国際司法裁判所(ICJ)設立80周年を記念する アントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶 (ハーグ、2026年4月17日)
プレスリリース 26-020-J 2026年04月27日
国王陛下、
裁判所長、
判事の方々、
来賓の方々、
皆様、
危機に見舞われた時は、選択をすべき時です。
それは私たちが何者であるか、そして私たちが依って立つものは何かが明らかになる時でもあります。
私たちはきょう、正義と国際法を体現する都市の荘厳な静けさの中で、一堂に会しています。
しかし、80年前の世界は忘れ去られがちです。
当時はヨーロッパだけでなく、さらに幅広い地域が荒廃の中にありました。
ここハーグも傷つき、揺らいでいました。
しかし、その暗く困難な時代にあっても、世界のリーダーたちは決定的な選択を行いました。
それは、強制と暴力によって支配される未来を拒絶し、国連憲章と国際法に根差す未来を目指すという選択であり、
法の力は常に力による法に勝らなければならないという、何よりも大切な信念を基盤とする裁判所を設立するという選択でした。
そうすることによって、リーダーたちは単に国連の主要な司法機関を設けただけではありません。
より平和な世界の礎を築いたのです。
皆様、
80年前、この裁判所の開所式に出席したポール=アンリ・スパーク総会議長は、次のように発言しました。
「国際司法とその判断が全面的、絶対的に尊重されない限り、文明世界も恒久的平和も成り立ち得ません」
以来80年以上にわたり、国際司法裁判所(ICJ)の判決と勧告的意見は、現代世界の姿を形づくってきました。
そして今、ICJが取り扱う事案の件数がかつてなく増えていることは、その権威と独立性が信頼されている明らかな証と言えます。
女性判事の数が増えていることも、ICJの正当性をさらに強めています。この進歩の兆候は、今後も維持する必要があります。
また、ICJの運営方法の近代化は、その効果とレジリエンス(強靭性)をともに高めています。
私はICJの判事と職員、書記官の皆様全員に、深く感謝いたします。
ICJは、主権と平等が単なる紙上の文言ではないことを保証する存在であり続けています。
それはまた、圧倒的な力でさえ、法的義務に代わることはできず、また、そうあってもならないということを再確認させる事実でもあります。
皆様、
私たちは明確にしなければなりません。
保全措置を含むICJの決定は、事案の当事者に拘束力を持つことを。
ICJの決定を守ることは、任意ではありません。
それは国連憲章上の義務なのです。
しかし現在、私たちの目前では国際法違反が繰り広げられています。
軍事作戦は、紛争を律する基本ルールを踏みにじっています。
人道上の義務も無視されています。
国連自体を守る国際法の原則も破られています。
ICJをはじめ、裁きを与えるために設立された制度機構がますます疑問視され、挑戦にさらされています。
しかも、この浸食は国際システムの片隅で起きているわけではありません。
それは、国際の平和と安全を維持するために特別な責任を委ねられた国々を含め、まさにその核心部で生じているのです。
力の論理が法の力に取って代われば、情勢不安が一気に広がります。
紛争は国境を越えて波及します。
経済的ショックが全世界を震撼させます。
そして、最初に一番大きな被害を受けるのはいつも、最も脆弱な立場に置かれた人々です。
皆様、
私たちは現在、危機に直面しています。そして同時に、選択を迫られています。
法の支配によって律される未来か、それとも露骨な権力に支配される未来か。
どちらを選ぶべきかは明らかです。
特に力関係が目まぐるしく変わるこの時代に、国際法の遵守がこれまで以上に重要なのは、まさに国際システムがこのような重圧を受けているからに他なりません。
この基盤がなければ、カオス(大混乱)に陥るリスクが高まることは、歴史が証明しています。
国際法は各国に、共通言語としての確実性と、違いを平和裏に解決するための共通枠組みとしての予見可能性を与えてくれます。
国際法を弱体化させれば、グローバルな安定の基盤が損なわれます。
国際法を強化することは、恐怖ではなく、正義が支配する世界への投資にあたります。
国際法の強化を選択しようではありませんか。
そして、紛争を平和的に解決する決意を新たにしようではありませんか。
ICJの判決を遵守し、その勧告的意見に従うことによって。
また、 国際社会として私たちを結びつける国連憲章の目的と原則を堅持することによって。
危機を迎えたこの時に、正しい選択はそれ以外にありません。
勇気をもって、その選択をしようではありませんか。
ありがとうございました。
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原文(English)はこちらをご覧ください。
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