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児童と武力紛争に関する国連特別代表、
総会に第1回報告書を提出

1998年10月12日

(児童と武力紛争に関するオララ・A・オトゥヌ国連特別代表は1998年10月12日、第1回報告書(A/53/482)を第53回総会に提出し、戦時中の子ども虐待を止める国際的行動を要請した。以下は、同報告書の要旨である。)

 

 今日、世界中の武力紛争犠牲者の大半を占めるのは、紛争においてもっとも弱い立場にあり、かつ、その責任がもっとも小さい数百万人の子どもと女性である。紛争犠牲者全体の90%が一般市民であるが、そのほとんどが壮絶な殺し合いに巻き込まれた子どもと女性である。全世界のほぼ50カ国で、数百万人の子どもが武力紛争の渦中にあるか、紛争後の苦しみを味わっている。子どもは、戦争の犠牲者であるばかりでなく、主要な攻撃目標となることがあまりにも多い。戦争の目標となった子どもたちは、少年兵に仕立て上げられて、その手段となることもしばしばである。

 問題の深刻さは、以下の事実にも表れている。

  • 1987年から1997年までの10年間に、200万人以上の子どもが殺害された。
  • 同じ期間に、600万人以上の子どもが手足を失ったり、身体障害者となった。
  • 同時期に孤児となった子どもは少なくとも100万人に及ぶ。
  • 世界の難民および国内避難民の半数に当たる1,140万人が子どもである。
  • 18歳未満の少年兵、ゲリラおよびその補助員は約30万人に上る。

 こうした状況、ならびに、戦時中の子どもと一般市民の虐待に国際的な関心を喚起する緊急の必要性に鑑み、国連総会は、グラサ・マシェル元モザンビーク教育大臣による、武力紛争の子どもへの影響に関する調査を要請した。マシェル氏はほぼ3年間を費やし、世界中の紛争および紛争後の状況を調査した。この「マシェル報告書」は1996年後半、国連に提出された。

 同報告書と総会による勧告を受け、事務総長は1997年9月、児童と武力紛争に関する特別代表を任命した。特別代表に任命されたオララ・A.オトゥヌ氏は、政治的に高いレベルにおいて子どもの擁護者となり、また国連部局、機関、各国政府、非政府機関(NGO)および各地の関係団体・市民を結び付ける促進役および媒介役として活動している。オトゥヌ氏は、紛争中および紛争後における子どもの緊急のニーズ、ならびに、その権利を国際的に認識・保護する必要性を重視している。同氏の任期は3年間で、活動資金は自発的拠出によって賄われている。

 オトゥヌ氏はこのたび、第1回目の年次報告書を提出し、そのなかで紛争中の人道的介入、紛争後における社会復帰および再統合、ならびに、紛争を防止し、安定し、寛容で公正な社会を再建する必要性などについて述べた。

 国際的な活動を調整することにより、子どもの置かれた状況を具体的に改善し、その惨状を緩和できる中核的分野として、オトゥヌ氏は以下を指摘した。

  • 武力紛争への子どもの参加停止を図ること、少年兵徴用の停止を図ること、動員解除と再統合を追求すること、兵士の法定最低年齢の15歳から18歳への引上げを図ること、15歳未満の子どもに武器を持たせないよう主張すること
  • 小火器の子どもへの影響を減少させること
  • 地雷認知と子どもの犠牲者の社会復帰を促進すること
  • 武力紛争中における子どものレイプおよび性的搾取を止めさせること
  • 避難民、孤児および身寄りのない子どもを援助すること、家族の再会を促進すること
  • 子どもに対する制裁の影響を評価・是正すること
  • 現地の価値体系を促進すること
  • 国連活動に国際的基準を組み入れること

特別代表の活動

 特別代表はその任務を全うする上で、18歳未満の子どもの虐待防止、保護および社会復帰を促進するため、規範的、政治的および人道的戦略を組みあわせている。特別代表は、以下に焦点を当てている。

幅広い要素

  • 強力な啓発活動の展開
    国際社会の行動を喚起するための世論および当局の認識向上
  • 国際法文書と現地の価値観の強化
    国際的な関心の喚起、国際基準遵守の要求、および、国際基準と現地の伝統的規範の格差是正
  • 継続する紛争下における具体的イニシアチブへの着手
    政治的・人道的外交の展開、難局の打開、具体的イニシアチブの提案
  • 紛争後のニーズへの協調的対応
    平和建設、再統合、和解における優先課題としての子どものニーズと権利の推進

1年目の具体的行動

  • 被災国の訪問
    特別代表はリベリア、シエラレオネ、スリランカ、スーダンおよびコソボ(ユーゴスラビア連邦共和国)を訪れたほか、そのスタッフはアフガニスタンとパキスタンを視察訪問した。特別代表は、人道援助に対するアクセスの保証、子どもの徴用および戦争参加の停止、一般市民を目標とする攻撃および地雷使用停止の努力など、紛争当事者からのコミットメントを取り付けた。
  • 地域的な支援とイニシアチブの構築
    特別代表は、子どもと武力紛争に関する一連の地域的シンポジウムを企画したが、その第1回目は、当時欧州連合議長国であった英国の主宰により、6月に開催された。第2回目のシンポジウムは日本の主宰により、1998年11月19日から20日にかけて開催された。これらの会合では啓発活動、教育、政治的支援の増強およびパートナーシップの強化が促進されている。
  • 国際刑事裁判所設立交渉における子どものためのロビー活動
    特別代表をはじめとする子どもの擁護者たちは、国際刑事裁判所設立交渉において、裁判所規程に子どもの保護を含めるようロビー活動を行い、これを成功させた。紛争下におけるレイプおよびその他の形態の性的暴力は、人道に対する罪として定義されている。また戦争犯罪規定には、法定最低年齢である15歳未満の子どもの徴用と、主として子どもが利用する建物および敷地を目標とする攻撃が含まれた。
  • 安全保障理事会の関与
    特別代表の要請に応じ、安全保障理事会は6月、武力紛争による被害を受けた子どもの状況について集中討議するため、前例のない1日間の会合を開いた。その後安保理は、戦争の犠牲となった子どもの惨状に関する重大で画期的な声明を発表している。
  • 協力の拡大と非政府機関の動員
    特別代表は、200以上の、主に実地活動に従事するNGOおよび研究機関との協議を行い、その協力とネットワークの幅を公式な協力主体以外にも拡大している。特別代表は少年兵、子どもに対する小火器の影響およびその他の問題に関して、同盟とイニシアチブを創設するよう奨励している。

勧告

 特別代表は、報告の結びの部分で、以下の政策勧告を行っている。

  • 言葉を実行に
    人道に関する基準と公約を、危機にさらされた子どもを具体的に援助する行動に置き換えなくてはならない。各国政府はその外交・国内政策に、子どもの強力な保護を組み入れるべきである。政府およびその他の主体は、集団的影響力の行使により、虐待者に対し、政治的正当性、外交的承認、兵器、装備および資金の提供を拒否すべきである。
  • 徴用および戦闘に関する最低年齢の引上げ
    戦闘行為に徴用・利用できる子どもの最低年齢を、15歳から18歳に引き上げるべきである。この目標が達成されるまでは、15歳という年齢制限を厳格に遵守しなければならない。
  • 制裁による子どもの惨状緩和
    子どもの健康、栄養および教育に対する影響に鑑み、制裁の見直しを行うとともに、この関連において、イラクにおける子どもの状況を含め、現行の制裁体制を見直すための行動を起こすべきである。
  • 現地の価値体系の促進
    倫理的な真空状態は、紛争の帰結だけでなく、その重要な原因でもある。保護者、大家族、高齢者、教師、学校および宗教団体を含め、伝統的に価値観を教え、子どもを保護し、その福祉を促進してきた制度とネットワークを強化することが不可欠である。
  • 紛争後の平和建設
    紛争後の復興と平和建設に関わる主要な主体は、子どもとそのニーズを、早期計画策定段階から中心的な関心事項としなければならない。このような主体としては、世界銀行、欧州連合、国連開発計画および二国間開発機関があげられる。
  • 緊急人道援助から政治的行動へ
    国際社会は、根本的な政治課題に取り組み、紛争を解決するための政治的努力を強化しなければならない。人命を救い、惨状を緩和する上で、効果的な人道援助は不可欠ではあるが、これを以って政治的行動に代えることはできない。
  • 根本的な紛争防止
    国際・国内主体は、社会内部における著しい不均衡に対処することにより紛争の防止を図るために、必要な政治的、経済的および社会的措置を講じなければならない。紛争に発展しうる競合的要求を仲裁するための正規の非暴力的メカニズムとなる、真に民主的な慣行と法の支配尊重を確立することが不可欠である。