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気候変動に関するアントニオ・グテーレス国連事務総長演説 (ニューヨーク、2018年9月10日)

プレスリリース 18-064-J 2018年09月20日

親愛なる地球の友人の皆様、

本日は国連本部にお越しいただき、ありがとうございます。

私はここで、皆様に警鐘を鳴らすよう訴えました。

気候変動は、私たちの時代を決定づける問題です。そして私たちは、決定的な瞬間に直面しています。

私たちの存在がまさに脅かされているからです。

気候変動は私たちの先を行く速さで進んでいます。そのスピードは衝撃波となり、全世界にSOSを発信しています。

私たちが2020年までに方針を変えなければ、野放しの気候変動を避けられる時点を過ぎ、人間にも、そして私たちの生命を維持する自然システム全体にも、破滅的な影響が生じかねません。

私がきょう、政治家、企業や科学者、そして全世界の一般市民にリーダーシップの発揮をお願いする理由も、ここにあります。

私たちには、対策の効果を上げるためのツールがあります。

しかし私たちには、パリ協定の後でさえも、必要な行動を起こすリーダーシップと野心が欠けています。

親愛なる友人の皆様、

この危機が切迫しているという事実をはっきりとさせておきましょう。

私たちは全世界で、記録的な気温を経験しています。

世界気象機関(WMO)によると、最近の20年のうち18年は、記録が始まった1850年以来、気温が最も高い年となっています。

今年はこれまでで4番目に暑い年となりそうです。

厳しい熱波や山火事、暴風雨、洪水により、次々と多くの死者や壊滅的な被害が生じています。

先月はインドのケララ州で、近年では最悪の洪水が発生し、死者は400人にのぼり、100万人が家を失いました。

昨年はハリケーン「マリア」により、プエルトリコで3,000人近くが死亡し、米国史上最も多くの死者を出す気象災害の1つとなりました。

犠牲者の多くは、ハリケーンが去ってから数カ月の間に、電気やきれいな水、適切な医療にアクセスできなかったために命を失いました。

これらの災害でさらに憂慮すべきなのは、私たちがその危険について警告を受けていたという点です。

科学者たちは何十年も前から繰り返し、その危険を伝えてきました。

あまりにも多くのリーダーたちが、その声を聞こうとしませんでした。

科学が求めるビジョンを持って行動した人々は、あまりにも少なかったのです。

私たちにはその結果が見えています。

科学者の最悪のシナリオに近づきつつある状況さえ見られます。

北極海の氷は、私たちの想像を絶するスピードで消えています。

今年は初の出来事として、グリーンランド北部の厚い永久海氷が割れ始めました。

北極のこの劇的な温暖化は、北半球全体の天候パターンに影響を与えています。

山火事は長く続き、広く拡大するようになりました。

中には世界中に煤や灰をまき散らすほど大きな規模に発展し、氷河や氷帽を黒く染め、その溶解をさらに速めた火災もあります。

海洋はさらに酸性化し、生命を維持する食物連鎖の基盤を脅かしています。

サンゴは大量に死滅し、不可欠な漁業資源をさらに枯渇させています。

そして陸上では、大気中の二酸化炭素濃度が上昇し、収穫されるコメの栄養分が乏しくなったことで、数十億人の福祉と食料の安定確保を脅かしています。

気候変動が激化するにつれ、私たちの食料を確保することはさらに難しくなるでしょう。

生物に不可欠な生息地が減るにつれ、絶滅率は一気に高くなるでしょう。

自分たちの依存する土地が暮らしを支えられなくなる中で、さらに多くの人々が家を捨て、移住を余儀なくされるでしょう。

このことにより、減少する資源をめぐる局地的な紛争がすでに数多く発生しています。

今年5月、WMOは、地球がもう1つの暗い転機を迎えたことを報告しました。月平均で最大の二酸化炭素濃度が記録されたのです。

これまで長い間、400ppmが臨界閾値とみなされてきました。

しかし現在、大気中の二酸化炭素濃度は411ppmを超え、さらに増大を続けています。

これは300万年ぶりの高水準に当たります。

親愛なる友人の皆様、

私たちは地球に何が起きているかを知っています。

私たちが何をすべきかも知っています。

そして、そのやり方も分かっています。

しかし悲しいことに、私たちの行動には、必要な野心がまったく伴っていません。

世界のリーダーは3年前、気候変動に関するパリ協定への署名にあたり、気温の上昇を産業革命以前との比較で摂氏2度未満に抑え、しかもこれをできるだけ1.5度に近づけるよう取り組むことを誓いました。

このターゲットは事実上、気候変動の最悪の影響を避けるために最低限必要な目標です。

しかし科学者たちは、その達成の目処がまったく立っていないとしています。

ある国連の調査によると、これまでのパリ協定締約国によるコミットメントは、必要な対策の3分の1にすぎません。

私たちの前には、非常に高い山が立ちはだかっています。

しかし、その踏破は不可能ではありません。

私たちは、その登り方を知っているからです。

簡単に言えば、致命的な温室効果ガス排出に歯止めをかけ、気候変動対策を推進する必要があります。

私たちの化石燃料への依存度を急速に引き下げる必要もあります。

そして、これを水力や風力、太陽光などのクリーン・エネルギーに変えることも必要です。

私たちは森林破壊を止め、荒廃した森林を回復し、営農方法を変えねばなりません。

循環経済と資源効率を受け入れる必要があります。

私たちの都市と輸送部門を根本的に見直す必要もあるでしょう。

建物の冷暖房や照明の方法も考え直し、エネルギーの無駄遣いを減らすことも必要です。

そして、私たちの対話はまさにこの点で、熱を帯びてくる可能性があります。

なぜなら、気候変動に関する対話は、どうしても運命や破滅を中心とするものになりがちだからです。

もちろん、警告は必要です。しかし、恐怖だけで物事は解決しません。

私の想像力をかき立てるのはむしろ、気候変動対策で生まれる極めて大きな機会です。

親愛なる友人の皆様、

私たちが気候変動の課題に立ち向かうことができれば、人類はそこから大きな利益を受けることになるでしょう。

その利益の多くは、経済的なものです。

大抵の場合は既得権者から聞くことが多い主張は、気候変動への対応にはコストがかかり、経済成長を損ないかねないというものです。

それはまったくナンセンスな考え方です。

事実、その逆こそが真だからです。

私たちは気候変動によって、甚大な経済的損失を被っています。

この10年間、異常気象や化石燃料燃焼による健康被害は、米国経済に少なくとも年間2,400億ドルのコストをもたらしてきました。

今後10年間だけで、このコストはさらに50%急増すると見られます。

2030年までに、地球温暖化による生産性損失で、世界経済には2兆ドルのコストが生じかねません。

気候変動対策が巨大な利益をもたらすことを示す研究結果は増えています。

私は先週、経済と気候変動に関するグローバル委員会による「ニュー・クライメイト・エコノミー」報告書の発表会に出席しました。

この報告書によると、気候変動対策と社会経済の前進は相互に支え合う関係にあり、これまでのやり方を続けた場合に比べ、その利益は2030年までに26兆ドルに上るものと見られています。それは、私たちが正しい道を進んだ場合のことです。

例えば、荒廃森林の回復に1ドルを費やすごとに、経済的な利益と貧困削減として最大30ドルを回収できます。

劣化した土地を回復すれば、農牧民の生活と所得が向上し、都市部への移住圧力が弱まります。

気候変動に強い給水・衛生施設を整備すれば、毎年36万人を超える乳児の命を救える可能性があります。

そして、大気の浄化は公衆衛生にとって大きな利益となります。

国際労働機関(ILO)の報告によると、良識的なグリーン経済政策で、2030年までに2,400万人の新規雇用が生まれる可能性があります。

中国と米国では、再生可能エネルギー関連の新規雇用が、石油・ガス業界で創出される雇用を上回るようになっています。

そしてバングラデシュでは、400万を超える世帯に住宅用太陽光設備が設置され、11万5,000人を超える雇用が生まれたほか、農村世帯は4億ドルを超える汚染燃料への支出を節約できるようになりました。

このように、再生可能エネルギーへのシフトは、金銭を節約するだけでなく、新たな雇用を生み、水の浪費を減らし、食料生産を推進し、私たちの命を奪っている汚染大気を浄化することにもなるのです。

対策を講じることで失うものは何一つなく、そこには得るものしかありません。

それでも、この課題が大きすぎると考える人々も依然として多くいます。

しかし、私はこれにまったく同意できません。

人類はこれまで、限りない課題に直面し、これを克服してきました。こうした課題により、私たちが力を合わせ、分裂や意見の違いを超えて、共通の脅威と闘う必要が生じたからです。

国連はまさにこのような形で、行動を開始しました。

私たちはこうして、戦争の終焉や疾病の阻止、世界的な貧困の削減、さらにはオゾンホールの修復を助けてきたのです。

そして今、私たちは存亡を左右する分岐点に差しかかっています。

私たちが正しい道、すなわち唯一の良識的な道を選ぶためには、人間の創意工夫を全力で寄せ集めねばならないでしょう。

しかし、こうした創意工夫は実際に存在し、すでに解決策を提供しています。

ですから、親愛なる友人の皆様、

もう1つ中心的なメッセージとして、気候変動への対策において、技術は私たちの味方に付いていることをお伝えしたいと思います。

再生可能エネルギーの台頭には、目を見張るものがあります。

特に汚染のコストを勘案すれば、再生可能エネルギーは現在、コスト面で石炭や石油と競争できるか、場合によってはこれに優ることもあります。

中国は昨年、前年比で30%増の1,260億ドルを再生可能エネルギーに投資しました。

スウェーデンは今年、2030年を期限とする再生可能エネルギー関連の目標を12年早く達成できる見通しです。

2030年までに、風力と太陽エネルギーはヨーロッパで、電力需要の3分の1を賄える可能性があります。

モロッコが建設中のソーラーファームはパリの面積に匹敵し、2020年までにクリーンな電力を手ごろな価格で100万世帯以上に供給する予定です。

スコットランドは世界初の浮体式洋上風力発電所を開設しました。

その他にも、希望の兆しは多く見られます。

ペルシャ湾岸諸国やノルウェーなど、化石燃料が豊富な国は、その経済の多様化を図る方法を模索中です。

サウジアラビアは、石油経済からエネルギー経済への転換を図るため、再生可能エネルギーに多額の投資を行っています。

1兆ドルという世界最大規模を誇るノルウェーの政府系ファンドは、石炭への投資から撤退するとともに、森林破壊を理由に、数多くのパーム油やパルプ・製紙関連会社を投資対象から外しました。

企業が気候変動対策による利益を認識しはじめたことを示す兆候も見られています。

世界最大の規模と影響力を誇る130社以上の企業は、営業用の電力を100%再生可能エネルギーで賄う計画を立てています。

多国籍企業18社は、社用車を電気自動車にシフトさせる予定です。

そして400社を超える企業が、それぞれの排出量を管理するため、最新の科学に基づくターゲットを策定することになっています。

世界最大の保険会社の1つに数えられるアリアンツ(Allianz)は、石炭火力発電所の保険引受を停止する予定です。

投資もシフトしてきました。

28兆ドルの運用資産を抱える250名以上の投資家は「Climate Action 100+」イニシアティブに加わっています。

こうした投資家は、世界最大の温室効果ガス排出企業に対し、その気候変動パフォーマンスの改善と排出量の透明な開示確保を働きかけることを約束しています。

こうした多くの事例は今週、カリフォルニア州のブラウン知事が招集する重要な「世界気候行動サミット(Global Climate Action Summit)」で披露される予定です。

私がお話ししたパイオニアたちは、いずれも将来を見据えてきました。

そして、健全な地球で豊かさと平和を達成する道はそれ以外にないという理解から、グリーン経済に賭けています。

それに代わる道は、暗く危険な未来に続くものしかありません。

これらはいずれも、重要な前進です。

しかし、それでも十分ではありません。

よりクリーンかつグリーンな未来に向けた移行を加速する必要があります。

私たちはまさに「使わなければ駄目になる(“use it or lose it”)」時期を迎えています。

今後およそ10年間で、世界は約90兆ドルをインフラ整備に投資することになります。

ですから私たちは、このインフラの持続可能性を確保せねばなりません。さもなければ、私たちは汚染だらけの危険な未来を確定させてしまうことになるのです。

そのためには、世界のリーダーたちがさらに取り組みに力を入れる必要があります。

もちろん、民間セクターにも行動の準備はできており、すでに動き出した企業も多くあります。

しかし、政府に決定的な行動が見られないことで、市場には不透明性が、パリ協定の将来については懸念が生まれています。

この懸念を現実のものにしてはなりません。

既存の技術は、その活用を待っています。よりクリーンな燃料や代替的建材、改良型電池や営農と土地利用の前進がそれに当たります。

これらと、その他のイノベーションは、私たちがパリ協定のターゲットを達成し、緊急に必要とされる大きな野心を投入できるよう、温室効果ガス排出量を削減するうえで、大きな役割を果たすことができます。

政府も、化石燃料に対する有害な補助金に終止符を打つとともに、汚染源である温室効果ガス排出の真のコストを反映し、クリーン・エネルギーへの移行に動機づけを行うようなカーボンプライシングを制度化せねばなりません。

親愛なる友人の皆様、

ここまでは、私たちが直面する緊急事態、行動によって得られる利益、そして気候に優しい移行の実現可能性についてお話してきました。

行動すべき理由はもう1つあります。それが道徳的義務です。

気候変動の最も大きな責任は、世界で最も豊かな国々にありますが、その最初かつ最悪の影響を受けるのは最貧国と、最も脆弱な立場に置かれた民族やコミュニティーです。

私たちはすでに、厳しい干ばつやますます激しい暴風雨が絶えず、しかもますます頻繁に発生する様子に、その理不尽さを感じ取っています。

特に大きな代償を強いられるのは、女性と女児です。それは、単にその生活が厳しくなるというだけでなく、災害時には常に、女性と女児が不当に大きな被害を受けるからでもあります。

よって、比較的豊かな国々は、二酸化炭素の排出量を削減するだけでなく、最弱者層がそれによって生じる被害に耐えるために必要なレジリエンスを身に着けられるよう、さらに取り組みを強化しなければなりません。

大切なのは、二酸化炭素は大気中に長く残存するため、すでに生じている気候変動が今後、数十年間続くという認識を持つことです。

すべての国がこれに適応するとともに、最も豊かな国々は最も脆弱な立場に置かれた国々を支援することが必要です。

親愛なる友人の皆様、

これこそ、私が今月、ニューヨークの国連総会に集う世界のリーダーに向け、はっきりと発信したいメッセージです。

私が申し上げたいのは、気候変動こそが現代の最大の課題だということ。

科学のおかげで、私たちにはその規模と性質が分かっているということ。

私たちには、これに対処するための創意工夫や資源、ツールが備わっていること。

そして、リーダーたちはその先頭に立たねばならないということです。

私たちには、行動を起こすための道徳的、経済的な誘因があります。

パリ協定後も依然として欠けているのはリーダーシップ、そして、切迫感と決定的な多国間対応への真のコミットメントです。

パリ協定履行のための実施ガイドラインに向けた交渉はきのう、バンコクで閉幕しました。ある程度の進展は見られたものの、とても十分とは言えません。

次の重要な転機は12月、ポーランドで訪れます。

私はリーダーに対し、G7やG20会合、国連総会、世界銀行、国際通貨基金(IMF)の会議など、それまでのあらゆる機会を捉え、残る障害を解消するよう呼びかけます。

カトヴィツェの会議をコペンハーゲン会議の二の舞にすることはできません。

私たちのリーダーが、その命運を掌中に握る国民のことを本気で考えているという証拠を示す時が来ています。

リーダーには、将来のこと、そして今現在のことも本気で考えていることを示してもらう必要もあります。

私はその意味で、きょう皆様の中に若者の姿が非常に多く見られることをたいへん嬉しく思います。

全世界の若者や女性団体、民間セクター、信仰団体、学界、草の根運動をはじめ、市民社会がそのリーダーに責任を問うことは欠かせません。私自身、そのことをユース担当特使から聞かされています。

私は特に、女性のリーダーシップ発揮を呼びかけます。

主導権を与えられた女性は、問題解決の推進役となれるからです。

私たちの未来、そして人類の運命そのものが、気候変動への対処の仕方にかかっています。

それはあらゆる側面で、国連の活動に影響します。

地球の温暖化を2度未満に抑えることは、グローバルな繁栄と人々の福祉、そして国々の安全に欠かせません。

この理由から、私は気候変動対策を国際的な最優先課題に据えるため、来年9月に気候サミットを招集する予定です。

私はきょう、気候変動対策関係者の間で尊敬を集めているリーダー、ルイス・アルフォンソ・デ・アルバ氏を、サミットに向けた準備を主導する特使に任命したことを発表いたします。

デ・アルバ氏の活動は、マイケル・ブルームバーグ気候変動担当特使とボブ・オア特別顧問による取り組みを支援することになります。両氏は、民間資金の動員とボトムアップ型行動の促進に貢献する予定です。

来年のサミットは、各国がパリ協定に基づき約束する気候変動対策の強化を義務づけられるちょうど1年前に開かれます。

野心の水準を一気に上げる以外に道はありません。

この目的を達成するため、サミットは問題の核心をなす分野、すなわち最も排出量が多い部門と、レジリエンスの構築で最も大きな効果が得られる分野に注力する予定です。

気候サミットは、リーダーやパートナーが気候変動対策を実証し、その野心を披露する機会になります。

サミットには、総計数兆ドルに上る資産を代表する人々を含め、官民双方から実体経済と現実の政治に携わる人々が参集する予定です。

私は、2020年までにいかにして排出量の増大を食い止め、その後今世紀半ばまでに正味ゼロ・エミッションを達成できるよう、排出量を劇的に削減するつもりなのか、お聞きしたいと思っています。

都市や国家は、石炭からソーラーと風力に、すなわちブラウン・エネルギーからグリーン・エネルギーへのシフトを遂げる必要があります。

国連本部のあるここニューヨーク市は、この方向で重要なステップを踏み、他の市町村とも協力しながら変革の推進を図っています。

建物や輸送、産業の分野でいずれも、さらに省エネと再生可能エネルギーに投資し、イノベーションを起こす必要があります。

そして石油・ガス業界には、その事業計画をパリ協定とそのターゲットに合致させる必要があります。

カーボンプライシングを一気に広めていただきたいと思います。

また、森林を広く伐採することなく、食料の栽培を確保することにより、世界の食料システムを適正化してほしいと思います。

私たちには、損失と無駄を減らす持続可能な食料のサプライチェーンが必要です。

そして私たちは、森林破壊を止め、劣化した土地を回復しなければなりません。

私は、銀行と保険会社によるグリーン金融に向けた動きを一気に加速するとともに、金融商品や債券類のイノベーションを奨励することで、小島嶼国をはじめとする脆弱な国々のレジリエンスを強化し、その気候変動に対する備えを補強したいと思っています。

また、各国政府には、開発途上地域を支援する気候変動対策に年間1,000億ドルを動員するという誓約を守っていただきたいと思います。

私たちは、緑の気候基金の全面的な活動展開と十分な資金調達を可能にする必要があります。

しかし、そのためにはまず、政府と産業、市民社会が考え方を統一し、政府が先頭に立ち、また中心となって、気候変動対策に向けた動きを推進する必要があります。

私はすべてのリーダーに対し、現時点での活動だけでなく、2020年の国連気候会議でさらに何をしようとしているのか、そして、どのような点で決意を新たにし、野心を確実に高めてゆくつもりなのかについても報告する用意をもって、来年の気候サミットに参集するよう呼びかけています。

私が市民社会、特に若者に対し、気候変動対策を求めるキャンペーンを呼びかけている理由も、そこにあります。

来年を機に、取締役会や重役室、全世界の政府で、大きな変革を決定していこうではありませんか。

目標を高く持ち、協力体制を作り上げ、リーダーに私たちの声を届けようではありませんか。

私としても、国連全体としても、この取り組みを進めることを決意しています。私たちは、私がきょうお話しした課題に立ち向かうリーダー全員を支援していきます。

親愛なる友人の皆様、

もう無駄にできる時間はありません。

今夏の激しい山火事と熱波が示すとおり、私たちの目前で世界は変わりつつあるからです。

私たちは奈落の淵に向かって疾走しています。

進路を変えるのに遅すぎることはありませんが、1日が過ぎるごとに、世界は少しずつ暑くなり、私たちの無策の代償も大きくなっています。

私たちが1日、行動を怠るごとに、だれも望まない運命が一歩ずつ近づいてきます。この運命は、人類と地球上の生命への損害という形で、何世代にもわたって影響を及ぼすことになるでしょう。

私たちは自らの運命を掌に握っています。

世界は手遅れになる前に、私たち全員が課題に立ち向かうことを期待しています。

私は皆様全員を頼りにしています。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。