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この人に聞く:女子教育を重点分野とする国連ピース・メッセンジャーに任命された、マララ・ユサフザイさん

2017年05月02日

国連ピース・メッセンジャーへの任命を受け、アントニオ・グテーレス事務総長が見守る中で発言するマララ・ユサフザイさん©UN Photo/ Rick Bajornas

2017411 2012年、マララ・ユサフザイさんが女子教育の権利を主張したことでタリバンに銃撃を受けた事件は、全世界でトップニュースとして伝えられました。しかし、このパキスタンのティーンエージャーは、攻撃によって沈黙させられるどころか、その発言により、あらゆる子どもが安全で自由な質の高い初等・中等教育を受ける権利を推進してきました。

マララさんは近年、国連人権賞や欧州議会「思想の自由のためのサハロフ賞」など、多くの表彰を受けています。2014年にはわずか17歳で、ノーベル平和賞の最年少受賞者となりました。

マララさんは学生活動家として、このたび新たな役割を担うことになりました。アントニオ・グテーレス事務総長から、女子教育を重点分野とする国連最年少のピース・メッセンジャーに任命されたのです。4月10日に国連本部で行われた任命式の後、マララさんはUN Newsとのインタビューに応じ、自分にとって新たな役割が持つ意味、これまでの権利擁護への取り組みから学んだこと、そして人々が自分について誤解していると思うことのいくつかについて語りました。

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UN News:国連ピース・メッセンジャーという権威ある肩書を与えられた今、自分自身の役割をどのように考えていますか。

マララ・ユサフザイ:ピース・メッセンジャーという肩書をいただいたことを、とても名誉に思います。私にとってそれは、今までの責任、つまり女児の教育に対する認識を向上させ、世界のリーダーに教育にもっと投資するよう求めるという、私がすでに担ってきた責任が、さらに重くなるということです。この活動はこれからも続けていきます。しかし、国連ピース・メッセンジャーとなったことで、私の力は増すことになりました。私は今後、さらに大きなプラットフォームを通じて、教育を求める声をさらに拡散できるようになります。

“私たちの生活を向上させたいのなら、女子教育に投資しなければなりません”

UN News:女子教育を求める活動という点で、この課題についてロール・モデルとしての役割を果たしてきた経験から学んだ最も大きな教訓は何ですか。

マララ・ユサフザイ:私は10歳か11歳の時から、女子教育を求めて闘ってきました。当時、パキスタンのスワート渓谷ではテロ活動が始まり、女児は学校へ通えませんでした。私はこれまで20年の人生の中で、テロや過激主義を目撃したり、15歳の時に攻撃を受けたり、そして現在のように、国際舞台で女子教育を求めて闘ったりするうちに、とても多くのことを学びました。私が特に学んだのは、将来の世代に教育、それも質の高い教育が必要だということです。私たちが明るく、発展した将来を目にしたいのなら、そして私たちの生活を向上させたいのなら、女子教育に投資しなければなりません。それは絶対に必要です。無視することはできません。世界のリーダーたちはなぜ、こんなにも長い間、それを無視してきたのだろうと、不思議に思うこともあります。私がわずか19年の経験で認識したことを、50年や60年以上かかっても学んでいないのです。それが私のメッセージです。教育に投資すれば、世界全体を変えられるということです。

動画新たに国連ピース・メッセンジャーに任命されたマララ・ユサフザイさんはUN Newsのインタビューに応じ、女子教育へのさらなる投資を求めました Credit: UN News

UN News:きょうはお父さんもいらっしゃいますが、お父さんはあなたを学校に通わせることにとても熱心だったと聞いています。女児や女性の教育を確保するうえで、男性と男児には何ができるのでしょうか。

マララ・ユサフザイ:私が最初に声を上げたのは事実ですが、父が、そして両親がいなければ、前に進んで声を上げることはできなかったでしょう。他にも声を上げたがっていた少女はたくさんいましたが、両親や兄弟たちがそれを認めませんでした。このような時、男性の役割は欠かせません。男性が女性に声を上げることを禁じてしまえば、女性は前へ進めないからです。だから、男性は女性が夢を追い求め、それを実現できるようにすることが大切なのです。父も言っていましたが、女性のために特別なことをする必要は何もありません。羽を切りさえしなければ、自分で飛び、前へ進んでいけるのです。つまり、男性が進んで誇りあるフェミニストになり、女性の権利を擁護すれば、女性のエンパワーメントは実現します。そして、女性のエンパワーメントにより、社会全体のエンパワーメントが可能になります。そこには経済的な利益や社会的な利益をはじめ、数限りない利益があるのです。

UN News:これまで長年にわたる女子教育の擁護活動で、あなたは信じられないような成果を達成してきました。ノーベル賞受賞に加え、今度は国連ピース・メッセンジャーです。誰もがあなたのストーリーを聞いて、あなたを「知っている」ような気持ちでいるのではないでしょうか。しかし、先ほどおっしゃったように、あなたはまだ19歳です。何か人々に誤解されているのではないかと思うことはありますか。

マララ・ユサフザイ:私の背が高いように勘違いされる方が多いようですが、実際のところ、私はとても小柄で、身長は150センチちょっとしかありません。ハイヒールを履いて、背を高く見せようとしていますが、それでもうまく行きません。それだけ背が低いということです。第2点として、私は何か勉強ができて、頭が良いように思われることが多いようですが、学校の成績がいつも良いわけではありません。試験をしても、CやDの評価を受けることもあります。大学に入るための勉強もしっかりやらなくてはなりません。推薦などで入試を免除されたわけでもありません。試験を受けねばなりませんでした。最後の試験でAを3つ取らないと大学に行けないのです。つまり、私は学生だったら誰でも経験する道を通ってきました。だから、至って普通の人間です。ノーベル平和賞をもらっても、ピース・メッセンジャーに任命されても、成績が上がるわけではありませんから。

2010年、UNICEFの支援によりパキスタン、ミンゴラ市のKhpar Korモデルスクール・孤児院で開催された「子ども議会」の議長を務める13歳のマララさん©UNICEF/Ahmed
2年後、女子教育を擁護する勇気ある活動を行っていたマララさんは、下校途中のバスでタリバンの銃撃を受けた。国連児童基金(UNICEF)は、マララさんがBBC向けに日記をつけており、3年前にタリバンが地元の町を占領し、女子校をすべて閉鎖した様子を記録していたことを明らかにした©Facebook /UNICEF Pakistan
マララさんの銃撃から1カ月後、イリーナ・ボコバ国連教育科学文化機関(UNESCO)事務局長は、パリで開催されたハイレベル・アドボカシー・イベント「マララのために立ち上がろう-女児の教育への権利のために立ち上がろう」で、共同ホストを務めた。人権デーに合わせて開催されたこのイベントは、すべての女児が学校へ通う権利を擁護すべく、政治的な意志を形成し、行動を加速することを目的とした©UNESCO/Landry Rukingamubiri
マララさんは銃撃で受けた傷がまだ完全には癒えない中、潘基文(パン・ギムン)事務総長(当時)に対し、「もう歩けます。もう話せます。何でもできます」と話した。事務総長は、マララさんを「希望を象徴する国連の娘」と形容し、こう語りかけた。「国連は常にあなたと、あなたのような人々の味方です」©UN Photo/Rick Bajornas
2013年7月12日、16歳の誕生日を迎えたマララさんは、国連で数百人の若者に語りかけ、教育を使って過激主義と闘おうと、次のように訴えた。「本とペンを手に取りましょう。それこそ私たちにとって最も強力な武器だからです。1人の教師、1冊の本、そして1本のペンが、世界を変えられるのです」 一緒に写っているのは、マララさんの父と弟©UN Photo/Eskinder Debebe
ヨルダンにあるシリア難民のためのザータリ・キャンプ第2学校で、ピアエデュケーターを務める学生のモズンさんと話すマララさん。モズンさんは難民キャンプでの教育の権利を擁護し、戸別訪問で各家庭に子どもを学校に通わせるよう説得している©UNICEF/ El Ouerchefani
マララさんはニューヨークで開催されたグローバル・シチズン・フェスティバル2015で演説を行った。これと並行して開催されていた国連持続可能な開発サミットでは、世界のリーダーが2030年までに貧困に終止符を打ち、繁栄を推進することを目標とする新たな野心的な計画を採択している。マララさんと一緒に写っているのは、潘基文事務総長(当時・右)と、ロックバンドU2のミュージシャン兼活動家のボノ氏(左から2人目)©UN Photo/Eskinder Debebe
2017年4月10日、国連最年少のピース・メッセンジャーに任命されたマララさんは、アントニオ・グテーレス事務総長とともに、全世界から集まった若者の代表数百人と女子教育をテーマに話し合った©UN Photo/Rick Bajornas

 

UN News:教育については、他の学生と同じように勉強しなければならないというお話でしたが、ご自身の教育については今後、どう考えていますか。

マララ・ユサフザイ:大学では、哲学、政治、経済の分野(PPE)の研究をしたいと思っています。いくつかの大学に願書を出していますが、どこの大学に行けるかは、8月に最終成績が出ないと分かりません。そのために頑張って勉強しています。卒業後の仕事のことは、まだ具体的に考えていません。確かなことは、女子教育に関わり続けるということです。マララ基金を通じて、女子の中等教育に重点を置くことで、私のように少女がもっと声を上げられるきっかけを作っていきます。こうした人々と協力することで、少女たちの声をさらに大きくできればと考えています。

“大事なのは声を上げること。あなたの声で世界を変えられるのです”

UN News:これから改めて、国連ピース・メッセンジャーとして世界を飛び回ることになると思いますが、特に若者が希望を失い、学校に行っても仕方がないと感じている場所で、どのように若者を元気づけていこうと考えていますか。

 マララ・ユサフザイ:私はレバノンやヨルダンなど、多くの国を見てきました。シリア難民の少女や、ナイジェリアの少女にも会ってきました。ピース・メッセンジャーとしても引き続き、様々な国を訪れ、全世界で素晴らしく魅力的な少女たちに会ってきたいと思います。そして必ず、「大事なのは声を上げること。あなたの声で世界を変えられる」というメッセージを伝えます。私もスワート渓谷で声を上げ、ご存じのように、子どもの声がテロリストの銃よりも強いことを証明しました。だから、すべての子どもたちに、その声が私たちの世界にとって大切だということをわかってほしいのです。変化を起こすために、大人になるまで待つ必要などありません。今すぐに変化を起こせるのですから。

UN News:最後に、何かメッセージはありますか。

マララ・ユサフザイ:自分を信じ、自信を持ち、将来に期待をかけ続けてください。悪いことも起こるでしょう。しかし結束し、力を合わせれば、私たちはもっと強くなり、世界をもっと良くし、変化を起こすことができます。だから、ポジティブに、希望を捨てずに行きましょう。

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原文(English)はこちらをご覧ください。

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