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参考資料
水供給のコスト負担

プレスリリース 03/020-J 2003年03月05日

全世界の人々への水と衛生施設の供給は大きな課題であり、それには大きなコストも伴います。この不可欠なサービスの提供者として政府と民間のどちらがふさわしいかという問題は、政策立案者、専門家および市民団体の間で論議の的となっています。この議論の背景の一部と主たる見解について以下に説明します。
 
 安全な飲料水と衛生施設を利用できない人々にこれらを提供するためには、多額の投資が必要です。その額は、現在の全世界での年間支出額300億ドルに加え、140~300億ドルに上ると見られます。電力、通信および輸送など、その他のインフラ・サービスの場合と同様、開発途上国のほとんどは、水道・衛生サービスの資金調達と運営を公共セクターの公益事業体に依存しています。しかし、資金と人材の制約により、そのサービスの生産性と効率は低く、対象範囲も不十分となっています。世界銀行によれば、電力、水道、道路および鉄道の技術的非効率のせいで、1990年前半に年間550億ドルの損失が生じたと見られますが、この金額は全開発途上国のGDPの1%、その年間インフラ投資の4分の1、および、インフラ整備のための年間開発金融総額の2倍に相当します。
 
 1980年代後半には、国際金融機関の勧めに応じ、各国が既存のインフラ事業の継続と新たなインフラ整備の資金調達を民間の手に委ねるようになりました。民間セクターはその資金調達力と経営に関する専門知識によって、インフラ・サービスを質的にも量的にも改善できるとの議論が行われたのです。それによれば、民間の資金を利用し、そのサービスを拡大できるので、希少な公共資源に対する負担を軽減できるということでした。
 
 開発途上国では従来から、公益事業体に対する直接支払いなど、水道・衛生サービスに補助金が支給されることが多いのですが、それは一般的な徴税から行われていました。現在、開発途上国の水道と衛生設備への投資は年間約150億ドルに上っています。世界銀行によれば、このうち政府の負担はほぼ75%、民間の負担は約11%で、残りの14%の資金は外部の支援機関から供与されています。
 
 一般には、水は共通の財かつ基本的必需品であり、公共セクターが低コストで提供するのがよいと信じられています。その結果、水供給のコスト全額が消費者に転嫁されることはほとんどありません。工業用水の利用者に水道料金が課せられる場合でも、それは通常、平均費用に基づいており、廃水処理などの実質的外部費用も、代替的な用途に水を使わないことによって失われる便益などの「機会費用」も考慮されていません。その一つの結果として、世界の水不足が深刻化する中でも、多くの水の価値が過小評価され、浪費されています。かかった費用を補填しなければ、開発途上国の政府は通常、必要とするすべての人々にサービスを行き渡らせることができません。そして、サービスの対象とならない貧困層は、険しい道を歩いて水を汲みに行くことを余儀なくされたり、汚れた水で病気に感染するリスクを負ったりすることが多いのです。
 
 民営化推進論者の中には、水道・衛生サービスの民営化により、これら問題のいくつかに取り組むことができるとする向きもあります。現在、民間セクターが管理する水道から給水を受けているのは世界人口の7%にすぎません。この数字は2015年までに倍増すると見られます。民間による水道管理は現在のところ、年間2,000億ドル規模のビジネスになると見られており、世界銀行によれば、この額は2021年までに年間1兆ドルに達し得るとされています。
 
高まる批判
 しかし、民間の参入が広がるにつれて、批判も高まっています。公共セクターが水道・衛生サービスを管理する場合と同様、民間のサービスでも雑菌が混入していたり、水道管からの漏水が数週間も放置されたりするケースが多数報告されています。特に、料金の引上げにより、貧しい人々が食糧と水のどちらかを選ばなければならない状態も生じています。ボリビア第3の都市コチャバンバでは、1999年に民間のコンソーシアムが市の水道システムの管理を引き継いで以来、料金が35%も引き上げられ、街頭での抗議行動が相次ぎました。この民間業者との契約は、その後1年も経たないうちに解除されました。
 
 開発途上国の政府が民間のアプローチを取り入れようとした試みの中にも、苦い教訓を生んだものがあります。南アフリカは2000年に水道への補助金の打ち切りを試みましたが、その結果、数百万の貧しい人々が汚い川や湖の水を利用せざるを得なくなり、同国史上稀に見るコレラの大流行が発生したのです。
 
 このような例は、一般的に見られる2つの議論を強固にしています。その一つは、民間の参入は少数の者を利し、多数のものを犠牲にするというもの。もう一つは、水は支払能力のある者にしか流れないという考えです。民間企業は長期契約を落札するために、水道システムの維持費を過小評価することが多いという批判を受けています。契約を受注し、事業を開始してしまえば、民間企業は人員と維持費を削減したり、料金を引き上げたり、あるいは、その両方により、収益を上げようとするのです。その他、民営化に批判的な人々の中には、水は人権であり、各人に非営利ベースで平等かつ十分なアクセスを保障すべきだとする向きもあります。営利企業はこの趣旨にそぐわないというのです。
 
解決策の模索
 しかし、この重要な資源を誰が管理するにせよ、水供給と衛生施設のコストは、消費者か納税者か、誰かが負担しなければなりません。空白部分を明らかにし、必要なサービスを提供する上で、民間企業のほうが適した立場にあることが多いと主張する専門家もいます。しかし、民間と協力するからといって、政府がその給水管理を民間に全面的に委ね、後は市場原理に任せればよいというのではありません。官民協力はむしろ、公平で環境上適正な解決策を模索する上で、政府、民間およびすべての利用者が対話を行うことを意味するのです。
 
 考えられる協力関係は幅広く、民間の役割についても多種多様な選択肢が存在します。政府はその役割を、インフラ・サービスの独占的出資者および提供者から、民間企業が提供するサービスの促進者および規制者へと転換することもできるでしょう。契約は綿密に作成し、インセンティブだけでなく、最低基準と罰則の適正なバランスを確保するものとしなければならないでしょう。いずれにせよ、政府は監督と全般的規制の両面で関与しなければなりません。
 
 潜在的解決策として、政府による価格設定の改善も提案されています。社会的、技術的、経済的および環境的問題に対処する価格体系を設定することは、重大な課題です。一部の国々では、一定の基準を満たす貧困世帯について、政府が直接補助を行うことによって、水道料金の一部を負担するという措置が実験的に導入されています。基本料金超過分については、消費者が使用単位に応じて傾斜料金を支払わなければならなくなります。この措置は、水道料金が無差別に経済的コストを割り込むことを防ぐ代替策になると見られています。
 
 
 
(国連広報局 DPI/2293 E – February 2003)

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