エネルギーを受け入れる用意があるのか(UN News 記事・日本語訳)

2019年12月06日

Photo: World Bank

電力の利用は世界を大きく変え、各国がその経済を発展させ、何百万もの人々を貧困から救い出すことに役立ちました。しかし、この成果はいま、大きな代償を伴う結果となっています。化石燃料に大きく依存するエネルギー部門は、熱を大気中に閉じ込め、地球温暖化をもたらしている「温室効果ガス」の一つ、二酸化炭素の排出量全体の40%程度と、石炭に起因する二酸化炭素排出量のほぼ3分の2を占めているからです。

 

電力の利用は世界を大きく変え、各国がその経済を発展させ、何百万もの人々を貧困から救い出すことに役立ちました。しかし、この成果はいま、大きな代償を伴う結果となっています。化石燃料に大きく依存するエネルギー部門は、熱を大気中に閉じ込め、地球温暖化をもたらしている「温室効果ガス」の一つ、二酸化炭素の排出量全体の40%程度と、石炭に起因する二酸化炭素排出量のほぼ3分のしかし、国連が化石燃料の使用禁止を緊急に求めているにもかかわらず、新たな石炭火力発電所は依然として数百カ所で建設中であるほか、さらに数百カ所で建設が予定されています。世界には、安価ですべての人が利用できるクリーン・エネルギーの新時代を迎える用意があるのでしょうか。占めているからです。

石炭という悪習を廃し、炭素の価格設定を、と呼びかける国連事務総長

国連は各国に対し、石炭への依存を終わらせるよう圧力を強めており、アントニオ・グテーレス国連事務総長も最近の発言で、国連の立場をはっきりと示しています。

国連事務総長は、気候危機に終止符を打る可能性を残すため、炭素排出に課税し、化石燃料に対する数兆ドル規模と見られる補助金を廃止するとともに、2020年までに石炭火力発電所の建設を停止するよう求めています。

先進国をはじめ、国連のメッセージに耳を傾ける国も多く出てきました。しかし、世界最速の経済成長を遂げつつある地域の一つ、東南アジアは、エネルギー需要への対応として化石燃料に固執する姿勢を見せています。グテーレス事務総長は11月、タイで開催された東アジア諸国連合(ASEAN)グループの会合で発言し、石炭が「引き続き、気候変動関連の大きな脅威となっている」としたうえで、東南アジア諸国の中には、気候変動による影響を最も受けやすい国もあると付け加えました。

アジアの発展は依然として石炭頼み

国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、東南アジアは今後20年間、世界のエネルギー動向のカギを握る存在になると見られています。東南アジアでは2000年以来、数百万人が電力を使えるようになっており、2030年までには電力の完全普及が実現する見込みです。

国連が支援するイニシアティブ「万人のための持続可能なエネルギー(SEforALL)」が集計したデータを見ると、この地域で計画されている石炭火力発電所の数は中国、インドに次ぎ、世界で3番目に多いことが分かります。インドネシア、ベトナム、フィリピンは東南アジア諸国の中でも石炭火力発電所の建設予定数が最も多く、これにマレーシアとタイが続いています。

比較的裕福なアジア諸国も、国外の石炭に出資しています。中国や日本、韓国の国有金融機関はそれぞれ、外国の石炭火力発電所建設に最も多額の資金を提供しています。SEforALLの調査からは、中国が石炭火力発電所の最大の国際的財源となっており、2015/2016年には17億ドル以上を拠出していることが分かります。

石炭パワーの衰退

とはいえ、世界は全体として正しい方向に進んでおり、計画中の発電所の数は減ってきています。石炭火力発電所の新設許可数は記録的な水準にまで落ち込み、千件以上が取りやめになっていますが、これは石炭火力発電所開発業者が直面する経済環境が厳しさを増す一方で、地球温暖化を抑え、健康を守る必要性を認めるコンセンサスができ上がってきていることを反映しています。

各国がパリ協定を採択し、地球温暖化を産業革命以前との比較で1.5℃に抑えるための取り組みを強化するとともに、気候変動対策への資金拠出を増額することを約束してから4年後にあたる2019年9月、国連事務総長がニューヨークで招集した気候行動サミットでは、多くの国が石炭を基に生産される電力量に制限を加えることを含め、気候危機に取り組むための措置の強化を発表しました。

例えば英国は、今後数年で石炭の利用を全面的に禁止する見込みであり、また世界最大の石炭使用国の一つであるドイツは、2038年までにその利用を停止することに合意しました。その他欧州連合8カ国も、2030年までに石炭の利用に終止符を打つことを発表しています。チリは2040年までに石炭火力発電所をすべて閉鎖することを約束したほか、韓国も2022年までに10カ所の発電所を閉鎖する予定です。

32カ国、25の地方自治体、34社の企業メンバーからなる「脱石炭連盟(Powering Past Coal Alliance)」はこの会議で、ドイツとスロバキアを含む新メンバーを発表するとともに、石炭ベースからクリーン・エネルギーへの移行を加速し、石炭の使用を削減するためのグローバルな取り組みを主導することを約束しました。

顔を出した太陽

さらに、再生可能エネルギーの利用が地球にとって正しいことであるだけでなく、経済面でも合理的であることを認識する国や企業も増えてきています。

世界を石炭やその他の化石燃料から脱却させるだけでなく、現時点で電力を利用できていない8億4,000万人がクリーンな再生可能エネルギー源を利用できるようにするための技術は、すでに存在しています。しかも、その利用は手ごろな値段で可能です。

SEforALLの調査を見ると、再生可能エネルギーは全世界の3分の2で、最も安価な新エネルギー発電の形態となっており、そのコストは石炭とガスによる新火力発電を下回っています。さらに2030年までに、風力発電と太陽光発電はほとんどあらゆる場所で、石炭とガスによる発電よりも安価になると見られます。

言行不一致

しかし、石炭の使用が減り、再生可能エネルギーの利用が増える中でも、クリーン・エネルギーへの移行は十分な速さで進んでおらず、各国が約束している気候変動対策と、化石燃料生産計画との間に大きなギャップがあることは、国連環境計画(UNEP)とその研究パートナーによるこの種のものとしては初となる2019年生産ギャップ報告書が示すとおりです。

こうしたギャップは、石炭について最も多くなっています。各国は現在、2030年に温暖化を2℃に抑えるために必要なレベルの150%、これを1.5℃に抑えるために必要なレベルのほぼ3倍に相当する石炭の生産を計画しているからです。

「各国政府の石炭、石油およびガス採掘に対する支援の継続は、問題の大きな部分を占めています。私たちはすでに深い穴にはまっている状況であり、採掘は止める必要があります」
    ―マンス・ニルソン・ストックホルム環境研究所(SEI)所長

「20年以上にわたる気候変動政策の策定にもかかわらず、化石燃料の生産量はこれまでよりもさらに増えています」この調査に携わった組織の一つ、ストックホルム環境研究所(SEI)のマンス・二ルソン所長は、プレスリリースでこう述べています。「この報告書は、各国政府の石炭、石油およびガス採掘に対する支援の継続が、問題の大きな部分を占めていることを示しています。私たちはすでに深い穴にはまっている状況であり、採掘は止める必要があります」

国連は2020年、持続可能な開発のための2030アジェンダを構成する目標の達成に向けた取り組みに勢いをつけるため、行動の10年を立ち上げる予定です。エネルギーに関しては、すべての人に手ごろで信頼できる持続可能な現代的エネルギーを確保することが目標となります。国連と世界にとっての挑戦は、再生可能エネルギーへの転換を一気に加速させ、石炭という悪習と完全に決別することです。

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