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国連、MDGギャップ・タスクフォース報告書を発表

プレスリリース 11-058-J 2011年09月17日

~経済の混乱で貧困対策の公約はさらに急務に~

国連、ニューヨーク– 9月16日に発表された国連の報告書によれば、2008年の金融危機に始まった経済の低迷により、多くの開発途上国はミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向け、さらに国内総生産(GDP)の1.5%を注ぎ込む必要があります。その一方で、ドナーからの支援は2000年のMDGs発足以来、急増してはいるものの、合意済みの目標値には達していません。

「この報告書は国際社会をはじめとする利害関係者が、開発に向けたグローバル・パートナーシップの潜在能力を発揮するよう、一層の取り組みを求めています」。9月16日にニューヨークで国連MDGギャップ・タスクフォース報告書を発表した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長はこのように述べ、さらに次のように付け加えました。

「必要な資金が多い分、その報酬も大きいのです」

報告書は、ドーハ・ラウンド交渉の行き詰まりなどにより、各国がこれまで貧困脱出の手段としてきた、貿易による急速な発展の機会が閉ざされているという点を指摘しています。後発開発途上国(LDC)48カ国に関する2011年国連会議(イスタンブール)では、市場開放と能力育成に向けた措置の拡充に関する合意が生まれましたが、特に2004年以来、LDCの市場アクセスに大幅な改善が見られていないことを考えれば、この合意は期待できる代替策といえます。

国連の報告書はまた、貿易保護主義によって経済成長の減速に対処することは、貧困国にも被害を及ぼす自滅的な策だと警告しています。

従来のドナーからの政府開発援助(ODA)は2000年から2倍以上に増え、2010年には1,290億ドルという記録的水準に達しました。しかし報告書によると、この2010年の総額でさえ、2005年のG8グレンイーグルス・サミットでの公約額を210億ドル下回り、しかも国民総所得の0.7%という、従来のドナーが以前から標榜している目標の達成に必要な額の半分にも及んでいません。

国際的パートナーシップに関するミレニアム目標(MDG)8は、公正で開放的な貿易システム、開発援助の大幅な増額、貧困国向けの債務救済、開発途上国の医薬品や技術へのアクセス条件改善を通じ、貧困を根絶できる環境の整備を目指すものです(目標1から7は、飢餓、極端な貧困、病気、環境破壊、女性の地位向上と普遍的初等教育達成に対する障害を取り扱っています)。

2000年以来、国際環境が改善したもう一つの分野として、多くの貧困国の持続不可能な債務負担の免除があげられます。しかし、最近の金融の混乱で、幾分かの後退も見られます。報告書では国際通貨基金(IMF)が、債務返済困難に陥っているか、そのリスクが高い国として、19カ国を特定していることに触れていますが、その中には、債務救済の対象となったことのある国が8カ国含まれています。

新しいドナーと貿易相手国の出現

国際的支援の停滞を部分的に補っているのが、活力ある新興市場経済国をはじめとする開発途上国です。

この「南南」協力による支援額は2008年までに150億ドルに達し、2年間で78%の増大を遂げた後も、さらに成長を続けています。開発途上国に対する輸出にLDCが占める割合は、2006年の45%から2009年には49%に上昇しており、例えば中国は、債務帳消しの継続に加えて、LDCからの無税輸入品目の拡大も約束しています。

また、航空券1枚の購入につき1ドルか2ドルを自発的に拠出するなど、開発金融向けの斬新な資金調達手段も見られるようになりました。とはいえ、報告書は、従来のドナーによる拠出増額も緊急に必要だとしています。しかも、ここ数カ月の金融混乱が生じる以前でさえ、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)メンバー国は、ODA予算の増額幅を今後3年間で年間わずか2%と、それまでの3年間の8%から大きく縮小することを決めていたのです。

MDG目標の実現に向け、貧困国も実地の取り組み

事務総長は開発途上国に対しても、2015年の期限までにMDGの具体的目標を達成できるよう、一層の取り組みを強く促しています。

9月の国連総会に向けて作成した別の関連報告書(文書A/66/126)で、事務総長は、ばらつきが見られる中でも、目標達成に向けた大きな前進の原動力となり、今後の前進にも鍵を握る開発途上国自身の活動を分析しています。

「ミレニアム開発目標(MDGs)に向けた前進の加速」に関し、報告書は、マクロ経済政策で経済成長だけでなく、雇用の創出も支援する必要があると述べています。農業と農村部門の潜在能力の発揮は、低所得国での前進に鍵を握っているため、すべての開発途上国は、持続的な経済成長を確保しながら、環境条件を管理する新たな方法を模索する必要があります。事務総長はまた、社会保険制度の対象者拡大や、MDG達成に向けた人権とジェンダー平等の枠組みの採用のほか、よいガバナンスの重要性も強調しています。

安価な医薬品への幅広いアクセスが妨げられていること(タスクフォース報告書によれば、開発途上国で必須医薬品を入手できる公共施設は、全体のわずか42%)については、インドをはじめとする国々が、安価な後発医薬品の生産による対策を講じています。

「インドのケースは、開発途上国で安価なHIV治療薬へのアクセスを拡大するうえで、知的財産権政策が有効に活用できることをよく示している」国連報告書はこのように述べています。「インドの医薬品業界は輸出志向が強く、経過期間を活用することで、開発途上国への後発医薬品と安価な抗レトロウイルス薬の重要な供給者となった」

この報告書を策定した事務総長のMDGギャップ・タスクフォースには、20を越える国連機関のほか、IMF、OECD、世界銀行、世界貿易機関も加わっています。2000年のミレニアム・サミットで、世界の指導者たちは「国内、国際レベルで開発と貧困廃絶につながる環境を整備する」ことを約束しました。2010年9月のMDGサミットでは、世界の指導者たちが「約束を守る」ため、グローバル・パートナーシップを強化する決意を改めて表明しました。目標達成期限をわずか4年後に控え、報告書は世界の指導者たちに「約束を果たすときが来た」と告げています。

さらに詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.un.org/en/development/desa/policy/mdg_gap/index.shtml