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第68回総会における事務総長演説(ニューヨーク、2013年9月24日)

プレスリリース 13-065-J 2013年09月26日

私たちは現状を維持することではなく、世界を前に進めることを目的と、毎年この時期に一堂に会しています。

驚くべき機会が訪れています。私たちの世代は初めて、地球上から貧困を消し去ることができるからです。

しかし、その一方で職のない若者、気候の温暖化、未解決の紛争など、人々と地球に対する圧力も高まっています。

古い時代に合わせて作られた機構や制度が、21世紀の目まぐるしい状況の変化についてゆけないことも多くあります。

世界中の街頭や広場で、人々は権力の座にある者たちに圧力をかけています。人々は世界の指導者である皆様に対し、その声に耳を傾けるよう求めています。すべての人に尊厳ある暮らしを確保するため、私たちが全力を尽くしていることを確認しようとしているのです。

過去10年以上にわたり、2015年末は私たちの長期的な目標の達成期限となってきました。かつて遠い将来に見えたこの時期が、すぐそこまで近づいています。

2015年は、私たちがミレニアム開発目標(MDGs)の達成を誓った期限です。

それは私たちが新たな開発アジェンダを採択することになる年でもあります。

さらに、皆様が気候変動に関するグローバルな協定締結の期限として合意した年でもあります。

2015年は歴史的な機会なのです。

MDGsは人々の心を捉え、目覚ましい進展を生むとともに、開発自体に対する疑念を払拭しました。

しかし、いくつかの目標の達成に向けた前進は、大幅に遅れています。不平等は拡大しています。農地から工場に至るまでの職場で、あまりにも多くの人々が搾取を受けています。

新しい開発アジェンダは、MDGsと同じ意欲を掻き立て、かつ、これをさらに進めるものとせねばなりません。

また、貧困の終焉を最優先課題に、持続可能な開発をその核心に、ガバナンスを両者の橋渡し役に据えた、普遍的なものとしなければなりません。たった1組の目標で、このことを表現せねばならないのです。

また、持続可能な開発の3つの側面に優劣をつけるべきではありません。経済成長が確保できたからといって、環境や社会的正義を後回しにすることはできないのです。

女性のエンパワーメントと権利は、私たちのあらゆる活動の中心に据えなければなりません。

その根拠は単純です。女児が元気に学校に通い、女性が法的枠組みと金融へのアクセスによる支援を受け、女性の暮らしから暴力と差別が消えれば、国家が繁栄するからです。

私はきょう午後の会合で、紛争下での性暴力に関する強力な宣言を採択する指導者たちと声を一つにして訴えたいと思います。

21世紀を女性の世紀としようではありませんか。

皆様、

成功を収めるためには、民間による取り組みの強化も必要です。

企業は自由にその最も大きな力、すなわち雇用の創出とイノベーションの力を発揮できなければなりません。

しかし同時に、企業は倫理のルールに従い、責任を持ち、環境の保護に全力を尽くしながら活動しなければなりません。

先週のグローバル・コンパクト・リーダーズ・サミットでは、数千社の企業のトップが、企業活動と国連の目標との整合性をさらに高めるため、追加的措置を講じることを約束しました。

国連はビジネス界や金融界だけでなく、市民社会や慈善団体との協力を進めるための手段をさらに充実させなければなりません。

気候変動の影響により、開発のあらゆる成果が危機に瀕しています。

人的、経済的な影響は拡大し、あらゆる人々に及んでいます。最初に被害を受け、最大の代償を支払うことになる最も貧しく、弱い立場に置かれた人々は、気候変動についても正義の拡大を求めています。

地球と科学者からのメッセージは極めて明快です。気候変動に関する政府間パネルは今週、最新の評価報告書を発表する予定ですが、私たちは改めて、同じメッセージを受け取ることになるでしょう。

こうした脅威はチャンスでもあります。それは私たちの暮らし方や都市計画、私たちの交通手段や家屋、工場へのエネルギー供給のあり方を変えるチャンスです。

私たちの前には、低炭素経済に向けた道が開けています。それこそまさに、環境を保護しながら、雇用を創出し、公衆衛生を改善できる道なのです。

私たちがこの道を歩めるようにするため、私は1年後の9月、ここ国連本部で開催される気候サミットへの皆様の参加をお願いしたいと思います。

皆様には、大胆な約束を持ってサミットに集まっていただきたいと思います。イノベーション、取り組みの拡大、協力によって、排出量のギャップを狭め、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)プロセスを通じた野心的な協定の採択につながるような具体的な行動を実現してください。

2015年という期限の前に、MDGsの達成に向けてラストスパートをかけ、エネルギーと気候の問題に関する新しい方向性を打ち出し、意欲を掻き立てる新たな開発枠組みを作り上げようではありませんか。

脱落者を作ってはならないのです。

皆様、

ここからは、世界で最大の平和と安全上の[課題]となっているシリア危機へと、話を移したいと思います。

10万人以上が命を失い、総人口の3分の1に相当する700万人以上が避難を強いられています。

家族が包囲され、街は廃墟と化し、経済は壊滅状態にあります。

様々な伝統と信仰に彩られ、活気のあったコミュニティが引き裂かれています。

周辺地域も不安定化で危険な状態にあります。私たちは過去四半世紀で最悪の化学兵器による民間人攻撃を目にしました。

失われた世代の若者たちが難民キャンプにあふれています。これらの若者たちや彼らの母親、父親たちが国際社会に見放されたと感じていたとしても、私たちの中にそれを責められる人がいるでしょうか。

私たちは、審判を受ける局面にあるのです。

シリア政府は、化学兵器禁止条約への加入によって引き受けた義務を全面的かつ早急に果たさなければなりません。

国連調査ミッションはシリアでの化学兵器使用をはっきりと確認しました。国際社会はその実行犯を裁きにかけなければなりません。

また、国際社会は同じ決意を持って、シリアの化学兵器の備蓄と開発プログラムの凍結、廃棄を確保しなければなりません。

しかし、私たちは化学兵器の廃棄で満足してはなりません。シリア全土が依然として戦火に包まれているからです。

殺害や残虐行為の大半は、通常兵器により行われています。

私はすべての国に対し、流血を助長するのをやめ、あらゆる当事者への武器の流れを断つよう訴えます。

私は安全保障理事会が間もなく、化学兵器に関して強制力と拘束力のある決議を採択することを期待しています。

また、これに続いて直ちに人道的対応も行うべきです。

国連人権監視者は、さらなる暴力を報告、抑止するうえで有用な役割を果たすことができるでしょう。

私はシリア政府と反体制派に対し、国際人道・人権法に基づく義務を守るよう呼びかけます。

両当事者は人道援助に対するあらゆる障害を除去するとともに、医療施設と職員を標的とする卑怯な行為を止めなければなりません。また、国際法上の根拠がないまま拘束されている男女と子どもを釈放しなければなりません。

国際刑事裁判所への付託その他、国際法に沿った手段により、重大な国際犯罪の責任を徹底的に問うことも欠かせません。

化学兵器の使用という凶悪犯罪への対応により、外交的な弾みがつき、これまで長く待たれていた団結に向けた兆候がようやく見えてきました。

今こそこれを土台にして、当事者を交渉の席に着かせなければなりません。

私は常々、軍事的な勝利は幻想にすぎないと申し上げてきました。政治的解決以外に正解はありません。

私はシリア政府と反体制派、そして、この議場の中で両当事者に対する影響力をお持ちの皆様全員に対し、ジュネーブⅡ会議をできるだけ早く実現するよう訴えたいと思います。

今こそ殺害に終止符を打ち、シリアの人々が必要とし、手に入れるべき平和を実現すべき時です。

シリア以外を見ても、近隣地域では大きなストレスと混乱が生じています。

歴史的な移行は滞り、遅れています。希望の春は幻滅の冬へと姿を変えています。

民主主義と多元的対話の構築、派閥主義の沈静化、独裁者による締め付けがなくなった後に生じた治安の空白解消など、課題は山積しています。

しかし、改革はまだ続いています。私たちはこうした改革の成功を全力で支援しなければなりません。あらゆる可能性を捉え、表明された善意に応えなければならないのです。

今後は各国がそれぞれの道のりを描くことになります。私たちは後退を無関心に傍観するのではなく、人権、寛容、政治的包摂という普遍的価値の尊重を求めなければなりません。それこそが平和と繁栄の礎だからです。

私は、イスラエル・パレスチナ間の直接交渉再開と、これを可能にした大胆な外交を歓迎します。私たちが本気で2国家共存という解決策の実現を目指すのであれば、チャンスはあっという間に費えることも心しておかねばなりません。

私は当事者に対し、リーダーシップを発揮するとともに、それぞれの人々と地域の長期的な利益を念頭に置くよう強く促します。私は今週中にここニューヨークでカルテット責任者会合を招集し、継続中の中東和平プロセスを強力に支援する予定です。

中東や北アフリカに加え、アフリカ諸国も、民主主義と持続的な高度経済成長を伴う躍動の新時代へと足を踏み入れています。

ソマリアでの政治的進展、マリでの民主的選挙、コンゴ民主共和国での平和維持活動強化、大湖地域での新たな枠組み合意など、前進に向けたお膳立ては整っています。

とはいえ、サヘル地域は依然として困窮状態にあり、情勢不安が続いています。中央アフリカ共和国では治安が急激に悪化しています。数百万人があらゆる援助を断たれ、略奪の餌食となる危険にさらされています。にもかかわらず、シリアに関する人道援助アピールの場合と同様、これらの国々に対する援助アピールについても、まったく不十分な資金しか集まっていません。

この1週間だけを見ても、ケニアやイラク、パキスタンで起きたショッキングな襲撃事件は、テロリストにどれだけ大きな苦痛と被害をもたらす力があるかを私たちに見せつける結果となりました。

世界各地で、私たちは人権と法の支配が安定と共存の基礎であることを改めて認識しています。

私たちが国際司法と国際刑事裁判所への支援をさらに強化すべき時が来たといえます。

私は特に、カンボジア特別法廷に対する支援を訴えます。特別法廷は無視できない成果をあげてはいるものの、常に深刻な財政問題に直面し、その存在自体が危機に瀕している状態です。

特別法廷が破綻すれば、これまで長いこと裁きを待ってきたカンボジア国民にとって悲劇となるでしょう。私は国際社会に対し、全ての審理を滞りなく完了するために必要な資金の拠出を求めます。

皆様、

加盟国と国連が大規模な人権侵害を予防、停止できていないことで、悲惨な結果が生まれています。

スリランカ終戦時における国連の活動に関する内部審査では、組織的な破綻が明らかになりました。加盟国は国連システムに対し、自ら定めた任務遂行に見合う支援を提供しなかったばかりか、残念なことにシステム自体も、適切な適応や全面的な任務遂行ができなかったのです。

ウィーン世界人権会議20周年にあたる今年、私たちは国連創立時の原則を守る決意を新たにすべきです。私は加盟国が大規模な人権侵害の予防について早期の合意を達成できるよう、支援をさらに強化してゆくつもりです。また、国連システムが憲章に基づく責任を全うできるようにするための提言も実施に移しているところです。

私たちが武器であふれた世界と対峙しない限り、平和も人権の享受もほとんど達成できないでしょう。昨年は武器貿易条約の採択によって、通常兵器の国際的移転がようやく規制されるという幸先のよい動きが見られました。

しかし、核軍縮は棚上げ状態となっており、兵器の拡散が続いています。包括的核実験禁止条約は未発効のうえ、小型武器による殺傷も後を絶ちません。

しかも、人間のニーズ充足が急務となっている時に、軍事費は理不尽な水準に高止まりしています。課題の優先度を是正し、数十億ドルを武器に浪費する代わりに、人間に投資しようではありませんか。

指導者である皆様は「われら人民」に奉仕する立場にあります。

私たちは貧困の終焉を統轄し、人々の意志に声を与え、持続可能な開発と恒久的平和の時代を告げることができます。

今すぐに難題に取り組み、その先見の明を子孫への贈り物とすることさえできるのです。

私は皆様に対し、現代のグローバルな論理を受け入れるよう強く促します。私たちが運命共同体としての性格を強めていることから見ても、未来は協力の深化に基づくものとせねばなりません。

グローバル環境がこのような大転換を遂げる中で、新たな統治、連携、問題解決のあり方を探ろうではありませんか。

国連をエンパワーメントすることにより、第一応答者か最後の手段以外の役割を果たせるようにしようではありませんか。

変化は嫌でもやってきますが、前進は自然に実現できるものではありません。そのためにはリーダーシップが欠かせないのです。

衰弱した今でも、私たちの意識の中では永遠に、誠実性と人間の尊厳という信念に基づいた行動を体現する崇高な存在であり続けるネルソン・マンデラ氏を、ぜひお手本にしようではありませんか。

皆様はそれぞれの国で、そして私たちは全体として、特権階級の頂上に位置しています。

私たちは自らがそれに値する存在であることを証明しなければなりません。世界の人々の正当な要求に耳を傾け、歴史が何を求めているのかを認識しなければならないのです。

私たちはしばしば希望を口にします。私たちの責務は、懸命な努力と決意、能力、そして誠実性を通じ、希望を行動へと移すことにあります。

人々が望み、世界が必要とする未来を築くためには、情熱も必要ですが、何よりも必要なのは思いやりの心です。

皆様のリーダーシップと強い決意に感謝いたします。すべての人にとって、よりよい世界を築こうではありませんか。そして、誰もが調和の中で、平和に尊厳を持って暮らせる未来をつくっていこうではありませんか。

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