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安全保障理事会決議1511(2003)
2003年10月16日の安全保障理事会第4844回会合で採択

プレスリリース 03/116-J 2003年11月11日

安全保障理事会は、
 
 2003年5月22日の決議1483(2003)および2003年8月14日の決議1500(2003)を含むイラクに関するこれまでの安保理決議、2001年9月28日の決議1373(2001)を含むテロ行為による平和と安全への脅威に関するこれまでの安保理決議、ならびに、その他の関連決議を再確認し、
 
 イラクの主権はイラク国家にあることを強調し、イラク国民が自らの政治的将来を自由に決定し、その天然資源を管理する権利を再確認し、イラク国民による自治が実現する日が早急に訪れなければならないという決意を改めて強調するとともに、このプロセスを迅速に進める上での国際的支援、特に地域各国、イラクの近隣国および地域機関からの支援の重要性を認識し、
 
 安定と安全に必要な環境の回復に向けた国際的支援は、イラク国民の安寧、および、すべての関係者がイラク国民に代わってその作業を遂行する能力を確保するうえで不可欠であることを認識するとともに、これとの関係で、決議1483(2003)による加盟国の貢献を歓迎し、
 
 イラク国民の願望を体現する憲法の草案を作成する制憲会議の準備を行うため、憲法準備委員会を結成するとのイラク統治評議会の決定を歓迎するとともに、このプロセスを迅速に完了するよう統治委員会に求め、
 
 2003年8月7日のヨルダン大使館、2003年8月19日のバグダッド国連本部、2003年8月29日のナジャフのイマーム・アリ・モスクおよび2003年10月14日のトルコ大使館に対する爆破テロ、ならびに、2003年10月9日のスペイン外交官殺害はいずれも、イラク国民、国連および国際社会に対する攻撃であることを確認するとともに、2003年9月25日に死亡したアキラ・アルハシミ博士の暗殺を、イラクの将来に対する攻撃として遺憾とし、
 
 この関連で、2003年8月20日の安保理議長声明(S/PRST/2003/13)および2003年8月26日の決議1502(2003)を想起、再確認し、
 
 イラク情勢は改善しているものの、依然として国際の平和と安全に対する脅威であると判定し、
 国連憲章第7章に従い、
 
1. イラクの主権と領土不可侵を再確認するとともに、この関連で、広く認められ、かつ、決議1483(2003)に定められた適用可能な国際法による暫定占領当局(以下「当局」とする)の特定的な責任、権限および義務の履行は一時的なものであり、とりわけ以下のパラグラフ4から7、およびパラグラフ10に規定する段階的措置を通じ、イラク国民によって自らを代表する政府が正式に樹立され、当局の責任を引き継いだ際に終了するものであることを強調する。
 
2. アラブ連盟、イスラム諸国会議機構、国連総会、国連教育科学文化機関などのフォーラムにおいて、国際社会が幅広いイラク国民層を代表する統治評議会の設立を、国際的に承認された国民を代表する政府樹立に向けた重要な一歩として、前向きに受け止めていることを歓迎する。
 
3. イラク国民が段階的に自治を回復するプロセスを主導するための内閣と憲法準備委員会の任命を通じたものを含め、イラク国民の動員に向けた統治評議会の取り組みを支援する。
 
4. 統治評議会とその閣僚は、イラク暫定統治機構の最高意思決定機関であり、国際的に承認された国民を代表する政府が樹立され、当局の責任を引き継ぐまでの移行期間において、そのさらなる発展の可能性を留保しつつ、イラク国家の主権を体現するものであると判定する。
 
5. イラクの行政は段階的に、イラク暫定統治機構がその発展に合わせて司ることを確認する。
 
6. この関連で、当局に対し、統治の責任と権限をできるだけ早くイラク国民に返還するよう呼びかけるとともに、当局に対し適宜、統治評議会および事務総長と協力し、その進捗状況について安保理に報告するよう要請する。
 
7. 統治評議会に対し、当局、および、状況が許す限りにおいて事務総長特別代表と協力して、2003年12月15日までに、イラク新憲法の起草、および、新憲法下での民主的選挙の実施に関する日程表とプログラムを安全保障理事会に提出し、その審査を仰ぐよう招請する。
 
8. 国連は事務総長、同人の特別代表および国連イラク支援団の活動を通じ、人道援助の提供、イラクの経済再建の促進とイラクにおける持続可能な開発のための条件整備、および、国民を代表する政府樹立に向けた全国と地方の制度の復興と確立への取り組みの推進などにより、イラクにおけるその死活的に重要な役割を強化すべきであることを決議する。
 
9. 事務総長に対し、状況が許す限り、2003年7月17日の事務総長報告(S/2003/715)パラグラフ98および99に概略を示した行動方針を追求するよう要請する。
 
10. 統治評議会は制憲会議を開催する意志を有することに留意し、こうした会議の開催は、主権の全面的な行使に向けた画期的な出来事であるとの認識に立ち、国民的対話とできるだけ早期の合意形成を通じたその準備を呼びかけるとともに、事務総長特別代表に対し、制憲会議開催時に、あるいは、状況が許す限り、選挙手続きの確立を含め、この政治的移行プロセスにおいて、イラク国民に国連が有する独自の知恵を貸すよう要請する。
 
11. 事務総長に対し、イラク統治評議会から要請があった場合、国連と関連機関の資源を利用できるようにし、また、状況が許す限り、上記パラグラフ7によって統治評議会が提出するプログラムの推進を援助するよう要請するとともに、この分野での専門知識を有するその他組織に対し、要請があった場合、イラク統治評議会を支援するよう促す。
 
12. 事務総長に対し、本決議による同人の責任事項、ならびに、上記パラグラフ7による日程表とプログラムの策定および実施について、安全保障理事会に報告するよう要請する。
 
13. 安全と安定の確保は、上記パラグラフ7に略述した政治的プロセスの完遂、および、国連がこのプロセスと決議1483(2003)の実施に実質的な貢献を行える能力にとって不可欠であると判定するとともに、統合司令下にある多国籍軍に対し、日程表とプログラムの実施に必要な条件の確保を目的とするものを含め、イラクの安全と安定の維持に貢献し、国連イラク支援団、イラク統治評議会およびその他のイラク暫定統治機構諸機関、ならびに、主要な人道・経済インフラの安全に貢献するため、あらゆる必要な措置を講じる権限を認める。
 
14. 加盟国に対し、国連のこの任務に応じ、上記パラグラフ13にいう多国籍軍に軍事援助を含む援助を提供するよう求める。
 
15. 安保理は、本決議の日付から1年以内に、上記パラグラフ13にいう多国籍軍の要件と使命の見直しを行うものとし、また、いかなる場合でも、多国籍軍の駐留期間は、上記パラグラフ4から7、およびパラグラフ10に述べた政治的プロセスの完了をもって終了するものとすることを決定するとともに、その際、国際的に承認された国民を代表するイラク政府の見解を考慮し、多国籍軍の駐留期間延長の必要が生じれば、これを検討する用意があることを表明する。
 
16. 法、秩序および治安を維持し、決議1483(2003)パラグラフ4に従ってテロ対策を講じる上で、実効的なイラク警察と治安部隊を確立することの重要性を強調するとともに、加盟国および国際・地域機関に対し、イラク警察と治安部隊に対する訓練と機材提供に貢献するよう呼びかける。
 
17. イラク国民と国連が被った人的な損失、ならびに、これら悲劇的な攻撃で死傷した国連職員およびその他罪のない犠牲者の家族の方々に対し、深い哀悼の意を表する。
 
18. 2003年8月7日のヨルダン大使館、2003年8月19日の国連バグダッド本部、2003年8月29日のナジャフのイマーム・アリ・モスクおよび2003年10月14日のトルコ大使館に対するテロ爆破、2003年10月9日のスペイン外交官殺害、ならびに、2003年9月25日に死亡したアキラ・アルハシミ博士の暗殺を断固として非難するとともに、その責任者が裁きを受けなければならないことを強調する。
 
19. 加盟国に対し、イラクに向かうテロリスト、テロリスト向けの武器、およびテロリストを支援すると見られる資金の通過を防ぐよう呼びかけるとともに、この関連で、イラク近隣国をはじめとする地域各国の協力強化の重要性を強調する。
 
20. 加盟国と国際金融機関に対し、イラク国民によるその経済の再建と開発を援助するための取り組みを強化するよう訴えるとともに、これら機関に対し、統治評議会およびイラク関係省庁との連携により、貸付その他の全面的な資金援助をイラクに提供するための措置をすぐに講じるよう求める。
 
21. 加盟国および国際・地域機関に対し、2003年10月23日から24日にかけてマドリードで開催される国際支援国会議での多額の資金拠出表明を通じたものを含め、2003年6月24日の国連技術協議で始まったイラク再建への取り組みを支援するよう求める。
 
22. 加盟国と関係機関に対し、イラクの経済インフラの復興と再建に必要な資源を提供することにより、イラク国民のニーズ充足を助けるよう呼びかける。
 
23. 決議1483(2003)パラグラフ12にいう国際諮問・監視理事会(IAMB)の設立を優先課題とすべきことを強調するとともに、イラク開発基金は、決議1483(2003)に定めるごとく、透明な形で用いられるべきことを再び強調する。
 
24. すべての加盟国に対し、決議1483(2003)パラグラフ19および23によるその義務、特に、イラク国民の利益となるよう、資金、その他の金融資産および経済資源をすぐにイラク開発基金に移転させる義務を改めて指摘する。
 
25. 上記パラグラフ13に略述する多国籍軍に代わり、米国が安全保障理事会に対し適宜、かつ少なくとも6ヵ月ごとに、多国籍軍の取り組みと進捗状況に関する報告を行うことを要請する。
 
26. この件について引き続き審議することを決定する。