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「世界人道サミット」に向けた準備に関する加盟国会合での 事務総長開会の辞(ニューヨーク、2016年4月4日)

プレスリリース 14-033-J 2016年04月08日

世界人道サミット(World Humanitarian Summit, WHS)に向けた準備に関する議論の継続にお加わりいただき、感謝いたします。加盟国との対話と協力は、人々の窮状と人道的義務を中心に据える初のサミットの成功とフォローアップに欠かせません。

まず、今から50日後に迫ったこの重大なイベントの受け入れ国であるトルコ政府に、改めて深い感謝の意を表したいと思います。

私たちはこれまで3年間にわたり、WHSプロセスの前進に向けた加盟国その他のステークホルダーによる関与と貢献から、大きな恩恵を受けてきました。本日のブリーフィングの背景には、この協力の精神があります。そしてこの精神は、サミットの開催を経て、その後のフォローアップに至るまで継続してゆきます。

この数カ月間、エリアソン副事務総長、オブライエン事務次長と私は、サミットの成功を確保するため、皆様とのやり取りを続けてきました。

私は準備プロセスの終了を間近に控え、これほど多くの加盟国から多大な貢献あったことに感謝したいと思います。

私はオーストラリア、コートジボワール、コンゴ民主共和国、エチオピア、フィンランド、ドイツ、グアテマラ、ハンガリー、インドネシア、日本、ヨルダン、ニュージーランド、カタール、シンガポール、南アフリカ、スイス、米国のほか、全世界の地域グループを含め、地域別、テーマ別およびグローバルな協議を主宰していただいた方々の取り組みにも感謝します。

また、国内で協議を開催したり、財政的または技術的な寄与によって世界人道サミットに貢献したりした多くの加盟国にも感謝いたします。

アフリカ連合(AU)、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)および、欧州連合(EU)がサミットに向けて明らかにした立場は、私たちに共通の課題の設定に大きく貢献しました。

さらに私は、数々の特別会合やサイドイベント、また、イノベーション・マーケットプレイス、展示フェアに大きな関心が集まっていることも嬉しく思います。興味深く刺激的なイベントを実現するためのアイデアを出していただいた全ての加盟国に感謝いたします。

私たちは今、準備において最後の重要な段階にさしかかっています。以下では、リーダーズ・セグメントと円卓会議という、サミットの2つの側面について簡単にお話ししたいと思います。

第1に、大胆で勇気ある変化を実現するための最善の方法は、リーダー自身がその実現に関わることです。私はこの理由から、サミット1日目の5月23日、各国首脳の出席のもとにリーダーズ・セグメントを招集することとしました。

リーダーズ・セグメントは「人道への課題」の5つの中核的な課題について話し合う機会となります。この5つとは、第1に紛争を予防、解決するための政治的リーダーシップ、第2に人権を擁護する規範を堅持すること、第3に誰も置き去りにしないこと、第4に人々の暮らしを変えること(支援の提供からニーズの解消へ)、そして第5に人道への投資です。

私たちは今、今日の世界で見られる人道の後退を許さないというメッセージを、一致団結して届ける絶好の機会を得ています。私たちが最も必要とされているこのときに、私たちを必要とする人々を裏切ってはなりません。

イスタンブールでの会議こそ、その機会です。歴史は、私たちがこのときをどう活用するかによって、私たちを裁くことになるでしょう。私たちは深刻な窮地に陥っている百万単位の男女、そして子どもたちを見捨ててはならないのです。

私は皆様に、このメッセージをそれぞれの政府に伝えていただきたいと思っています。イスタンブールには最高レベルの代表を送り、21世紀の大きな課題に取り組むためのリーダーシップを示してください。そして、国連憲章の言葉にもあるとおり、私たちには「われら人民」にともに奉仕する用意があることを示してください。

第2に、私たちは2日間のサミットを通じ、計7回の円卓会議を招集します。これは加盟国や市民社会、民間セクターのリーダーたちが、2030アジェンダその他共有の目標を達成するうえで重要な多くの課題について、集中的に話し合う場となります。

あまりにも多くの国々で、紛争が生活と経済を破壊しています。一般市民は、国際的な法律と規範に違反する恐ろしい暴力や残虐行為を受けています。私はこの理由から、皆様に対し、紛争予防と解決に関する円卓会議、および、人道を擁護する規範の堅持に関する円卓会議への最高レベルでの参加を強く訴えます。

私は2月、コンゴ民主共和国と南スーダンの紛争で家を追われた女性と子どもたちに会いました。先週はレバノンとヨルダンの難民を訪問し、胸が詰まるような苦難と喪失の話を聞きました。全世界で、記録的な数の人々が家を追われています。皆様の国の中には、長年にわたって難民を受け入れたり、国内避難民に対応したりしている国々も多くあります。誰も置き去りにしないことをテーマとする円卓会議に最高レベルの参加をいただければ、この責任を共有し、避難民を減らすための私たちのグローバルな試みを進めるうえで、重要な足掛かりとなります。

自然災害と異常気象は、人道的なストレスをさらに大きくしています。その一方で、災害リスク削減に投資すれば、人命を救い、金銭を節約することができます。私は1月、1,000万人が生き延びるために食料援助を必要としているエチオピアで、エルニーニョ現象のすさまじい影響を目の当たりにしました。この現象の影響は、アフリカとラテンアメリカの広い地域で生じています。アジア太平洋の一部では、気候変動が生死に関わる脅威となり、数百万人が避難を余儀なくされるおそれがあります。自然災害と気候変動に関する円卓会議にも、最高レベルでの参加をお願いしたいと思います。

リスクと脆弱性が最も高いあらゆる場所で、私たちは人々のレジリエンスを高め、現地と国内の能力を強化しなければなりません。国際援助関係機関は、人道ニーズを満たし、リスクと脆弱性を削減するために、活動のやり方を変えなければなりません。人道・開発機関は縦割り思考を脱し、もっと連携を深めなければなりません。私たちは、多年度計画の策定、ニーズの評価と成果の監視、さらには、各国のシステムの入れ替えではなく、その補強により、危機のサイクル全体を通じ、比較優位に基づき集団的な成果を達成できるよう努めなければなりません。そして私たちは、女性と女児が私たちの取り組みすべてに参加し、その利益を受けられることを確実にしなければなりません。

このことはすなわち、国連とその機関、基金、計画を含め、私たちが作業の進め方を変えなければならないことを意味します。変革には困難が伴いますが、世界人道サミットは私たちに、人道に資するためのよりよい方法を推進する機会を与えてくれます。こうした理由からも、私たちは支援の提供から必要性の解消への移行に関する円卓会議と、ジェンダーの平等に関する円卓会議を通じて最高レベルで連携し、人々によりよい未来の希望を与えなければならないのです。

私たちが人々やコミュニティ、各国に最も大きな影響を及ぼせる投資を約束しない限り、これらはいずれも実現できません。人道への投資に関する円卓会議への皆様の参加が極めて重要な理由も、ここにあります。

私たちは先週、「人道への課題」への取り組みを実行に移すために必要な変革のいくつかを反映する「コア・コミットメント(中心的なコミットメント)」案を回付しました。この文書は、皆様の多くの支援を得ながら、各円卓会議で活用できる資料として作成されたものです。

皆様は今後数週間、「コア・コミットメント」について話し合うとともに、ブリーフィング・セッションその他のアウトリーチ活動を通じ、円卓会議に関するアイデアをさらに交換する機会に恵まれます。私たちはこうした議論の結果に基づき、4月18日までに「コア・コミットメント」の最終案を策定する予定です。

私は3つの点を強調したいと思います。

第1に、これらコミットメントはいずれも任意であり、拘束力はありません。私は皆様に対し、これら「コア・コミットメント」を支持するとともに、人々の生活に具体的な変化をもたらせる個別、共同のコミットメントを申し出ることにより、リーダーシップと大胆な思考を示していただくようお願いします。

第2に、世界人道サミットは終着点ではありません。むしろそれは、紛争や災害の影響を受け、私たちを頼りにしている人々の恐ろしい苦痛に終止符を打つことを目的とした、国際的連帯の新時代の出発点とせねばなりません。

第3に、サミットと関連づけられているメッセージや行動の妥当性は、サミット閉幕後も長く続きます。サミットを成功させれば、2030アジェンダだけでなく、その他多くの分野で対応を進めるうえでも、質的に大きな弾みがつくことになります。

サミットの成果文書には、イスタンブールで発表される議長サマリーと、そのしばらく後に発表される「行動へのコミットメント」が含まれます。これら文書は「人道への課題」とともに、行動とフォローアップに向けた枠組みの重要な要素となります。

フォローアップは6月の経済社会理事会(ECOSOC)人道問題セグメントでスタートします。私は9月に、サミットの成果と今後さらに可能な措置を提示する報告書を総会に提出し、皆様の検討を仰ぐことになります。

加盟国はその時点で、政府間の議論と交渉を通じ、報告書にある提言の一部または全部の採用を決定できます。毎年秋に採択される総会人道決議は、これら重要な議論の多くを進めるきっかけとなることでしょう。

私たちは昨年、「仙台防災枠組」、「アディスアベバ行動目標」、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、そして「パリ気候協定」という形で、グローバルな連帯に向けた大きな勝利を収めることができました。

私たちの目標を達成し、私たちの約束を果たし、国連憲章の理想を実現するためには、今すぐに行動を起こすことが必要です。

世界人道サミットは、変革に向けた勢いをつけ、差し迫った危機に直面する1億2,500万の人々に連帯と支援のメッセージを送るためのまたとない機会です。

世界人道サミットを私たちに共通の人道に向けた歴史的な一歩としようではありませんか。

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