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平和維持関連の女性・平和・安全保障に関する円卓会議でのアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(2020年10月8日)

プレスリリース 20-084-J 2020年10月28日

各国代表の方々、同僚の方々、友人の皆様、

きょう私は、リモートでの開催ながら、それぞれの地域と国で平和のために懸命な取り組みを続けている4人の素晴らしい女性リーダーにお会いできたことを、光栄に思います。

国連創設75周年、そして安全保障理事会決議1325採択20周年をともに記念する会合に参加いただき、ありがとうございます。

同決議は大きな節目となりました。女性運動と女性リーダーが先頭を切る画期的なステップだったからです。

決議は初めて、女性のリーダーシップが国際の平和と安全の礎であることを正式に認識しました。そして、ジェンダーの不平等と脆弱性の間にある関連性、そして、女性の安全と国際の安全との間にある関連性を強調しました。

それ以来、国連は女性と平和、安全という課題への取り組みを絶えず進めてきました。

平和の達成と持続への女性の全面的で平等、かつ有意義な参加は、国連にとって優先課題であるだけでなく、平和維持を成功させるために欠かせない要素、そして私たちの「PKOのための行動」イニシアチブの中心的要素でもあります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による危機の中で、分断されたコミュニティーから信用され、公衆衛生に関する信頼できるメッセージを発信してきたのは女性でした。その一方で、不当に大きなケアと経済面の重荷を背負いつつ、家庭内暴力の恐るべき急増に直面し、疲弊しきっているのもまた女性です。

紛争状態では、女性がしばしば、コミュニティーのレベルで和平の仲介を行っています。そして、私たちの活動でも、女性リーダーやそのネットワークとのパートナーシップは、信頼を構築し、紛争を予防、解決するうえで不可欠なものであることが明らかになっています。

ところが、こうしたプロセスが国家レベル、国際的なレベルに移ってくると、女性は意図的に脇へ追いやられ続けています。

2018年までのデータを見ても、女性は世界全体で交渉担当者の13%、調停者の3%、署名者の4%しか占めていないことがわかります。

女性の参加と平和の持続可能性の間に相関関係があることを示すエビデンスが山ほどあるにもかかわらず、女性は依然として、その声を聞いてもらうために闘い続けなければならないという現状があります。

私たちはきょう、中央アフリカ共和国、キプロス、ダルフール、マリという、国連が和平プロセスを支援している4つの極めて異なる事例について、このような女性の声のいくつかをお聞きすることになります。

それぞれの状況について、個人的に若干のコメントさせていただければと思います。

私は2年前のラマダンの時期に、マリを訪れました。私が毎年、ラマダンの時期に連帯を示すために行っている訪問の一環です。

3年前には、中央アフリカ共和国で国連デーを迎えました。私が難民高等弁務官を務めていた時代にも数回にわたって訪問した場所です。

就任間もない数カ月の間には、キプロスの両コミュニティーのリーダーとお会いし、クラン・モンタナでの交渉にも積極的に参加しました。残念なことに、私たちが望んでいた成果は達成できませんでした。

そして、前職である難民高等弁務官として、数回にわたってダルフールを訪問しました。

こうした関わり合いを通じて、私は被災者の窮状を目にしただけでなく、苦痛の緩和と平和の構築に女性が果たす中心的な役割も目の当たりにしてきました。

スーダンでは、最近のジュバ和平交渉の署名者に女性が含まれていることが、特筆すべき成果となっています。スーダンで継続中の政権移行では、ダルフールの女性が一貫して、平和と安全を主張し、その実現に努めてきました。ちなみに、女性はスーダン全土でも、現在の民主制への移行をもたらした素晴らしい国民運動のすべてにおいて、絶対的に欠かせないリーダーシップを発揮しています。

中央アフリカ共和国では、同国の史上初めて、女性がハルツームでの和平交渉に参加し、昨年署名された合意の署名者には、女性が一人含まれていました。これは現地の女性団体が粘り強く戦略的なアドボカシーを展開した成果です。私たちは、間近に迫った選挙でもこの勢いを強め、女性が有権者や候補として有意義に参加できるようにすることで、選挙を包摂的なものとせねばなりません。

マリでは、政党に関係なく、女性が現在の移行と、平和で包摂的な解決に向けて、重要な役割を担っています。私は、きょうこの場にいらっしゃるビントゥ・フネ・サマケ氏が最近、女性・子ども・家族問題担当大臣に任命されたことをお祝いします。女性の市民社会リーダーがマリの平和と安定のために行ってきた不断の努力が認識されたという点で、重要な意味を持っているからです。

キプロスでも、2015年から2017年にかけて行われた交渉で、女性が当事者双方の代表団に加わっていました。それ以来、両方のコミュニティーで女性が開催しているピースウォークは、対話と協力、信頼の強化につながっています。

友人の皆様、

このような例は、枚挙に暇がありません。

とはいえ、私たちは政治的な挫折や女性の権利擁護団体への投資の欠如、そして正直なところ、深く根を張った思考回路や男性支配により、前進のペースが相変わらず遅いことをはっきりと認識しています。

この現状は変えねばなりません。

単に女性の意見を聞くだけでなく、女性が積極的に参加できるようにもしなくてはなりません。単に話し合いに招かれるだけでなく、これを主導できるように、また、単に関与できるだけでなく、権利と公正な取り扱いを保障されるようにもしなければならないのです。

女性のリーダーシップに効果があることは、特にコロナ禍によって明白になりました。私たちはあらゆる分野で、リーダーシップのジェンダー平等を約束することにより、この危機から復興を遂げなければなりません。それは基本的な権利であると同時に、持続可能な平和と開発にとって欠かせない要件でもあるからです。私は引き続き、政治的な代表や、平和と安全に関する政策決定を含め、あらゆる分野で一時的な特別措置と女性枠を設けるよう訴えていきます。

男女の平等は権力の問題でもあります。私たちの世界と社会で、権力が掌握、行使される方法を考え直し、その再分配を行うためには、根本的な変革が必要です。

国連はその実現を固く決意しています。

サマケ氏、エコモ氏、オスマン氏、そしてゼノン氏。私たちは皆さんの経験についてお聞きできることを楽しみにしています。

私は皆さんの英知が、すべての人にとって平和で包摂的な世界という、私たちに共通の目標を達成する手助けになると確信しています。ありがとうございました。

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原文(English/French)はこちらをご覧ください。