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C40世界市長サミット2019での アントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶 (コペンハーゲン、2019年10月11日)

プレスリリース 19-095-J 2019年10月23日

©World Bank/Franz Mahr

親愛なる友人の皆様、私はまず、自分の深い罪を告白せねばなりません。

私は自国で30年近くにわたり、政治に関わってきましたが、実は市長になったことがありません。

しかし、この30年の間、私は常に出身選挙区の市議会議員を務めていました。何年もの間、市議会議長の職にもありましたが、私はいつも、人々が真に望んでいることは何なのかをはっきりと把握できない限り、たとえ首相になっても、その職を全うできないと感じていました。そして、人々が真に望んでいることを真にはっきりと把握できる場とは、地方のレベル、そして市町村のレベルに他なりません。よって私は、きょう皆様にお会いできたことを、非常に嬉しく思っています。また、ここにリスボン市長の姿が見られることは、私にとって更なる喜びでもあります。私の妻は、市長のチームの一員として、母国の首都で文化を担当しているからです。

ですから、市長を務めたことのない私も、この集いの仲間に入れていただければ幸いです。

友人の皆様、

気候変動との闘いに勝つか負けるかは、主として都市にかかっています。

世界人口の過半数を抱える都市は、持続可能な開発の、そして(デンマーク)首相がおっしゃったように、包摂的な開発の最前線に立っています。

大気汚染が深刻な問題として表面化するにつれ、人々は皆様に、都市の大気浄化を先頭に立って進めることを期待しています。

環境破壊で都市への移住者が増える中で、人々は皆様がそれぞれの都市を、多様性と社会的一体性、そして雇用創出のオアシスとすることに望みをかけているのです。

皆様は気候緊急事態に対する第一応答者です。

都市の気候フットプリントは莫大であり、世界のエネルギー消費の3分の2以上、世界のCO2排出量全体の70%以上をそれぞれ占めています。

今後数十年間に建設、住宅、省エネ、発電、輸送などの都市インフラについて行われる選択は、排出量の推移に極めて大きな影響を及ぼすことになります。

ですから私は、この世界で私たちが必要とする変革の実現を決意されている皆様にご挨拶できることを、喜ばしく思います。

私たちは間違いなく、緊急対策を要する危機に直面しています。

気候緊急事態は、地球上の人間社会の存続を脅かしているからです。

パリ協定は確かに、進路を変えるための大事な機会ではありますが、その約束はまだ実行に移されていません。

気候変動は私たちの対策よりも速く、最悪のケースの予測を上回るスピードで進んでいます。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、私たちが何をすべきかを明らかにしています。

私たちは気温の上昇を1.5˚Cに抑えなければなりません。

そのためには、2030年までに温室効果ガスの排出量を少なくとも45%削減し、2050年までに気候中立性(クライメイト・ニュートラリティー)を達成する必要があります。これが現時点で得られている最善の科学知識です。

しかし、各国による気候行動計画の現状を見ると、こうした目標の達成はまったく期待できません。

私たちは3度以上の気温上昇という破滅的な事態に向け、着実に歩を進めています。

そうなれば、人類に壊滅的な影響が及び、全世界で持続可能な開発目標(SDGs)を達成できる望みはなくなります。

私たちには、気候緊急事態に取り組み、すべての人にとって持続可能かつ包摂的な開発を推進できる技術と資源があります。

多くのレベルで依然として欠けているのは、政治的な意志です。

このような理由から、私は先月の気候行動サミットに、政府だけでなく、各国の人々都市、企業も招待したのです。

お願いしたことはただ一つ、つまり、あらゆるレベルで気候行動計画を劇的に強化することです。

多くの出席者は、この要請に応えました。

65カ国および自治体レベルの主要な経済圏が2050年までに炭素排出量ゼロを約束しました。まだ ― 重要なのはこの “まだ” という点なのですが ― まだ主な排出国がこれを約束していないのにも関わらず、です。

世界には、石炭中毒にかかっている地域が多くあります。ここヨーロッパでは、いくつかの国がすでに近い将来、石炭の段階的使用禁止を決定しているものの、東アジアや南アジア、東南アジアをはじめ、世界のその他一部地域では、今後何年もの間、まったく受け入れがたい数の石炭火力発電所の新設がいまだに計画されています。

少なくとも70カ国が、2020年までに自国の行動計画を強化する意志を示していますが、グラスゴーでの会議までに、自国が決定する貢献にどのような動きが見られるか、まだ定かではありません。

サミットでは、約100の都市も取り組みの強化を約束しましたが、その中にはもちろん、C40ネットワークに参加する都市も多く含まれています。皆様のリーダーシップに感謝したいと思います。

2兆ドルを超える資産を保有する世界最大の資産家グループは、2050年までにカーボンニュートラルな投資への移行を遂げることを誓約しました。

これに加え、世界の資産運用総額のほぼ半分に当たる約34兆ドルを運用する資産管理会社も、世界のリーダーに対し、炭素に意味のある価格を付け、全世界で化石燃料への補助金と石炭火力発電の段階的廃止を図るよう求めています。

私たちはこの勢いに乗らなければなりません。

今では、企業や都市、社会のほうが、政府よりも先に取り組みを進めていることも事実です。よって、各国政府が、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を確実に受け入れるよう、最大限の圧力をかけ続けることも極めて重要です。

排出量を抑制するためには、各国が気候変動対策への野心を引き続き高め、2020年までに新たなより質の高い国内気候行動計画を提出せねばなりません。

皆様、そして皆様が率いる都市は、このレースで中心的なランナーとなります。

2050年までに、世界人口のほぼ10人に7人は、都市部で暮らすことになるからです。

この人口増の90%以上は、開発途上国で生じます。

気候変動を意識した都市計画を行わなければ、深刻な結果が生まれるでしょう。

私は、C40がこの取り組みの先頭に立っていることを嬉しく思います。

すでに80を超える都市が、パリ協定の目標達成に向けた「Deadline 2020(デッドライン2020)」イニシアティブに参加しています。

また、C40による「Planetary Health Diet for All(全世界の人々に健康的な食生活を()」イニシアティブの一環として、市長は政府や他の地方自治体、企業と連携し、調達その他の権限を活用しながら、人々がより健康で気候に優しい食生活を送るための支援を行うことになっていますが、これも気候変動対策に欠かせない取り組みです。

食料の消費は、C40加盟都市の温室効果ガス排出量の13%を占めていますが、中でも肉と乳製品の消費は、そのうちの75%を占めています。

私はまた、世界保健機関(WHO)の大気質ガイドラインの遵守に向けたC40の「Clean Air Cities(都市大気浄化)」イニシアティブも歓迎します。

10人のうち9人が安全でない空気を吸っているという現状を容認するわけにはいきません。

すでに重要な対策を実施に移している都市もあります。

コペンハーゲンが2025年までにカーボンニュートラルの達成を誓約していることは、本日私たちが改めて伺ったとおりです。

その一方で、同市のリサイクル政策は毎年2万トンのCO2排出の回避に貢献しています。

アフリカにも、ダーバンやナイロビをはじめ、大気汚染の監視改善に向け、大気の質を測定するセンサーを導入した都市がありますが、私はこのような取り組みを称賛します。

しかし、私たち全員がさらに遠くへ、そして速やかに取り組みを進める必要があります。私は皆様に、4つの重要分野で指導力を発揮していただきたいと思っています。

第1に、皆様の調達、インフラ整備、建築規制、都市計画、建築基準、輸送システム、ゴミ処理と投資を、パリ協定、ニュー・アーバン・アジェンダ、持続可能な開発目標(SDGs)と整合させるようお願いします。

第2に、皆様の自国の気候行動計画を強化し、その実施を加速してください。

第3に、新たな投資機会と財源の確保をお願いします。皆様の中には、グリーンボンドの発行やスプロール対策としての財産税制改革、民間セクターとの協業など、地方財政面でイノベーションを起こしている都市も多くあります。

しかし、多くの都市、特に中小の都市は、このような機会を活用できる能力を欠いているのが現状です。

私は皆様に対し、このような都市と連携し、気候に優しい都市開発への投資促進を図るよう強く訴えたいと思います。

そして第4に、誰一人取り残さないことを念頭に、低排出で気候変動に強い社会への公正な移行を図ることの重要性を強調したいと思います。

(デンマーク)首相の発言は、まさに本質を捉えています。今日の再生可能エネルギーが、化石燃料や石炭よりも多くの雇用を作り出していることに間違いはありませんが、これを炭鉱作業員に説明することは難しいのです。

ですから私たちは、たとえ地球を救い、私たちの問題を解決するために気候変動対策が欠かせないとしても、その犠牲となりかねない人々の不安や懸念に取り組むことのできる社会政策の導入を確保する必要があります。

つまり、私たちは教育や生涯学習、社会政策、セフティネットワークなど、環境対策と気候変動対策に必要なすべての措置において、それによって悪影響を受けることが避けられない人々の利益に配慮することで、こうした人々も対策に巻き込まねばなりません。

2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標に対し、世論全体の支持をしっかりと確保することが欠かせないのです。

親愛なる友人の皆様、

皆様の多くは、すでに大胆な約束を実行に移されています。

私は皆様に、協業とイノベーション、そして野心の高揚を続けるようお願いしたいと思います。

国連システムは、皆様の取り組みをできる限り支援していきます。私たちは2050年までに、すべての都市と国がカーボンニュートラルを達成できる見通しを立てられるようにする必要があるからです。

私たちは、気温上昇を1.5度に抑えるという目標を達成する必要があります。

私たちの生命を維持する生態系と生物多様性を守ることも必要です。

ですから、健全な地球ですべての人々が平和や豊かさ、尊厳、機会を手にできるよう、協力を続けていこうではありませんか。

皆様のリーダーシップに深く感謝いたします。

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原文(English)はこちらをご覧ください。