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「効果的なマルチラテラリズムを通じて国連憲章の目的と原則を堅持する:ウクライナの平和と安全の維持」に関する安全保障理事会公開討論における アントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、2023年9月20日)

プレスリリース 23-060-J 2023年10月12日

議長、

国連憲章は、より平和な世界へ向けた私たちのロードマップです。

国連憲章の原則に基づいたツールやメカニズムは、紛争解決のための手引書です。

これとともに、国連の長きにわたる集団的な取り組みは、平和の創造や予防外交、国連平和維持活動、軍縮や不拡散の取り組み、人道・開発プログラム、そして人権推進活動を通じて、世界規模の戦争を防ぎ、何百万もの人々の命を救うことに貢献してきました。

今週開催された「SDGサミット」で、持続可能な開発目標(SDGs)の救済計画が合意に至りましたが、SDGsはあらゆる種類の紛争や危機を防ぐ上で不可欠なツールです。

マルチラテラリズム(多国間主義)は有用です。それは不可欠であるとともに、効果があります。

しかし、多国間のツールやメカニズムは弱体化しつつあります。地政学的緊張が高まり課題が増加している中、機能していないものもあり、緊急に必要とされる枠組みであるにもかかわらず、いまだ存在さえしていないものもあります。

昨年の紛争関連の死者数は、ほぼ倍増しました。国連の平和活動は、かつてないほどに緊迫しています。核軍縮は、事実上行き詰まっています。そして、新たなテクノロジーがもたらす安全保障上の脅威に対処するためのグローバルな枠組みもありません。

私は各国政府に対して、国連憲章に基づく義務を果たすことを改めて決意し、憲章が提供するあらゆる外交手段を活用し、紛争や危機の予防を優先し、「新たな平和への課題」に盛り込まれた新たな枠組みやツールに関する提案を検討して、さらに踏み込んでより良い成果をもたらすよう要請します。

議長、

国連憲章と国際法に明確に違反したロシアのウクライナ侵攻は、地政学的緊張や分断を深刻化させ、地域の安定を脅かし、核の脅威を高め、多極化が進む私たちの世界に深い亀裂を生んでいます。

こうしたことのすべてが、気候危機や、かつてない水準に至る不平等、破壊的なテクノロジー(の出現)など、多くの課題に取り組むため、多国間での解決策に向けた協力と妥協がこれまで以上に必要とされている時に、発生しているのです。

国連機関は、この戦争を明確に非難してきました。

総会は、ロシアにウクライナからの撤退を要求する決議と、ロシアによるウクライナ領土の併合の試みを拒絶する決議を、圧倒的多数で採択しました。

私は一貫して、国連憲章と国際法に基づいた、ウクライナにおける公正で持続的な平和の実現を繰り返し求めてきましたが、それはウクライナのため、ロシアのため、そして世界のためです。

ロシアによる侵攻後、民間人や医療・教育施設などの民間インフラ・サービスに対して、容赦ない組織的な攻撃が加えられました。

この戦争により何万人もの民間人が死傷し、生活や生計が破壊され、子どもたち世代に深い傷を残し、家族やコミュニティーが引き裂かれ、経済が荒廃し、広大な農地が命を脅かす地雷原へと化しました。

民間人と民間インフラへの攻撃を、直ちに停止させなければなりません。

ウクライナの人口の半数近い約1,800万人が、人道支援と保護を必要としています。600万を超えるウクライナ人が国外に避難しています。

国連は、ウクライナの人々と世界中の人々への影響を緩和し、民間人を支援するために、団結して取り組んできました。

国連の人道プログラムは強化され、今年は800万人超に支援を届けてきました。こうした支援は、450を超える人道支援団体と連携して行われており、その半数はウクライナの団体です。

国際原子力機関(IAEA)は、ザポリージャ原子力発電所をはじめとするウクライナの主要原子力施設に常駐しており、安全、セキュリティ、セーフガード(保障措置)の状況を監視しています。

昨年、私たちは赤十字国際委員会(ICRC)と合同で、マリウポリのアゾフスタリ製鉄所からの民間人退避を成功させました。

国連機関はこれまで、衝撃的で広範にわたる人権侵害の証拠を記録してきました。例えば、紛争に関連した性的暴力、恣意的な拘束、ほとんどがロシア連邦により行われた即決の処刑、子どもたちを含むウクライナの民間人のロシア支配地域やロシア連邦への強制移送などです。こうした記録は、説明責任という点において不可欠です。

国際的な規範と基準に照らし、あらゆる人権侵害に対する説明責任が極めて重要です。

議長、

この戦争は、世界の食料価格のかつてない高騰を引き起こし、何百万もの人々を飢餓や貧困の危機にさらしています。

2022年7月、私たちは黒海イニシアティブおよび国連とロシア連邦の間の覚書を通じて、そうした影響を緩和することに成功しました。

黒海イニシアティブは、ロシア産の食料品・肥料の輸出促進に関する覚書とともに、その1年間の運用期間中に、世界の食料価格を昨年3月に記録した史上最高値から23%超引き下げることに寄与しました。

黒海イニシアティブによって3,300万トン近い穀物・食料品の輸出が可能になり、世界食糧計画(国連WFP)は、人道支援用の小麦72万5,000トンをアフガニスタンやソマリアなどの国々に輸送することができました。

覚書の下、国連では、ロシア産の食料・肥料の貿易促進という最も困難な分野のいくつかに関して解決策を提供し、残る問題にも引き続き取り組んできました。

私たちは、ロシアが今年7月に黒海イニシアティブへの参加を終了したことを、深く遺憾に思います。

そしてロシアが、イニシアティブからの離脱直後に黒海やドナウ川沿いにあるウクライナの港湾や穀物貯蔵施設への爆撃を開始したことも、深く遺憾に思います。

ターミナルや穀物貯蔵施設に対する攻撃は容認できず、そうした攻撃は終わらせなければなりません。

黒海での民間船舶による海運も脅かされています。

事態がさらに悪化すれば、直ちに市場に衝撃を与え、地域を不安定化しかねません。

ウクライナでの収穫により供給が積み上がる一方で、すでに国際穀物市場にはボラティリティ(脆弱性)と不確実性が戻りつつあります。

また爆撃は、ロシア連邦との(ロシア産の農産物輸出に関する)覚書の履行における国連の取り組みを危うくしています。

そのため、爆撃によって、とりわけ民間セクターにおいて、その善意が必要とされる多くの関係者が黒海イニシアティブに復帰することに本当に利益があるのかと疑問を抱くようになっています。

私たちは、ロシアとウクライナからの穀物や肥料の安全かつ確実な輸出の確保を目指し、すべての当事者との関わりを持ち続けています。輸出を安定基盤に乗せて、何度も中断の脅威にさらさないようにしなければなりません。

私はトルコ政府の貢献に感謝するとともに、すべての加盟国に対し、国連の取り組みを支持するよう要請します。

議長、

国連は引き続き、国連憲章、国際法、総会決議に従って、ウクライナにおける公正で持続的な平和に向けて取り組みます。

私はすべての国に対し、さらなる悪化を防ぎ、持続的な平和の基礎を築くために、それぞれの役割を果たすよう要請します。

私たちは、国際的に認められた国境内におけるウクライナの主権、独立、領土保全に全面的にコミットしています。

この戦争はすでに、限りない苦しみをもたらしています。戦争が続けば、さらに危険な悪化を招くおそれがあります。

対話、外交、公正な平和に代わるものなど、決して存在しないのです。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。