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国連海洋会議(2017年6月5日~9日、ニューヨーク)背景資料

プレスリリース 17-022-J 2017年05月18日

概要

“一線を越えようとしている漁業資源の減少、海洋酸性化の程度、海洋に投棄されたプラスチックの量のどれを見ても、良識のある人なら、もう時間はなく、すぐにでも行動を起こす必要があると結論づけられるはずです”
― ピーター・トムソン第71回国連総会議長

国連は2017年6月5日から9日にかけ、海洋の持続可能性を促進する取り組みを活性化する重要な会議を開きます。「国連海洋会議」は、この問題に関するものとしては初の国連会議であり、世界環境デー(6月5日)と世界海の日(6月8日)に合わせて開催されるものです。国連海洋会議は各国、国連システム、政府間・非政府組織のほか、民間セクターやメディア、一般市民が海洋の劣化を逆転させるための緊急かつ具体的な行動を起こす貴重な機会となります。

海洋に関する会議はなぜ必要なのでしょうか。簡単に言えば、私たちの海は深刻な困難に陥っています。人間の活動は、海に大きな影響を及ぼし、海洋生息環境の存続可能性から海水の水質と温度、海洋生物の健康、さらには海産物の継続的入手可能性に至るまで、あらゆる要素を損なっています。これが貧困の根絶や経済成長、持続可能な生活と雇用、グローバルな食料の安定確保、ヒトの健康と気候調整への影響となって跳ね返っているのです。基本的に、海で起きていることは私たちの日常生活に影響する一方で、私たちの行動も、海に大きな影響を及ぼしているということです。

数十億人が主要な食料源を海に依存しているほか、数百万人が海から生活の糧を得ています。観光や貿易といった重要な経済活動も、海に大きく依存しています。海は地球の気候の重要な調整役でもあります。私たちが吸う酸素の半分を供給し、私たちが作り出す二酸化炭素の3分の1を吸収しているからです。

こうして、地球上の生命の維持に欠かせない役割を果たしている私たちの海は、人間の活動によってますます脅かされたり、劣化したり、破壊されたりしており、重要な生態系サービスを提供する海の能力は低下しています。世界の魚種資源のうち、現時点ですでに30%が乱獲されており、完全利用されている魚種資源も全体の50%を超えています。沿岸生息地も圧力にさらされており、全世界のサンゴ礁の約20%が消失したほか、さらに20%が劣化状態にあります。プラスチック廃棄物だけでも毎年、海鳥100万羽、海洋哺乳類10万匹、そして数えきれない魚の命を奪っているものと見られます。海洋汚染の約80%は、陸上活動に起因しています。

しかも、貧困層や女性、子ども、先住民など社会的に脆弱な立場にある人々に加え、小島嶼開発途上国(SIDS)など、海洋と海洋資源への依存度が高い沿岸コミュニティーや沿岸国は、特に深刻な影響を受けています。

“私たちの海では水温が上昇し、私たちの主産物であるマグロの生息パターンを変えています。水質の悪化も、私たちの資源を枯渇させ、海の大混乱を招いています”
-セミ・コロイラベサウ・フィジー漁業大臣

海洋会議に関するさらに詳しい情報については、 https://oceanconference.un.org/をご覧ください。

 

海と持続可能な開発目標

2015年、国連加盟193カ国は人間、地球、そして豊かさのための行動計画として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17の持続可能な開発目標(SDGs)を全会一致で採択しました。これらの目標は、貧困の根絶とジェンダーの平等から気候変動に至るまで、幅広い課題に取り組むものです。その目標14は具体的に、海洋汚染を予防し、大幅に削減すること、海洋酸性化を最小限に抑え、これに取り組むこと、海洋・沿岸生態系を持続可能な形で管理、保護、保全すること、乱獲と野放しの漁業に終止符を打つこと、海洋資源の持続可能な利用によるSIDSの経済的利益を増大させることなどを通じ、海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続的に利用する必要性を明らかにしています。

私たちは、地球の表面の4分の3を覆う海が、その生態系の総合的で不可欠な要素を形成し、持続可能性にとって極めて重要であることを知っています。国連海洋会議ではこのことを念頭に、SDGs目標14の達成支援を重点的に取り上げます。しかし、この目標の達成を目指す行動は、相互的連関関係にある他の全目標の達成努力を支援することにもなります。毎日、数十億の人々がその食料の安定確保、経済的な安定、および、多様かつ持続可能な環境で暮らす機会を健全な海に依存しています。私たちがどこにいようとも、そしてどこで暮らそうとも、海は私たち全員に影響を与える存在であると同時に、私たちも海に影響を与えるのです。

“海は温室効果ガス排出量の3分の1を吸収すると言われています。海がなかったとしたら、私たちの置かれた現状はどのようになるか、ちょっと想像してみてください”
-呉紅波(ウ・ホンボ)国連海洋会議事務局長

持続可能な開発目標に関するさらに詳しい情報については、http://www.un.org/sustainabledevelopment/をご覧ください。

 

成果

国連海洋会議は、海の劣化を逆転させるための重要な一歩となります。各国が海に対する意識を高める場となるだけでなく、グローバルな行動を呼びかけ、解決策の実施を目指す新たな対話とパートナーシップ生み出すことになります。さらに、多くの参加者は、海の課題に取り組むための自主的コミットメントを発表することになります。

国連海洋会議では、3つの重要な成果が期待されています。国連加盟国はコンセンサスにより「行動の呼びかけ」を採択する予定です。これは、私たちの海のために、より持続可能な未来に向けた道のりを定める簡潔で焦点を絞った具体的な宣言の役割を果たします。しかし、この会議では、各国政府がこの問題に対処するために何ができるかに加え、私たち全員がその規模に関係なく、どのように貢献し、自分の役割を担っていけるのかという課題にも取り組みます。

2017年2月の準備会合では、国連がSDGs目標14の実施に向けた自主的コミットメントをオンラインで登録するプロセスを発足させました。自主的コミットメントとは、各国政府や国連システム、金融機関、市民社会、学術研究機関、学会、民間セクターを含むあらゆる関係者が個別または連携して取り組むイニシアティブを指します。その中には、海洋環境を守るための取り組みから、海洋汚染に歯止めをかけるための取り組み、海洋酸性化の影響に対する取り組みに至るまで、SDGs目標14の異なるターゲットに取り組むさまざまな国内的、地域的、世界的なイニシアティブが含まれる可能性があります。自主的コミットメントの一覧は、国連海洋会議の報告書に盛り込まれる予定です。

国連海洋会議報告書には、パートナーシップ対話に関する共同議長サマリーも含まれる予定です。このパートナーシップ対話は、SDGs目標14の全ターゲットを対象に、協力の強化、すでに成果を収めている取り組みの拡大と反復、および、目標14の実施を達成するための具体的で新たなパートナーシップの発足をねらいとするものです。

“私たちの子孫に対してやましいところなく、地球を引き継いでいくためには、今すぐに行動を起こさなければなりません。私たちに行動を起こさない言い訳はありません。私たちは海を無限の存在と考えていますが、実際にそうではないのです”
-イサベラ・ロウィン・スウェーデン副首相

 

会議の成果について詳しくは、https://oceanconference.un.org/aboutをご覧ください。自主的コミットメントについて詳しくは、https://oceanconference.un.org/commitmentsをご覧ください。

フィジー、スウェーデン両国の政府は、国連海洋会議の共同ホスト国となっています。総会議長、スウェーデン副首相、フィジー漁業大臣、国連海洋会議事務局長とのパネル・インタビューの模様以下でご覧いただけます。
http://www.un.org/sustainabledevelopment/blog/2017/02/oceans-panel/

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