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国際移住者デー記念シンポジウム (開催報告)

2011年12月22日

毎年12月18日は国連の定める「国際移住者デー」です。

今年はこの国際デーを記念して、「包括的移民政策の構築へ向けたロードマップ〜国連特別報告者の日本への勧告を受けて〜」というシンポジウムが12月17日に明治学院大学白金キャンパスで開催されました。主催は、移住労働者と連携する全国ネットワーク(移住連)、反差別国際運動(IMADR)、明治学院大学国際平和研究所(PRIME)の3団体でしたが、国連広報センター(UNIC)は国際移住機関(IOM)と共に協力団体として参加しました。全国からさまざまな分野、さまざまな国籍の方々が130人以上集まり、話に耳を傾けました。

2010年春に国連人権理事会の依頼で特別報告者のホルヘ・ブスタマンテ氏が来日し、日本における移住者の実態調査を行い、日本政府への勧告を含む詳細な報告書を同理事会に提出しました。数々の厳しい指摘の中、一番ポイントになるのは、移住者の存在が日本においてすでに「恒久的な現実 (permanent reality)」になっているにもかかわらず、「日本政府には包括的な移民政策が見受けられない」という点でした。現実としては200万を超える移住者が日本で生活しており、時には基本的人権が侵害される状況にあるにもかかわらず、政府は問題認識が薄く、移民問題に対応する専門部署が未だ存在しない、という点に移住者を支援する市民団体の関心が集まったといえます。

今回のシンポジウムの目的は、昨年のブスタマンテ報告を受けて、日本在住の移住者の現状を見つめ直し、より良い未来の構築に向けて話し合うことでした。

第一部では、今の日本で移住者数が最も多い4つのコミュニティについて、在日コリアンの宣元錫氏(中央大学)、在日中国人の王穎琳氏(東京大学)、在日ブラジル人のカルロス・マリア・レイナルース・デスィデリオ氏(龍谷大学)、在日フィリピン人のアンジェロ・イシ氏(武蔵大学)の4方が、それぞれのコミュニティの歴史と現状と未来について報告しました。これらの報告によると、日本には213万人ほどの外国人登録者がいますが(2010年現在)、約68万人が中国人、56万人が韓国・朝鮮人、23万人がブラジル人、21万人がフィリピン人です。各グループはそれぞれに異なる歴史的・社会的事情を背景に日本に移り住んでおり、年齢構成、男女比、平均的な生活状況もさまざまです。同一グループ内でも、オールドカマー(植民地時代に日本に連れて来られた韓国・朝鮮人など)とニューカマー(経済成長期に仕事を求めて来日した人々)の違いがあります。決して一枚岩ではない移住者たち、抱えている問題もさまざまで、正しい知識と情報に基づく細かい対応の必要性が登壇者から指摘されました。

第二部では、今後の対策に向けて、4人の専門家が報告と提言をされました。まず、反差別国際運動(IMADR)事務局長の原由利子氏から、日本政府の今までの対応について報告がありました。日本は2005年から2010年にかけて、「移住者の権利」に焦点を当てたブスタブスタマンテ氏の特別報告のほかに、2005年には「人種主義」に関する特別報告、2009年には「人身売買」に関する特別報告と、3回も国連人権理事会の特別報告の対象国になっています。ところが、日本政府はその都度「日本は原則として人権を尊重しています」と回答に留まり、問題認識を根本的に変える必要がある、と原氏は訴えました。

次に、移住連共同代表の渡部英俊氏が、移住者たちの境遇を改善するための4ステップの「ロードマップ」を提案しました。まず、7万人以上と言われる非公認在留者にアムネスティを実施する。次に、移民政策を立てる政府機関を設置する。第3のステップとして、基本法制を整備する。そして最後に、新しい法体制の実施機関を設置する、という内容です。最終的には、移住者対策の焦点を「管理」から「権利(の保護)」に転換し、現在の入国管理局から切り離された「移民庁」の新設が必要である、と渡部氏は考えます。

つづく国際移住機関(IOM)駐日事務所プログラム・マネージャーの橋本直子氏は、欧州諸国の移民政策管轄機構の概略を示し、日本は諸外国の事例に学びつつ自国に適した移民統括機構を設置すべきではないか、と提案しました。実現に向けて真剣な議論が必要だが、移住者の社会統合を支援するシステムは急務である、と橋本氏は述べました。

最終報告者の井口泰氏(関西学院大学教授・少子経済研究センター長)は、日本の行政機構の仕組では全く新しい「移民庁」の創設は難しい、と指摘しました。また、包括的な移民対策を講じるには政府レベルの対応だけでは不十分で、自治体、(移住者を送り出す側の)諸外国政府、そしてNPOやNGOとの協力が不可欠である、と述べました。

第三部は会場からの質問への応答と、各報告者からのこれまでの発言を総括するまとめの言葉で閉会となりました。移住者の問題が極めて複雑であること、誠意をもってそれに向き合うことが日本社会全体にとって重要であることを強く印象づけられたシンポジウムでした。日本政府がより積極的な対策に乗り出すことを強く期待するなかで、一般市民の側にも、快適な共存に向けてできることがありそうだというのが、シンポジウム参加者が共有した思いだと言えましょう。

シンポジウムの冒頭で読み上げられた潘基文(パン・ギムン)事務総長の言葉です。(日本語訳の全文はこちら

権利を侵害され、社会から疎外、排除された移住者は、その出身地にも移住地にも、経済的、社会的に貢献できなくなってしまいます。しかし、適切な政策と人権の保護を受けられる移住者は、個人にとっても、また、出身国、経由国、移住先国にとっても、役に立つ力となれるのです。(「2011年国際移住者デーに寄せるミッセージ」より)

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シンポジウムの会場となった明治学院大学白金キャンパスの教室には、学生、大使館関係者を含む130人以上が全国から駆けつけ、報告に聞き入った Photos:移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
シンポジウムの開会にあたり、「国際移住者デー」に寄せる潘基文(パン・ギムン)事務総長のメッセージを代読する妹尾靖子・国連広報センター(UNIC)広報官
第一部では、4人の登壇者が日本における各移住者コミュニティの歴史・現在・未来について報告を行った
会場参加者の質問に応える形式で進められた第三部のディスカッション。熱心なやり取りが相次いだ
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