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世界サミットを控え、新たな国連報告書
現在の開発パターンは地球と人間の長期的安全を損なうと警告

プレスリリース 02/073-J 2002年08月27日

国連、ヨハネスブルク・サミットで持続可能な将来の公約を世界指導者に呼びかけ

 国連が8月13日に発表した報告書は、現在の開発形態がグローバルな生活水準と地球の天然資源にもたらしている大きな被害を明らかにしています。「持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)」を目前に発表された報告書『グローバルな挑戦、グローバルな機会』は、グローバルな資源の管理を改善するために、持続可能な開発を支援する努力を大幅に増強する必要性を強調しています。

 8月26日から9月4日にかけてヨハネスブルクで開催予定の同サミットでは、持続可能な開発を加速する新たなグローバル実施計画の最終案採択と、持続可能性を促進する一連の革新的パートナーシップの発足が予定されています。本報告書は100人を超える世界の指導者がサミット出席の準備を進める中で発表されたものです。

 「『グローバルな挑戦、グローバルな機会』は、私たちが2つの将来のいずれかを選択しなければならないことを物語っている」と語るのは、この報告書を発表した国連経済社会局長でWSSDの事務局長を務めるニティン・デサイ氏です。「私達が現在の無差別的開発形態を何ら変えようとしなければ、世界とそこに住む人々の長期的な安全を損なうことになるでしょう。ヨハネスブルクで、私達がより安全な未来を建設する機会を得ることにより、今日の生活を改善し、子孫のためにより良い世界を構築することになる持続可能な開発形態を支持するのです。」

 報告書は、コフィー・アナン国連事務総長がサミットでの中心的交渉課題として明らかにした、水と公衆衛生、エネルギー、農業生産性、生物多様性および人間の健康を含んだ多くの問題を検討しています。これらの分野における現在の動向を冷静に評価した上で、報告書は次のような調査結果を提示しています。

  • 現時点で、世界人口の40%が水不足に直面している。
  • 世界の海面上昇は、明らかに地球温暖化の影響を示唆している。
  • 人間にもっとも近い動物である大型霊長類の半数を含め、多くの動植物種は絶滅の危機に瀕している。
  • 世界の森林の2.4%は1990年代に破壊された。
  • 毎年、大気汚染の影響で300万人を超える人々が命を失っている。

 明るい側面として報告書は、小規模な持続可能開発実践が生まれ、これが生態系保全や都市大気汚染、安全でない水に関連する幼児死亡率などの問題に再び取り組むために採用され始めている点を指摘しています。しかしサミット代表らは、報告書の中で指摘された望ましくない動向への対策が改善されなければ、こうした前進も危険にさらされると言及しています。

水、エネルギー、農業、生物多様性および健康に関する行動の必要性
 『グローバルな挑戦、グローバルな機会』は、今日のグローバルな天然資源利用に関し、もっとも権威あるデータを再検討しています。

  • 水と公衆衛生-この分野では最近、ある程度の改善が見られているものの、10億の人々が依然として安全な飲料水を利用できないでいます。地下水がその供給を上回るスピードで消費される中、2025年までに、特に北アフリカと西アジアで世界人口の半数に相当する35億人が深刻な水不足に直面すると見られています。
  • エネルギー-1990年代を通じ、化石燃料の消費と炭素排出量は、特にアジアと北米で上昇を続けました。地球温暖化に関連する気候変動の徴候も明確になっています。例えば、アジアとアフリカの各地では、干ばつの頻度と厳しさがともに増しています。特に、サミット開催国の南アフリカは現在、近隣の数カ国とともに、深刻な干ばつに見舞われています。
  • 農業生産性-世界人口の増加に伴い食糧需要も増大し、特に開発途上国ではこれに見合う食糧生産能力が確保できなくなってきています。特に、作付け過剰あるいは砂漠化によって土壌が劣化している地域では、この状況が食糧安全保障に対する長期的脅威となっています。北アフリカと西アジアで継続的な淡水供給不足により、農業開発の潜在的可能性が制約を受けている一方、東南アジアとヨーロッパでは、農地拡大の余地がほとんどなくなっています。
  • 生物多様性と生態系-1990年代には、総計でベネズエラの国土を上回る9,000万ヘクタールの森林が破壊されたと見られています。陸上種の3分の2が森林に生息していることから、この規模の森林破壊は、生物の多様性にとって大きな脅威となります。それに加えて世界の樹木種の9%が絶滅の危機に瀕しており、植物から取れる医薬品の潜在的利用可能性が失われる恐れがあります。
  • 健康-後発開発途上国では、環境関連の病気が大きな死亡原因となっています。この分野では、ある程度の進歩が見られてはいるものの、汚水により毎年220万人が命を失っています。マラリアの蔓延は、人々が入手できる医薬品の効力低下、灌漑システムや森林破壊など蚊の生育に適した開発に助長されています。

 デサイ氏は、「人間の進歩と環境保護という目標は相互に依存するという明白な証拠が得られた」と指摘しています。「政府、企業および市民社会は、人々の生活を持続的に改善するという決意を持ってヨハネスブルクに集まらなければなりません。サミットでは、多くの協力イニシアチブが発足すると見られますが、この報告書で明らかにされた破壊的な開発形態を逆転させるためには、さらに多くのこのようなプログラムを立ち上げ、実施しなければなりません。」新しいパートナーシップの優れた例として、デサイ氏は、革新的なWASH(万人のための水、衛生設備および衛生状態)イニシアチブを挙げています。WASHには28の政府や開発銀行、国連機関、NGOおよび主要な企業が参加し、2015年までに11億人以上に水と衛生設備を提供するため、グローバルな取組みを行っています。

食糧生産は世界の天然資源枯渇の主因
 『グローバルな挑戦、グローバルな機会』は、人間の食糧需要が世界の天然資源に及ぼしている根本的影響を如実に示しています。近年では、人口増加のみでなく、一人あたりの食糧消費量の増大(開発途上国で2,100calから2,700cal、先進国で3,000calから3,400cal)が食糧需要の増加に寄与しています。

 報告書によれば、20世紀を通じて地球全体の水の使用量は6倍と、人口増加率の倍にあたる伸びを示していますが、農業用使用はその70%を占めています。世界の淡水供給量をもっとも無駄にしているのは非効率的な農業灌漑システムで、運搬する水の約60%を失っています。農地の拡大は、ほぼ世界全体の森林破壊の原因となっているだけでなく、生物多様性と生態系にとっても最大の脅威となっています。報告書によれば、世界の海洋漁場の多くは利用し尽くされているか乱獲の状態にあるため、魚の需要増大に対応すべく、養殖が急速に拡大しています。しかしこれ以上の養殖拡大を行うには、環境に対する対策に取り組まなければなりません。

 デサイ氏は、「サミットでの最優先課題の一つとして、私達の長期的な食糧需要を充足するため、農業生産性を向上させる政策とプログラムに合意する必要性があげられる」と語っています。「同様に、効率的な灌漑システムの導入を含め、持続可能な農業実践を拡大することも緊急課題です。ヨハネスブルクでは、食糧生産方法におけるこのような前進を促すことを狙い、食糧農業機関を含むさまざまな政府とNGOの参加のもと新たなイニシアチブを発足させる予定です。」

世界にはグローバルな開発から取り残される地域も
 サミットは、天然資源に対するアクセスとその利用方法を改善することに加え、2015年までに、貧困下にある人々の割合を半減させるという国連のミレニアム開発目標を達成するための最近のグローバルな取組みを、さらに推し進めることも狙いとしています。またサミットは、11月のドーハでの世界貿易機関(WTO)交渉における貿易改革の必要性に関する合意、および3月のモンテレーでの国連開発資金会議における米国とヨーロッパの開発援助大幅増額表明という成果をあげた画期的な12ヵ月間を締めくくります。

 『グローバルな挑戦、グローバルな機会』によると、1990年代には貧困削減に関してある程度の進展が見られ、一日1ドル以下で暮らす人々の数は13億人から12億人へと減少しました。この改善が集中的に見られた東アジアとラテンアメリカでは、慢性的な飢餓に苦しむ人々の数も減少しました。しかしながら報告書によれば、このようなプラスの動きがまだ見られない地域もあります。アフリカでは引き続き、死亡率、貧困および飢餓が最悪の水準に達し、先進国と比較した生活水準の格差も最大となっています。問題は生活水準以外にも、アフリカの天然資源の状況にも及んでいます。アフリカの森林破壊率は世界でも最悪で、1990年代には実に森林の7%が破壊されたのです。

 「ヨハネスブルク・サミットは、増額された国際社会の開発資金を実際にどのように配分するかに関する合意を達成することにより、ドーハとモンテレーでの前進に加え、さらなる発展を図るものとなる」とデサイ氏は語っています。「これらの資源が真に持続可能な形で配分されなければ、グローバルな生活水準を今後、長期にわたって改善することはできません。」

持続可能な将来の最初の徴候
 憂慮すべき動向が多い中、報告書は全世界の戦略的に重要な地域で、持続可能性が生まれつつある証拠もいくつか提示しています。現在、世界の森林の2%について、持続可能な伐採方法が保障されています。自然保護区、公園および鳥獣保護区が拡大し、ヨーロッパでは土地総面積の5%、北米では11%に上り、グローバルなエコツーリズム産業の急速な発展の基盤となっています。

 エネルギーに関して報告書は、中・高所得国では、生活水準が向上する中で、都市部の大気汚染が統制されつつあり、東京やメキシコ・シティー、シンガポールおよびソウルでは、1970年代から1990年代にかけて大幅な削減が見られる一方で、地球全体のエネルギー供給に占める再生可能なエネルギー源の割合が1971年の3.2%から現在では4.5%に上昇しています。1990年代には安全な飲料水と衛生設備へのアクセスが徐々に改善し、下痢症による幼児死亡率を半減させるという、1990年の世界子どもサミットで採択された目標は、子どもの死者が1990年の330万人から1999年には170万人へと減少し、現実のものとなりました。

 「下痢症による幼児死亡率に関する目標の達成、および、今年初めに、モンテレーで合意された前例のない開発資金の増額は、国連サミットが何を実現できるかを示している」とデサイ氏は述べています。「持続可能な開発は世界の一部で根づき始めているものの、現在の天然資源管理を続けた場合に起こることになる貧困や不安定な状態から解放された将来を構築するためには、これを急激に加速する必要があります。世界の指導者は、グローバルな開発に対する新たなアプローチに応ずる準備をして、より重要なことは、具体的な責任を持って、ヨハネスブルクに参集しなければならないのです。」

メディアの問合せ先
8月16日まで:
Klomjit Chandrapanya、電話:(212)963-9495
Pragati Pascale、電話:(212)963-6870
Gavin HartあるいはMeredith Mishel、電話:(212)584-5031
8月16日以降:
ニューヨーク、電話:(212)584-5031
ヨハネスブルクの問合せ先については、ウェブサイトをご覧ください。
電子メール:mediainfo@un.org
ウェブサイト:www.johannesburgsummit.org

Published by the United Nations Department of Public Information.

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