第9回アフリカ開発会議(TICAD9)における記者会見でのアントニオ・グテーレス国連事務総長発言(横浜、2025年8月21日)
プレスリリース 25-048-J 2025年08月21日
皆様、
マルチラテラリズム(多国間主義)と連帯の柱である日本を再び訪れることができ、光栄に思います。
また、国際舞台において日本が果たす重要な役割が強調されるこの月にここにいられるのは、とりわけ意義深いことです。
平和のリーダーとしての日本。8月は、広島と長崎の惨劇から80周年を迎える節目の月であるとともに、直近ではノーベル平和賞によって認められたように、日本の人々の平和と軍縮に対する永続的なコミットメントが再確認される月でもあります。
そして平和と言えば、私はガザに関し、直ちに停戦に達し、すべての人質が無条件に解放され、ガザ市に対する軍事作戦が必然的に引き起こすことになる大量の死傷者と破壊を回避することが極めて重要だと、改めて強調しなければなりません。
同時に、イスラエル当局による非合法な入植地建設を拡大するという決定は(ヨルダン川)西岸を分断することになり、その判断は撤回されなければなりません。すべての入植地建設は国際法に違反します。
親愛なるメディアの皆様、
日本は国際協力の提唱者です。私は明日、2025年大阪・関西万博を訪問できることを楽しみにしています。
そしてもちろん、日本は開発協力におけるチャンピオンです。私たちはそれを、ここTICADでもはっきりと目にすることができます。
これらのすべての分野におけるリーダーシップは、かつてないほど重要になっています。
ガザからスーダン、ウクライナに至るまで、そして他の地域でも、世界中で戦争が激化しています。
気候カオスが生命と生活を破壊しています。
経済は債務、不確実性、不平等の下で、深刻な圧力を受けています。
そしてこの断裂と脆弱性の時代の中で、私たちは信頼を回復し、グローバルな前進を実現するための、一致団結した行動を必要としています。
TICADサミットでの私たちの議論は、アフリカとのパートナーシップによって、いかに全世界が必要としている解決策を強化できるかに焦点を当てています。その対象分野は、平和、グローバル・ガバナンス、金融、気候行動、デジタル・トランスフォーメーションです。
第1に、平和なくして開発は成し得ません。
私たちは、銃撃を止め、事態の悪化を防ぐための外交を必要としています。また、支援が必要な人々にリーチするための人道上のアクセス、そして信頼と制度を再構築するための地域的な取り組みに対する強力な支援も必要としています。
第2に、より公正なグローバル・ガバナンスと金融です。
私たちの制度は、1945年当時の世界ではなく、今日の世界を反映したものでなければなりません。
それは、より代表性の高い、より効果的になるよう改革された安全保障理事会を意味します。
またそれは、公正な代表性を持つ国際金融機関と、開発途上国のニーズに応える金融アーキテクチャを意味します。
開発が債務に溺れてしまうようなことがあってはなりません。
私たちは、大胆な債務救済、譲許的融資の拡大、国際開発金融機関の融資能力の3倍化を必要としています。これにより、それらの機関はより大きく、より大胆になり、民間資金を合理的なコストでより良く活用できるようになります。
第3に、気候変動対策への投資です。
アフリカには、太陽光や風力から、クリーンテクノロジーを支える重要鉱物まで、再生可能エネルギー超大国となるために必要なものがすべて揃っています。
しかし、世界全体の再生可能エネルギー投資額のうち、アフリカが受け取っているのは、ごく一部に過ぎません。
一方で、いまだに6億人が電気へのアクセスがありません。
私たちは、アフリカの天然資源がまずアフリカの人々の利益になるよう、資金とテクノロジーを動員しなければなりません。
また、成長する再生可能エネルギーと製造業の基盤をアフリカ大陸全体にわたって築かなければなりません。
アフリカのクリーン電力は、エネルギーコストを削減し、サプライチェーンを多様化させ、すべての人々にとっての脱炭素化を加速させます。
また私たちは、早期警報システムからレジリエント(強靭)な農業に至るまで、気候変動に対する適応を拡大させなければなりません。
第4に、デジタル・トランスフォーメーションの実現です。
新たなテクノロジーは人々の生活を向上させていますが、私たちはそうしたテクノロジーへの手頃な価格でのアクセスを拡大させるとともに、あらゆる場所で人工知能(AI)の能力を構築しなければなりません。
私は、開発途上国におけるAIの能力構築のための革新的な資金調達のオプションに関する報告書を提出しました。
また私たちは、独立した「AIに関する国際科学パネル」の設立と、国連内での年次の「AIに関するグローバル対話」の開始を推進しています。これにより、すべての国々が共有された知識から恩恵を受け、AIガバナンスの形成において発言権を持つことを目指しています。
そしてこうした取り組み全体を通じて、私たちは、人々を最優先にしなければなりません。
教育、技能、およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に向けた投資、社会保障の拡大によって。また、経済、政治、公の役割における女性の完全な参画とリーダーシップの確保によって。
メディアの友人の皆様、
私たちがここ横浜で見ているのは、美しい景観だけにとどまりません。私たちは、世界へ通じる窓の向こうを見ているのです。
横浜は、とりわけ困難な時代において、「開放性」は選択するものであることを私たちに思い起こさせます。
大規模な自然災害の直後であれ、大戦の直後であれ、横浜は、再建には信頼、尊厳、そして共通の未来へのコミットメントが必要であることを示してきました。
この都市を私たちの羅針盤としましょう。逆境において強靭であり、目的のために団結するこの都市を。
アフリカを先頭に、日本を信頼できるパートナーとし、その精神を継承していこうではありませんか。
ありがとうございました。
* *** *
原文(English)はこちらをご覧ください。