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この人に聞く:国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)を率いる、山本忠通 事務総長特別代表

2016年11月14日

「私たちの取り組みが成功を収めるためには、国際社会からの真のコミットメントがあることが重要です」

2016年10月3日 – 数十年にわたり、ますます多くの民間人の命を奪っている紛争から、政府機関における腐敗の根絶に至るまで、アフガニスタンは国際社会の援助を受け、さまざまな課題に取り組んできました。こうした課題の多くは、10月4日から2日間にわたり、ベルギーの首都ブリュッセルで開催される会合で取り上げられることになっています。

アフガニスタンと欧州連合がホストとなって開催する「アフガニスタンに関するブリュッセル会議」には、約70カ国と20の国際機関が代表を送る予定です。会議はまた、アフガニスタン政府がそのビジョンと、改革の実績を披露する場にもなります。

国際社会にとって、この2日間の会合はアフガニスタンの平和と国づくり、開発に対する継続的な政治的、財政的な支援を表明する機会にもなります。

国際社会は、アフガニスタンが…今後何年もの間、多くの援助を必要とすることを理解しなければなりません。そして私は、その理解ができていると思います。

会議参加者は、アフガニスタンの新たな国家開発枠組みに基づき、持続的な国際支援と資金供与の効果を高めるための国際社会とアフガニスタンによる共同の取り組み、経済改革、法の支配、国家財政の管理改善や腐敗対策に関するものを含め、最重要のサービスと公共財の提供を確保するためのアフガニスタンによる改革努力、および、平和と国際経済協力に向けた政治的プロセスを支援する地域的な取り組みという、3つの分野に焦点を絞った話合いを行います。

国連のアフガニスタンでの活動の歴史は長く、さまざまな機関が古くは1949年から、国内で活動を行っています。現在、アフガニスタンでの国連の活動を先頭に立って進めている国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)は、同国に対する国際的な文民支援への取り組みを主導、調整しています。UNAMAはまた、アフガニスタンで政治的な調停を行い、政府に協力と支援を提供し、和平と和解のプロセスを支援し、人権と武力紛争における民間人の保護を監視、推進し、グッド・ガバナンスを促進するとともに、地域協力に向けた働きかけを行っています。

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長とともにブリュッセル会議に出席する山本忠通(やまもと・ただみち)アフガニスタン担当国連事務総長特別代表は、会議に先立ち、UN News Centre のインタビューに応じました。

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国際社会は、アフガニスタンが今後何年もの間、多くの援助を必要とすることを理解しなければなりません。そして私は、その理解ができていると思います。

UN News Centre:現在、アフガニスタンが直面する最大の課題は何ですか。

山本特別代表:政府部内の人々と、政府に敵対する勢力という2つの観点から、課題を捉えるべきだと思います。


世界のコミットメントはアフガニスタンの未来にとって非常に重要 – 山本忠通・国連特別代表 Credit: UN News Centre

最も根本的な課題は治安だといえるでしょう。治安は事実、アフガニスタンの生活全般における活動に影響を及ぼしています。2014年に多国籍軍の規模が縮小されると、タリバンはアフガニスタン国軍の防衛能力に挑みました。これによって、2015年には情勢が悪化し、反政府勢力タリバンは支配地域を拡大したのに対し、アフガニスタンの治安・防衛部隊は守勢に回る格好となりました。

今年も同じような攻撃の激化が続きましたが、アフガニスタン国軍は、昨年の教訓を生かして応戦しています。それでも、南部の州都を包囲するなど、タリバンは依然として治安上の大きな脅威となっています。

また、政府自体にも課題があると思います。アフガニスタン政府は挙国一致体制を取っているため、異なる政治勢力が統一政府として協力を行っています。しかし、政治的背景を異にする勢力が政府部内で政策の円滑な運営と実施を維持することは容易ではありません。

最近では、こうした政府部内での意見対立の問題が表面化しているため、政府の内部的安定を確保し、必要な課題に取り組めるようにすることがまさに不可欠だと思われます。

UN News Centre:そのような課題に取り組むうえで、UNAMAはどのような役割を果たしているのですか。

山本特別代表:政治的課題への対処という点で、特に大きな役割を果たしています。UNAMAには、調停によって当事者の協力を改善するというマンデートが与えられています。つまり、政治的リーダーがよりよく協力できるようにすることこそが、私たちの取り組むべき中心的な課題と言えます。

治安という点において、決して大規模ミッションではないUNAMAは、直接的な責任を負ってはいません。しかし私たちには、国内全土の12カ所にいわゆるフィールド・オフィスを展開しているという強みがあります。私たちはこれによって、おそらく他のどの国際機関よりも、国内の治安情勢を含む現状を実際に監視、評価することができています。また、国際社会や、場合によってはアフガニスタン政府にも私たちの評価を伝達し、状況管理の改善に資することもできるでしょう。しかし私としては、状況をより包括的に評価し、アフガニスタンの将来に向けた展望を提供するよう努めることが、私たちの役割であり、実際にこれを果たすことは可能だと考えています。

UNAMAのマンデートは、アフガニスタンの主権強化という原則を指針としながら、アフガニスタンのリーダーシップとオーナーシップを支援する国際的な文民努力を指導、調整することが中心となっています。そのためには、アフガニスタン政府の開発とガバナンスの優先課題に対する国際社会による支援の整合性を高めなければなりません。山本特別代表は、アフガニスタン国民各層とのやり取りの中で、国際社会が治安、開発、ガバナンス、和解の分野を含め、アフガニスタンへの支援に全力を傾けていることを常に強調するようにしています©UNAMA/Fardin Waezi

UN News Centre:国家統一政府の樹立からほぼ2年が経過しましたが、必ずしも円滑な運営はできていません。より連帯感を高めるためには、さらにどのようなことが可能ですか。

山本特別代表:大切なのは、リーダーたちが国とその将来、そして国民への奉仕をどのように改善できるかについて、本気で考えることです。もちろん、政治制度である限り、政治指導者にはそれぞれ支持母体があり、支持者の期待に応えなければなりません。しかし、アフガニスタンは治安だけでなく、経済情勢や人権状況、腐敗といった点でも深刻な課題を抱えています。これらはすべて、アフガニスタンの将来的な安定だけでなく、成長への見通しにも影響を及ぼします。リーダーたちが、これにどう取り組んでゆくべきかを真剣に考えるのであれば、どのように政治的手腕を発揮すべきかについても考え、より大きな目標をともに見据えなければなりません。確かに難しいことではありますが、自分たちに委ねられている責任について、しっかりと理解しようとする姿勢が必要です。

UN News Centre:前回の2014年の大統領選のやり方には異議が唱えられ、これによって選挙制度改革を求める声が高まりました。この点で進展はありましたか。

山本特別代表:課題は多くありますが、選挙制度もそのひとつです。2014年の大統領選には多くの不正があったとされたため、国民は実際のところ、現行の選挙制度を信用できると感じていません。これが選挙制度改革を求める声となって表れているのです。

しかし、選挙制度改革は実際、選挙の結果に影響するため、極めて政治性の高い課題と言えます。よって、どのような選挙制度を採用すべきか、という点に関する政治的リーダー間の妥協自体が、議論の主題となっているのです。もちろん、選挙制度改革の実施は、独立の選挙委員会が中立の立場で行うべきですが、どのような制度がよいかという問題はどこの国でも、関係当事者の政治的決定に服してしまうのです。

UN News Centre:アフガニスタンでは腐敗が深刻な問題となっています。腐敗対策で進展はありましたか。

山本特別代表:はい。ガーニ大統領とアブドッラー行政長官は、アフガニスタンが腐敗にどう取り組むべきかに関し、かなりしっかりとしたビジョンを持っています。特に最近では、ガーニ大統領の強力なリーダーシップの下、政府が「腐敗対策司法センター(Anti-Corruption Justice Centre)」を設置するなど、本格的な改革に乗り出しています。この新たなシステムは、外部の影響から最大限、遮断されています。委員と事務局メンバーの人選も極めて慎重に行われる予定です。センターには、政府高官を訴追する任務が与えられていることから、この取り組みに向けた決意も感じられます。

1946年11月19日 – アフガニスタンと国連の関係は1946年、同国の加盟をもって始まりました。写真は、ニューヨーク州フラッシングメドウズに設置された国連の暫定本部で、アフガニスタンのA・ホサイン・アジズ駐米大使が政府を代表し、同国の国連加盟式典で国連憲章「遵守書」に署名した時の様子です。アジズ大使の前に座っているのは(左から)トリグブ・リー事務総長と、当時のポール=アンリ・スパーク総会議長です©UN Photo

しかし、腐敗は社会全体に広がっている問題であり、単に個人だけではなく、官僚制と社会のあり方全体を変えることが必要だという理解もできています。よって政府は、官庁組織や政府機能の改革を図るという、より長期的なアプローチを採用しています。つまり、悪質な腐敗事件の責任を問いつつ、システムを根本から変えてゆくという取り組みが、同時に進んでいるのです。これは強い決意を要する困難な取り組みであるため、国際社会はこの点でのリーダーによる努力を支援する必要があります。

UN News Centre:政府と過激派組織の戦闘による民間人犠牲者は、アフガニスタンで引き続き大きな問題となっています。このような犠牲者を減らすという点で、進展は見られていますか。

山本特別代表:それは国連と国際社会全体にとって、かなり大きな問題です。ご存知かと思いますが、国連は「民間人犠牲者報告書」なるものを作成し、民間人が犠牲となった事件を極めて詳細かつ客観的に調査しています。この活動は何年も前から行われています。

残念ながら、民間人犠牲者は年々、増加しています。私たちは政府軍だけでなく、反政府勢力や多国籍軍とも対話を行い、民間人が犠牲になっている現状について説明するとともに、具体的な措置を講じることで、これを最小限に抑えるよう提言も行っています。反政府勢力、政府軍、多国籍軍という全当事者が、民間人犠牲者を極力少なくすることの重要性を理解しています。すべての地域ですべての当事者が、民間人犠牲者を減らすための指示や指令を出しており、この問題に対する見方も改善してきています。

しかし実際のところ、行動の性質が変わってきていること、そして、この2年間で紛争が激化したことにより、犠牲者は増え続けています。非常に残念なことですが、最近では戦闘の激化により、女性や子どもの犠牲者が増えてきています。実際、こうした女性や子どもの多くは、市街戦や十字砲火で命を失っています。これは深刻な問題です。すべての当事者が取り組もうとはしていますが、対策は非常に難しいのが現状です。

UN News Centre:なぜ暴力は激化しているのですか。

山本特別代表:理由はいくつかあると思います。しかし、多国籍軍の規模縮小後、タリバンがアフガニスタン軍の能力に挑んでいる最大の原因は、タリバンがこれをチャンスと捉えていることにあります。これによって攻撃が激化し、その件数も過去3年間、増加の一途をたどっています。その一方で、多国籍軍の規模は一気に縮小しました。最大規模に達した時期に10万人を超えていた多国籍軍の兵員数は、現在1万人にまで減少しています。

貿易の十字路に当たる戦略的地点に位置するアフガニスタンは歴史上、常に侵略の対象となってきました。人口約3,000万人のアフガニスタンの国土面積は9万平方キロメートル程度に及びますが、急峻な山が多く、標高は平均で1,200メートルに達します。イラン、パキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンのほか、北東部の端では中国とも国境を接しています。カブールを見下ろすようにそびえ立つヒンドゥークシ山脈の標高は平均で5,000メートル近く、最高で7,500メートル近くに上ります©UNAMA/Fardin Waezi

アフガニスタン国軍は警察を含め、総勢30万人程度です。よって、10万人以上の多国籍軍が減員となれば、極めて大きな打撃となります。私たちが予測したとおり、これをきっかけに反政府勢力は攻勢に転じました。アフガニスタン軍自体についても、作戦の実施や、軍と警察の間の調整がよく管理されていないなど、問題点があります。また、指揮命令系統が効果的に機能しないこともあります。これによって、かなり膨大な損害が生じました。例えば、昨年は州都のクンドゥズが陥落しました。実際の戦闘状況を確認したところ、政府軍による抵抗はほとんどなく、ある意味で自滅に近い状況でした。アフガニスタン軍の調整、応戦能力の欠如もその一因でした。

今年になって改善した点の1つとして、アフガニスタン軍の調整能力と、多国籍軍がアフガニスタンによる戦闘を支援する能力が向上したことが挙げられます。よって、対応面でも効果が上がっています。可動性が高まり、対応が早まりました。反乱軍の拠点である南部でも、こうした改善が見られています。州都のラシュカルガーという町が激しい攻撃に晒されましたが、(政府軍は)援軍と多国籍軍からの戦略的支援により、これに応戦しました。反政府勢力が今年いっぱい、アフガニスタン国軍に挑むことは確実ですが、その反政府勢力自体も痛手を受けています。双方に多くの犠牲者が出ているからです。

しかし、アフガニスタン国軍が持ちこたえられたとしても、多くの損害が出るおそれがあります。実際、昨年よりも死者の数は増えています。どちらの側も、この状況は今後数年間、変えることができないでしょう。私たちは、このような現状と、民間人に多くの犠牲者が出ているという事実を双方が認識すれば、交渉による解決によって、アフガニスタン和平への道を探る必要があることも分かってくれると思っています。

女性の役割も、アフガニスタンにおける国連活動の重点事項となっています。国内で50年以上も活動し、タリバンが政権を掌握していた時期にもパキスタンを拠点に活動を続けた国連開発計画(UNDP)によると、女性は依然として幅広い差別と、人権侵害を受けています。ある程度の前進は見られるものの、ほとんどの女児は学校に通えず、女性の雇用はほとんどが低賃金で規制対象外の仕事に限定され、嫌がらせが蔓延し、政治参加は限られているのに加え、女性は司法制度から公正な取り扱いを受けようとする場合にも、数多くの障壁に直面しています。しかも、女性は効果的なジェンダー対応型の医療から締め出されることが多く、特に農村部では、施設や熟練の女性医療従事者の不足が依然として、健康増進の大きな足かせとなっています©UNAMA/Jawad Jalali

UN News Centre:国際社会は他にも競合する関心事項を多く抱えています。そのような中で、アフガニスタンの政情と治安情勢について、国際社会の援助疲れや関心の低下を感じていますか。

山本特別代表:その点については、多くの側面から見る必要があると思います。確かに、国際社会はもう長い間、アフガニスタンへの支援を続けているため、援助疲れがあったとしても、それは決して不思議なことでも、異常なことでもありません。

しかし、援助疲れはまだ表面化していないようです。今年7月の北大西洋条約機構(NATO)ワルシャワ・サミットでも、NATO諸国は2020年まで、治安分野における援助を現状のレベルに据え置くことを再確認しました。会議に出席したリーダーからは、必要な限り、そして自分たちが必要とされる限り、アフガニスタンからは撤退しないという声が聞かれました。(残存部隊の)撤退は現地での状況次第であると述べるリーダーも多く、しかもそれは、アフガニスタンの国民に対するメッセージではなく、反政府勢力に対するメッセージだということでした。

私はそれを、時間は味方しないということを反政府勢力に伝える意味だと解釈しています。国際社会が疲れて、手を引くのを待っても無駄だということです。それは何よりも、アフガニスタンの軍と警察の能力を醸成、育成することによって、そして、国際社会が必要に応じ、最大限の関与を行うことによって、アフガニスタンを守るということに他なりません。もちろん、あらゆる国で冷めた見方が広がり、関与を最小限に止めるよう求める圧力も非常に強いものがありますが、これは政治的な意志と見ることができるでしょう。

UN News Centre:中長期的開発という点で、ドナー国に援助疲れの兆候は見られませんか。

山本特別代表:開発面での援助疲れは見えるかもしれません。しかし、私たちが準備作業を進めている10月のブリュッセル会議では、ドナー国が2020年まで、アフガニスタンへの開発援助の提供を決めるものと見られているため、今後4年間は、現状の20億ドル超に近い水準が確保されるでしょう。私は事実、国際社会のこのようなコミットメントに深い感激と喜びを覚えています。

政治、治安、開発の問題に加え、アフガニスタンは人道面でも課題を抱えています。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、必ずしも補完的でない軍事、政治、治安面の目標が別々に存在する複雑な環境下での人道援助には、人道原則の履行と困窮した人々への対応能力、さらには援助要員の安心と安全に関する課題が付きまといます。アフガニスタンでは現在、新たな人道危機が生じており、年末までに100万人を超えると予測される国内避難民や、国外に逃れた難民に対する支援の増大が急務となっています。こうした弱い立場にある家族の中には、初めてアフガニスタンの厳しい冬を経験する人々も多くいるからです©UNAMA/Sayed Muhammad Shah

実際、コミットメントを強めている国もあるほか、援助を減額する可能性のある国でさえ、アフガニスタンへの実効的支援は続けることになるでしょう。これまでの対アフガニスタン支援を見れば、アフガニスタン側の援助吸収能力にも問題があることが分かると思います。ですから、経済分野での国際援助額が若干減少したとしても、援助の実効性が保たれるのはもちろん、資金が必要なところにもっと集中的に使われるようにもなるでしょう。特に、アフガニスタンの人々の生計維持を支援しようとする場合には、これが当てはまります。例えば、ほとんどの人々が生計を依存する農業部門では、実際に将来の成長と開発に向けた健全な基盤を整備できることでしょう。

このように、援助疲れの懸念はあるものの、少なくとも2020年までは、国際社会が考え抜かれた責任ある行動を取ってゆくことになります。ヨーロッパをはじめ、世界各地で資金需要が高まっている現状を考えれば、これには特に大きな意味があります。

UN News Centre:国際社会はまだ当分の間、アフガニスタンの前進に大きな役割を果たすことになると思われますか。

山本特別代表:そうですね。私たちの取り組みを成功させるうえで、国際社会の実質的なコミットメントは、重要な要素のひとつです。国際社会は、アフガニスタンが自立に向けて取り組んでいるとはいえ、今後何年もの間、多くの援助を必要とすることを理解しなければなりません。そして私は、その理解ができていると思います。

アフガニスタンは、世界で最貧国のひとつに数えられるだけでなく、予算や国民に対するサービス提供能力という点でも、おそらく国際援助への依存度が極めて高い国のひとつです。もちろん、今後は独立性と自立性を高めてゆくことになるでしょうが、当分の間は、常態を取り戻し、経済を成長軌道へと乗せるためにアフガニスタンが着手した取り組みを、開発援助という点だけでなく、政治的なレベルでも国際社会が引き続き支援してゆくことが不可欠になるでしょう。

UN News Centre:国際社会の関与という点で、2020年がアフガニスタンにとって重要な年になるだろうというお話がありました。4年後、アフガニスタンはどのようになっているとお考えですか。

山本特別代表:国際社会がアフガニスタンでの活動をスタートさせてから50年の間に、教育や保健、テクノロジー、教育など、多くの分野で開発が大きく前進しました。この発展は今後も続くと見るべきでしょう。

数十年に及ぶ戦争は、アフガニスタンの食料安全保障に大きな打撃を与えました。国連世界食糧計画(WFP)の2014年の調査によると、2011年から2014年にかけての深刻な経済成長の減速もあり、アフガニスタン国民の約39%が貧困ライン未満で暮らしているほか、33%に当たる約930万人が食料不安を抱えています。これに加えて、自然災害による被災者23万5,000人と、紛争による被災者ほぼ75万人が、2016年中に人道的食糧援助を必要とするものと見られています。アフガニスタンは、世界で最も栄養不良児の割合が高い10カ国の中に名を連ねているほか、乳幼児死亡率と妊産婦死亡率も世界で最も高い国のひとつとなっています©UNAMA/Sayed Barez

私の感じでは、経済開発はより実用主義的な経路をたどり、農業やおそらく小規模家内工業など、人々に近く、生活に密着した産業が牽引することになるのではないかと思います。この意味では、幾分かの前進が見られており、地域諸国との取り組みや協力があれば、反政府勢力との対話プロセスを実質的にスタートさせることも可能なのではないかと感じています。

私たちには、反政府勢力と話す機会もありますが、そこで分かるのは、反政府勢力もアフガニスタンの国と人々の将来を考えているということです。つまり、アフガニスタンの未来という点では、政府と反政府勢力の間に共通点があるということです。国のことを考えているという点は一緒なので、ここに潜在的な協力の可能性があるのです。それは簡単でなく、4年では実現しないかもしれませんが、それでも私は、人々が同じアフガニスタン国民として、どのようにすれば国をまとめ、将来に向けた基盤を構築できるのかを模索し始めるだろうと信じています。

このように、私は慎重な楽観論者ではありますが、そこにはもちろん課題や障害があり、治安や政府の政治的安定、さらには腐敗などへの取り組みを通じたより公正で信頼できる社会の創造をはじめ、こうした課題を克服することが先決である点は強調せねばなりません。

UN News Centre:やや個人的な話になりますが、アフガニスタン担当のポストは、国連システムの中でも楽な仕事ではありません。実際のところ、最もきつい任務のひとつといえます。UNAMA責任者としてのポストを引き受けた動機は何ですか。

山本特別代表:外交官でなくとも、国際舞台に関わる人間であれば、一国の国づくりに貢献できるという経験は、何物にも代えがたいと思うはずです。これからずっと続いてゆくものに貢献できるという意味で、極めてやりがいのある仕事です。

また、アフガニスタンは過去30年から40年近くにわたって紛争の舞台になっているとはいえ、かつては輝かしい歴史を有し、1960年代から1970年代にかけては高い生活水準を維持していた国です。よって、暮らしの豊かさを誇る国を作り上げたり、取り戻したりできる可能性は十分にあるはずです。アフガニスタンの人々が国の一体性を強く意識していることも、お分かりになるでしょう。この国を極めて魅力的で豊かな国へと戻すためのチャンスは、十分にあるのです。

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山本忠通アフガニスタン担当国連事務総長特別代表©UN Photo/Laura Jarriel