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国連とグローバルな商取引

プレスリリース 99/163 1999年09月20日

新研究により国連のグローバル経済促進における役割が明らかに

(ニューヨーク発、9月7日) 国連は、財、金銭および情報の国際的交換の枠組を確立する、いわゆるコフィー・アナン事務総長の言うところの「ソフト・インフラ」がもたらす便益を評価する新刊書を出版する。
 「国連とグローバルな商取引(The United Nations and Global Commerce)」に関する75ページの報告書は、国連システムが日常的に提供しているものの見落とされることの多い地球的サービスの歴史と広がりをたどっている。例えば、

  • 海洋および国際海峡を自由に航行する船舶は、国連会議と国際海事機関 (IMO)が作成した規則によって保護されている。
  • 航空会社は、国際民間航空機関 (ICAO) によって交渉された協定によって、国境を越えて飛行し、緊急の場合には着陸する権利を認められている。
  • 世界知的所有権機関 (WIPO) は、商標権、著作権および特許権の保護に関する国際協力を促進している。
  • 国連統計委員会は各国に対し、経済統計、会計基準および商品分類の整合性を図る援助を行っている。
  • 国連国際商取引法委員会 (UNCITRAL) は、国境を超える商取引の両端で適用される標準的規則を発展させており、それによってあらゆる関係者にとってプロセスが大幅に簡素化されている。
  • 国際電気通信連合 (ITU) による周波数の割当は、電波の過密を防止している。

 

 「こうしたサービスを普及させるコストは、必要に応じてそのための手配を行う際に民間のユーザーが支払わなければならないコストに比べれば、取るに足りないものである」と報告書は指摘する。「国境を越えた商取引と投資によって創出される所得額と生活水準の向上に比べれば、そのコストはさらに割安である。」
 この報告書は、国連と国際ビジネス社会の間に実務的な協力関係を構築しようとするコフィー・アナン事務総長のイニシアチブを支持して作成された。報告書は、先進国、開発途上国および経済移行国のビジネスが円滑に行われるように助けながらも、国連の有用性に関する報道や討論では見逃されがちである静かな、しかし実効的な技術作業にスポットを当てている。
 この研究報告書の作成は、ブリティッシュ・コロンビア大学国際関係研究所のマーク・W.ザッカー氏が担当した。
 「国連の仕事は会合や会議だけに止まらない」 と国連のジョン・ラギー事務次長補は語る。 同氏は、このビジネス・イニシアチブについて事務総長に助言を行っている。「サービスの提供は国連の活動において大きな割合を占めている。本報告書で詳述されるサービスは、ビジネス社会を支援するとともに、取引費用と商業上のリスク軽減を通じて財やサービスを安価にすることにより、あらゆる人々に裨益している。」
 同書は9月7日の午前10時 (ニューヨーク時間)、 国連本部事務局S-226号室で開かれる記者会見で発表される。報告書の紹介は著者であるマーク・ザッカー氏と、国連事務総長室経済専門家のジョージ・ケル氏が担当する。 本件に関する記事資料および同書のプレスコピーにある情報はすべて、9月7日ニューヨーク時間午前11時まで発表禁止である。
 同日には、ジュネーブ、ウィーンおよびロンドンでも、同様の記者発表が行われる。
 同書に関する詳細、およびインタビューの手配についての照会先は以下のとおり。

Tim Wall
Development and Human Rights Section
UN Department of Public Information
Tel. +1-212-963-5851
E-mail: wallt@un.org
『国連とグローバル取引(The United Nations and Global Commerce)』(販売番号E.99.I.18, ISBN 92-1-100815-8)は、定価7ドル50セントで以下から入手できる。
United Nations Publications
Sales Section, 2 UN Plaza
Room DC2-853, Dept. PRES
New York, NY 10017, USA
Tel. 800-253-9646 or +1-212-963-8302
Fax +1-212-963-3489
E-mail: publications@un.org
または、
United Nations Publications
Sales Office and Bookshop
Palais des Nations
CH-1211 Geneva 10, Switzerland
Tel. +41-22-917-2614
Fax +41-22-917-0027
E-mail: unpubli@unog.ch
Internet: http://www.un.org/Publications

1999年9月7日ニューヨーク時間午前11時まで発表禁止

『国連とグローバル取引 (The United Nations and Global Commerce)』
マーク・W.ザッカー著
ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)国際関係研究所

要 旨

 国際市場には地球的な交通規則が必要である。
 国境を越え、遠隔地で活動することから生じる困難が日常的に伴うビジネス世界において、このことはまさに自明の理である。しかし、すでに財、金銭および情報の国際的交換を可能にしている、コフィー・アナン国連事務総長が言うところのいわゆる「ソフト・インフラ」の役割は、さほど広く認識されていない。このソフト・インフラを確立、維持および効果的に拡張する上で国連システムが果たしている役割についての理解はそれ以上になされていない。

  • 海洋および国際海峡を自由に航行する船舶は、国連会議が法制化した規則によって保護されている。
  • 航空会社は、国連システムの一機関である国際民間航空機関 (ICAO) によって交渉された協定により、国境を越えて飛行し、緊急の場合には着陸する権利を認められている。
  • 国連の専門機関である世界知的所有権機関 (WIPO) は、世界中の商標権、著作権および特許権の保護に関する国際協力を促進している。
  • 国連統計委員会は各国に対し、経済統計、会計基準および商品分類の整合性を図る援助を行っている。
  • 世界保健機関 (WHO) は、医薬品の品質に関する判断基準を設定し、医薬品名の標準化をはかっている。
  • 「国際的売買に関する国連条約」および「海上物品運送に関する国連条約」は、国際商取引における売り手と買い手の権利および義務の確定を助けている。
  • 万国郵便連合(UPU)の議定書は、郵便物の国境を越えた移動を可能にしている。
  • 国際電気通信連合(ITU)による周波数の割当は、電波の過密を防止しているほか、その技術基準により、世界中の送信機と受信機の相互接続が可能になっている。
  • 世界気象機関(WMO)が加盟国から収集し、配給するデータは、全世界と各国国内の天気予報を可能にしている。

 つまり、このような体制と国連システムが作り出す公共財がなければ、途上国、先進国、経済移行国を問わず、自国の国境を越えて活動しようとする企業は、まさにジャングルに飛び込むことになるのである。

 

 交通信号など、全国的および地域的に提供される公共財の場合と同様、こうしたサービスを普遍的に利用できるようにするためのコストは、一時的に必要に応じてそのための手配を行う際に民間のユーザーが支払わなければならないコストに比べれば、取るに足りないものである。国境を越えた商取引と投資によって創出される所得額と生活水準の向上に比べれば、そのコストはさらに割安である。

「ソフト・インフラ」構成要素の定義

 国連システム内では、総会に付属する14の基金および機関が、経済社会開発に専心している。 国連経済社会理事会に対しては、世界銀行、国際通貨基金、それに協力関係にある世界貿易機関に加え、12の専門機関が報告を行っている。
 これらのほとんどすべての機関はもとより、国連総会自体も、何らかの形で商取引の秩序と開放性の維持に貢献している。国連システム全体による貢献は、以下のように最終製品を分類することにより、より説得力のある形で特徴づけられよう。
 国家の司法管轄権の確定により、陸地、海洋および上空に対して特定国が合法的な政治権限を有するのか否か、あるいは、さまざまな地域がすべての国家の共有財産であるのか否かが明らかになる。これにより、例えば石油の探査や採掘への投資、あるいは、海洋と大陸を越えた船舶や航空機の乗入れが可能になる。
 世界知的所有権機関は世界貿易機関と協力し、外国における企業の知的所有権の保護と実施を促進しているが、これがなければ、海外子会社の設立はもとより、ハイテク製品の輸出さえも極めてリスクの高い事業となろう。
 いずれの経済市場にとっても死活的重要性を有するものの、ほとんど知られていない標準化の分野として、経済用語の定義、および、経済的概念のための測定基準に関する合意があげられる。国内経済および国際商取引の主要な側面に関し、これらの定義と測定基準の開発の分野でもっとも重要な機関が、国連統計委員会である。加えて、国連国際商取引法委員会は、商業契約に関連する重要な定義を策定しているほか、事実上、国連のすべての規制機関は何らかの形で、グローバル取引用語の標準化に貢献している。国際商取引に関する技術と手続の標準化は国際海事機関、国際民間航空機関、国際電気通信連合および万国郵便連合が行っているが、これにより、財と情報の地球的移動における連続性が確保されている。
 国連が商取引を律する国際法の策定への関与を始めるまで、このような標準化作業は多くの国際機関によって促進されていた。現在では、国連国際商取引法委員会がこの分野でもっとも重要な機関となっており、1980年の国際的な売買に関する国連条約に規定されるような共通の規則を受け入れることは、貿易を促進する一方で、取引費用を軽減する。
 国家間を移動中の輸送者、財および情報に対する損害を防止する協定がなければ、企業が国際的な商業取引に乗り出す可能性は低い。国際海事機関および国際民間航空機関の活動の中には、事故の防止に重点を置いているものが多い。また、国際電気通信連合によって締結された協定の多くは、電波の混信防止を主眼としているほか、万国郵便連合は郵便物の紛失防止の確保に努めている。
 万一、国際輸送中に事故が発生した場合、企業が金銭的損失を補償されることが重要である。国連国際商取引法委員会が取り組む中心的課題には、財に対する損害の賠償および補償が含まれている。国際海事機関と国際民間航空機関は、海運と空輸について同様の問題を取り扱っている。
 経済情報の収集と分析は、国家や企業が政策を策定したり、国際的な規制協定を締結したりする際に助けとなる。ほとんどの国連機関は積極的に情報の収集、分析を行っており、もっとも重要で信頼できる地球的データの供給源と見なされているケースもある。

最前線の課題

 上述の規範設定や標準化機能の多くは、21世紀初頭あるいはそれ以前に確立された取り決めに根差しているが、国連はこれに加え、新しく緊急な国際的関心事項の最前線にも立つようになってきている。
 こうした関心事項には、国内や国際の産業活動による国境を越えた偶発的被害に関するものが含まれる。中でも、もっとも重要な被害は、産業活動の環境への影響、すなわち公害である。さらにもう一つの問題として、国際旅行者を通じた病気の感染があげられる。各国はこうした被害自体について懸念を抱いているが、こうした問題への対策の失敗が、関係産業に対する政府の敵対的な行動をもたらしうること、また、国際的でなく国内的に規制が課された場合、競争力が劣る可能性があることについては、国家と産業の双方が懸念を抱いている。換言すれば、国内産業が対等に競争できる下地を作る動機付けが存在するのである。国際海事機関 (IMO) は海洋汚染に関する条約促進に努めているほか、国連環境計画 (UNEP) と国連総会は、大気汚染と有害廃棄物の輸出をはじめ、さまざまな問題に関する環境条約を推進している。国連総会、UNEPおよびIMOが推進する環境条約に不可欠な支援はしばしば、問題解決のコストを産業界が地球的規模で負担しなければならなくなることを懸念する各国国内の産業界から得られている。世界保健機構 (WHO) が制定した「国際保健規則」の場合、中心的な関心は人間と商取引の動きを遅らせるような不必要で過度の措置を防止することにあった。
 最近、国連システムが取り組んでいるもう一つの問題として、犯罪組織あるいは個人による国際的資金洗浄 (マネー・ローンダリング) があげられる。この問題に対する企業の関心はさまざまであることは確かだが、資金洗浄は合法的事業による租税負担を増大させ、腐敗を助長し、競争を歪め、人為的に為替レートをつり上げるという点では、一般的な認識が得られている。国連犯罪防止・刑事司法委員会では1988年、資金洗浄の取締りをもねらいとした薬物対策条約が承認されたほか、国際犯罪のその他の側面も含めた対策を行う新条約が交渉中である。ウィーンの国連犯罪防止室は、26カ国が加盟する金融活動作業部会、経済協力開発機構、および、金融取引の分野で合法的事業の利益を保護するその他の機関と協力を行っている。
 インターネットのドメイン名という大きな利害の伴う分野に秩序をもたらし、できればあらゆる国家が対等に競争できるサイバースペースを提供するために、世界知的所有権機関が行った一連の勧告は最近、インターネット業界に提示されたところである。「電脳空間不法占拠」 の慣行の排除を狙いとしたガイドラインは、成長する電子商取引をはじめとした貿易への障害を取り除こうとするWIPOの作業の一環である。WIPOの勧告は、WIPO加盟国はもちろん、国連の傘下にはない「インターネット名称・番号指定公社 (Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)」 にも提示されている。
 国際商取引の秩序と開放性の維持に関する新たな国連イニシアチブとして、コフィー・アナン事務総長が1999年1月のダボス世界経済フォーラムで提案した「グローバル盟約」があげられる。事務総長は、基本原則に関する国際労働機関宣言に謳われ、1995年の世界社会開発会議 (いわゆる社会サミット) で確認された労働の価値(結社と集団交渉の自由、差別からの自由、子どもの労働と強制労働の廃止)、世界人権宣言で認められた基本的人権、および、国連環境開発会議 (いわゆる地球サミット) に沿った環境の保全という3つの重要な分野において、普遍的に認識された原則に賛同し、これに基づく行動をとるよう国際ビジネス社会に求めた。アナン事務総長のイニシアチブは、グローバル社会にとってもっとも関心が高い分野においてプラスの成果を生み出すとともに、これら目標の達成手段として、結果的に国際商取引と貧困国の開発見通しを損なうような報復的貿易制裁措置を用いようとする圧力を抑えることをねらいとしたものである。
 以上をまとめると、商取引に関する規則をアドホック・ベースで話し合うことは実際的でない。国家の数が200カ国に達しようとする今日の世界においては、政治的行動はもちろん、経済活動の基準についても普遍的な、あるいは事実上普遍的な支持を取り付けることが重要である。 国際的な体制には合法性が必要であり、国際社会の同意と積極的な参加は、国連を通じた場合にもっとも信頼できる形で得られるのである。

Published by the United Nations Department of Public Information – August 1999.
(1999年8月、国連広報局出版)

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