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国連事務総長、グローバル健康危機タスクフォースを任命 メンバーには日本の尾身茂氏も

2016年07月08日

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は2016年6月29日、「Global Health Crisis Task Force(グローバル健康危機タスクフォース)」の顔ぶれを発表しました。

グローバル健康危機タスクフォースは、事務総長の「High-level Panel on the Global Response to Health Crises(健康危機に対する世界的な対応に関する国連ハイレベル・パネル)」が策定した提言の実施を支援、モニターするために、事務総長が設置したものです。ハイレベル・パネルは2016年2月9日、報告書「Strengthening the global health architecture(将来の健康危機から人類を守るために)」を発表しましたが、事務総長はこれを受け、2016年4月8日の報告書「グローバル保健体制の強化」で、パネルの提言に関する所見を表明しました。タスクフォースはその作業で、事務総長の所見に沿ったパネル提言の実施を確保します。

タスクフォースは、事務総長に定期的なアップデートを行い、パネル提言の実施進捗状況を報告します。タスクフォースはまた、新たに生じつつある健康危機や、グローバル保健体制におけるギャップまたは弱点に関する課題につき、事務総長の注意を促すことにもなっています。

タスクフォースではヤン・エリアソン国連副事務総長、ジム・ヨン・キム世界銀行総裁、マーガレット・チャン世界保健機関(WHO)事務局長が共同主幹事を務めます。エリアソン副事務総長はタスクフォース議長も兼ねることになっています。デビッド・ナバロ事務総長特別顧問(持続可能な開発のための2030アジェンダ・気候変動担当)は、タスクフォース議長を補佐します。

タスクフォースは、国連システム内外の専門家で構成されています。メンバーは感染症、地域医療、公衆衛生、開発分野の有識者で、リスクアセスメントや人道支援活動の実施、流行病対応管理、資金調達、研究、イノベーションの経験も備えています。

タスクフォースは2016年7月から1年間、活動を行います。

タスクフォースの共同主幹事とメンバーの一覧、および、国連システム外部から起用されたメンバーの略歴は、下記のとおりです。

タスクフォースの顔ぶれ

共同主幹事

ヤン・エリアソン氏(スウェーデン)(議長)は、国連副事務総長。

ジム・ヨン・キム氏(米国)は、世界銀行総裁。

マーガレット・チャン氏(中国)は、世界保健機関(WHO)事務局長。

 

メンバー

ヘレン・クラーク氏(ニュージーランド)は、国連開発計画総裁。

クリス・イライアス氏(米国)は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団グローバル開発プログラム部長。億単位の人々に裨益する影響力が大きく、持続可能な解決策につながる可能性がある分野を重点に、農業開発、緊急対応、家族計画、貧困層向けの金融サービス、母子保健、栄養、ポリオ根絶、ワクチン投与、水と衛生といったグローバル開発プログラム全般を監督しています。2012年にゲイツ財団に加わる以前にも、国際的な非営利組織でさまざまな職務と任地を経験しています。最近では、テクノロジーの進歩、システムの強化、健康的な行動の促進により、全世界の人々の健康増進を目指す国際的非営利組織PATHの理事長兼CEOも務めました。

アンソニー・S・フォーチ氏(米国)は、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長。1984年にNIAID所長に就任して以来、フォーチ氏は感染症と免疫疾患の予防、診断、治療を専門とする幅広い研究を手がけてきました。フォーチ氏はNIAID免疫機能制御学研究室長としても、HIV/エイズについて数々の重要な発見を行っており、この分野で最も信頼される科学者の1人となっています。フォーチ氏は、グローバルなエイズ問題や、エボラ、流行性インフルエンザといった新たに広がりつつある感染症に対する医学面、公衆衛生面での備えを強化するための取り組みについて、ホワイトハウスと米保健福祉省に助言を行う顧問にも名を連ねています。また、すでに開発途上地域で数百万人の命を救っている「米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)」立案者の一人でもあります。

モハメド=マフムード・ハッセン氏(モーリタニア)は、モーリタニア公衆衛生学会会長。最近のエボラ流行においては、2015年から2016年にかけてのイスラム開発銀行によるエボラ対策措置と復興への取り組みで調整役を務めました。モーリタニア保健省出身のハッセン氏は、国家公共医療サービス局長として、流行病対策と対応の監督を担当しました。その後は世界保健機関(WHO)で、西アフリカ疾病予防・対策顧問のほか、ベナン、コンゴ共和国、ブルンジ、マダガスカル、ブルキナファソのWHO代表を歴任しました。2006年に退官したハッセン氏は2009年から2010年にかけて、WHOのH1N1豚インフルエンザ流行対応調整官に任命されました。また、2013年から2014年にかけては、WHOが任命した専門ワーキンググループの一員として、「コレラ対策グローバル・タスクフォース」の再活性化にも貢献しました。

フェリシティ・ハーベイ氏(英国)は、英国公衆衛生・国際保健局長。2016年6月末で退官予定です。2012年4月から現職にあるハーベイ氏は、グローバル保健と公衆衛生を担当していますが、この中には公衆衛生制度、感染・非感染症、イングランド国民医療サービス(NHS)とイングランド公衆衛生局によるエボラ対策の調整をはじめとする緊急事態への備え、レジリエンスおよび対応が含まれています。それ以前には、首相実施室長、保健省医学薬学産業グループ責任者、行刑施設保健局長兼刑務局刑務審議会メンバー、NHS執行部品質管理責任者、主席医務官付政府秘書官を歴任しました。ハーベイ氏はWHO健康危機計画の独立監督・諮問委員会のメンバーでもあります。

イローナ・キックブッシュ氏(ドイツ)は、ジュネーブ大学院大学国際開発研究所グローバル保健センター所長。WHO独立エボラ中間アセスメント・パネルのメンバーでもあります。最近では、グローバル保健ガバナンスとグローバル保健外交におけるイノベーションへの貴重な貢献を評価され、ドイツ連邦共和国功労勲章を受章しました。WHO欧州・東地中海地域事務所長協議会上級顧問として、多くの国々にグローバル保健戦略に関する助言も提供しています。スイスでは、カレウム財団執行理事会のほか、保健担当連邦副大統領に助言を提供する専門家パネルにも名を連ねています。長年にわたり、多くの形で保健分野のイノベーションに貢献するとともに、女性のエンパワーメントにも意欲的に取り組んできました。WHOとはさまざまなレベルで協力関係にあるほか、イェール大学教授として、学界ともつながりがあります。

アンソニー・レイク氏(米国)は、国連児童基金(UNCEF)事務局長。

イブ・レヴィ氏(フランス)は、フランス国立保健医学研究所(Inserm)理事長。免疫系の発達とその病理を専門に研究しています。HIV感染や一定の免疫不全、感染症に対する免疫療法とワクチンにつき、約20件の国内・国際臨床試験の調整と開発を行いました。レヴィ氏は1996年から現在まで、アンリ・モンドール・ドゥクレテイユ病院臨床免疫・感染症科の主任を務めています。2006年には、国立エイズ・ウイルス性肝炎研究機関(ANRS)ワクチン・プログラムの学術責任者に就任しました。2011年にはLabex(卓越した研究室)として「ワクチン研究所」を創設しています。2010年から2012年にかけては、パリ東大学クレテイユ校副学長を務めました。その後は、高等教育・研究大臣の特別顧問に就任しています。

ポー・リャン・リン氏(シンガポール)は、シンガポール保健省・タントクセン病院上級コンサルタント。リー・コンチャン医科大学院、シンガポール国立大学公衆衛生大学院および医科大学院で共同の役職に就いています。リン教授はまた、抗菌薬耐性対策と、感染症専門家養成に関する国家委員会の委員長を務めているほか、旅行者保健・予防接種診療所の所長と、ジオセンチネル・シンガポールサイト責任者でもあります。その他、WHO「地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)」の運営委員会や、健康危機におけるWHO作業改革に関する諮問グループにも積極的に関与しています。重症急性呼吸器症候群(SARS)やデング熱、チクングンヤ熱、H1N1豚インフルエンザ、レプトスピラ症を含め、国内、国際レベルでの様々な疾病流行への対策にも努めてきました。リン氏は2012年から2016年にかけ、タントクセン病院感染症・疫学研究所で部長を務めました。

スティーブン・オブライエン氏(英国)は、国連人道問題担当事務次長兼緊急援助調整官。

尾身茂氏(日本)は、独立行政法人地域医療機能推進機構理事長。2013年から、WHO執行理事会のメンバーに名を連ねています。2013年には第66回世界保健総会で議長を務めました。尾身氏は1999年から2009年にかけ10年間、WHO西太平洋地域局長を務め、2003年にはSARS流行対策を先頭に立って進めました。また、1990年から1998年にかけては、WHO西太平洋地域事務所で感染症予防対策課長を務め、地域ポリオ根絶イニシアティブを主導しました。尾身氏は1987年から1989年にかけ、自治医科大学免疫学部で研究者を務めていましたが、2009年から2012年にかけては、同大学で公衆衛生学の教鞭を執っています。

エルハジ・アス・シー氏(セネガル)は、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)事務局長。2014年8月にIFRCに加わる以前は、ニューヨークでUNICEFパートナーシップ・資源開発局長を務めていました。UNICEFではまた、東部・南部アフリカ地域局長とアフリカの角地域担当グローバル緊急事態調整官も歴任しています。シー氏は2005年から2008年にかけ、ニューヨークの国連開発計画(UNDP)本部でHIV/エイズ対策局長を務めました。それ以前には、ジュネーブの「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」に勤務しています。シー氏には、国連合同エイズ計画(UNAIDS)ニューヨーク代表兼ニューヨーク連絡事務所長としての経験もあります。1988年から1997年にかけては、セネガルのダカールで、「第3世界での環境開発アクション」保健開発プログラム局長を務めていました。シー氏はWHO健康危機管理プログラム独立監督・諮問委員会のメンバーでもあります。

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©UN Photo/Albert González Farran