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記者会見におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長の冒頭発言(於:日本記者クラブ/東京、2022年8月8日)

プレスリリース 22-043-J 2022年08月10日

©UN Photo

 

報道関係者の皆様、おはようございます。

再び日本を訪問することができ、大変嬉しく思います。日本政府と日本国民の皆様におかれましては、大変温かく歓迎してくださったことに感謝いたします。

土曜日(8月6日)に広島で開催された平和記念式典は忘れ難く、心動かされる経験となりました。広島と長崎の人々による平和への献身的な努力、そして被爆者の方々の尊厳と不屈の精神は、全人類にとっての模範であり、教訓です。

私は、原子爆弾の恐ろしい爆発から75年に際して広島を訪問する予定でしたが、残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により叶いませんでした。その1年前には長崎を訪問しました。皆様にお伝えしたいのは、1980年代に世界市民の一人として広島と長崎に訪問した経験は、母国における私の政治家としての経歴、のちには国際問題に関わる私の行動に多大な影響を与えたということです。

私は、広島において2つの具体的な要請をしたことを強調したいと思います。第一に、核兵器保有国に対し、核兵器の先制不使用を約束すること、そして、核兵器に関する十分な透明性を確保するとともに、非核兵器保有国に対して核兵器を使用したり、使用すると脅迫したりすることが決してないようにすることを要請しました。地政学的状況の過激化により、再び核戦争のリスクが完全に忘れることのできないものになっているため、こうした要請が真摯に受け止められることを願います。

また、安倍晋三元総理を偲び、心からの哀悼の意を表します。安倍氏とは幾度か会談しましたが、マルチラテラリズム(多国間主義)を強く信じた方であり、国連の確固たるパートナーでした。安倍氏が殺害されたことに大きな衝撃を受けるとともに、深い悲しみに包まれました。

安倍氏は、国連との関係強化という遺産を残しました。安倍氏の逝去に際し、日本政府と日本国民の皆様、そしてご遺族に対し、改めて哀悼の誠を捧げます。

日本は多国間システムの柱であり、国連にとって世界第3位の資金拠出国です。

しかし、日本の支援は資金拠出にとどまりません。私は、ウクライナでの戦争に対する日本の連帯と支援、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への強力なコミットメント、防災分野におけるリーダーシップ、そして国連平和維持活動への貢献について日本を称賛します。

日本のグローバルなリーダーシップは、平和、人間の安全保障と軍縮に向けた活動の強化に及びます。

地政学的緊張が高まり、核の脅威に再び焦点が当たる中、平和をめぐる日本の力強く一貫した主張は、これまで以上に重要になっています。

このことは、広島における岸田総理との会談において裏付けられました。私たちは、朝鮮半島情勢を含め、今日直面している深刻な世界的課題の様々な側面について話し合いました。

このたびの私の訪問の中心となっているのは、核軍縮および不拡散です。この訪問は、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議がニューヨークで開催される中で行われています。

私が広島を訪問したのは、犠牲者の方々、被爆者の方々、そして広島の人々に敬意を表するためです。この後、私はモンゴルと韓国も訪問します。モンゴルは、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)と韓国の情勢に関連し、国連にとっての重要な対話者です。これは非核化、すなわち朝鮮半島の完全で検証可能、かつ不可逆的な非核化が、包括的共同作業計画(JCPOA)の成功とあわせて、引き続き核兵器の拡散を防止するための重要な目標であることを考慮したものです。

ご承知のとおり、私は緊張緩和に向けた対話の経路を再開・強化することを繰り返し訴えるとともに、歓迎してきました。当事者が対話を再開し、これまでの合意に基づいて前進するよう望みます。

また、拉致問題について、私は全面的な連帯を表明します。拉致問題は歴史的な不法行為であり、今日の世界において全く受け入れることはできません。

COVID-19のパンデミックからの復興は、先進国と開発途上国間、南北間の格差拡大、そして女性とあらゆる少数派に対する差別によって、グローバル・レベルでも国レベルでも阻害されています。

私は、持続可能な開発のための2030アジェンダ、および持続可能な開発目標(SDGs)に基づき、これらの不公正な格差を是正し、包摂的でレジリエント(強靱な)、かつ持続可能な経済と社会を支援する日本の取り組みに期待しています。

また、日本に対しては、開発途上国にとって不利な金融構造の改革をグローバル・レベルで支援するよう要請します。私たちは、あらゆる人々の役に立つ、より公正・公平なグローバル金融システムの構築のために連帯しなければなりません。

そして私たちは、気候危機に立ち向かうために連帯しなければなりません。

日本もまた、化石燃料の搾取がもたらす結果を目の当たりにしています。今年はすでに例年にない猛暑が続き、その後には集中豪雨にも見舞われました。

化石燃料に依存することは、雇用、ビジネスと経済の破壊、そして紛争、飢餓、疾病の増加へとつながる一方通行の道です。

イノベーションと自然界に対する深い理解において素晴らしい実績のある日本は、気候分野に関してグローバルなリーダーシップを発揮する、莫大な可能性を持っています。

私は、日本がいくつかの具体的な行動を起こすことを願います。

私は日本に呼びかけます。第一に、今後8年間で排出量を半減するための信頼できる野心的な行動を起こすことを。再生可能エネルギーの技術と貯蔵に関して、国内外でリーダーになることを。

第二に、石炭火力発電所に対する資金拠出を止めるという日本政府の約束に基づいて行動することを。

クリーンな石炭などというものは存在しないのです。

真の変革を起こすために、私は、日本の皆様と民間資本が、石炭への融資を完全に停止することを望みます。日本と全てのG20諸国が早急にこの約束を果たし、そしてさらに推し進めることを期待しています。

同様に、日本が来年議長国を務めるG7の各国は、国際的な化石燃料プロジェクトへの新規の直接的な公的支援を終わらせるという約束を果たさなければなりません。

第三に、石炭に依存する多くの国々が再生可能エネルギーへの公正な移行を実現するためには、パートナーシップが不可欠です。

再生可能エネルギーへの移行を支援するこれらのパートナーシップにおいて、日本は重要な役割を果たすことができます。その中で、日本は新たな市場を開拓し、経済競争力を高めることができるでしょう。

日本は今日、インドネシアが化石燃料から再生可能エネルギーへの公正な移行を加速させるための支援を行う連合の共同リーダーです。

そして私は、開発途上国が再生可能エネルギーを拡大し、適応を通じて気候レジリエンスを構築するための投資と支援を直ちに実現するよう、日本が多国間開発銀行に求めることを期待しています。

主要な資金拠出国として、これらの組織を気候緊急事態に対応する上で目的に合致したものとするために、日本はその影響力を行使することができます。

各国には選択肢があります。

イノベーションを実行し、新たな輸出市場を開拓し、成長と競争力を再活性化するのか。

それとも、気候を破壊して汚染する化石燃料に依存し、経済的に後れを取るリスクを冒し、他国が再生可能エネルギーの恩恵を受けるのを傍観するのか。

私は日本が正しい選択をすることを期待しています。日本のために、そして世界のために。

また、来年日本がG7の議長国と安全保障理事会の理事国になった際に、世界的に重要な喫緊の問題について声を上げることを期待しています。

グローバル協力を強化し、信頼と連帯を構築するために、日本が橋渡し役と調停役としての独自の立場を活かすことを期待します。

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原文(English)はこちらをご覧ください。