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コフィー・アナン国連事務総長 経団連主催による財界人との昼食会でのあいさつ

2004年02月24日

本日は、日本の卓越した財界人の皆様とお会いできたことを嬉しく、また光栄に存じます。私にとって、この昼食会は皆様方と意見や経験を交換できる極めて貴重な機会です。

イラク戦争やこれに関連する出来事をはじめとして、昨年が特に困難な年であったということについては、皆様もご異存がないことかと思います。

昨年の出来事は、私たちが直面する挑戦の性質、そして、多国間システムがこれに対処できる能力について、より幅広い数多くの疑問を生じさせました。

これによって浮かび上がったのは、21世紀のグローバルな安全保障に対する脅威に立ち向かう上で、国連をできる限り効果的な手段にする緊急の必要性でした。国際テロとの闘いや大量破壊兵器の脅威への対処にせよ、貧困と飢餓の削減、感染症の蔓延の阻止にせよ、あるいはジェノサイドの防止や現在私たちが取り組んでいる様な紛争後の国家再建にせよ、私たちは前進するための実際的でより効果的な方法を早急に見出す必要性に迫られているのです。

これは今後の脅威や挑戦に立ち向かう新たな能力を構築するだけでなく、私たちの既存の能力を再評価することも意味します。

こうした理由から、私は昨年11月、私たちが直面する脅威や難問を検討し、現行の政策、プロセスおよび制度を評価し、主として平和と安全の分野における変革を目指した大胆な提言を行うためのハイレベル・パネルを設置しました。

昨年、政治指導者だけでなく、私たちは皆、イラクのことで時間とエネルギーを費しました。これほど多くの企業家がその地政学について話し合い、景気循環の中でイラクについて議論しているのを目にしたことはありません。今年は国際議論を再び調和する最大限の努力を払わなければなりません。そしてテロや大量破壊兵器だけに焦点を合わせるのではなく、私たちの同胞である数百万人の男女をいかにして貧困、飢餓、そして致命的な病から守るかに再び関心を集中させなければなりません。一部の人々に対する脅威は全員に対する脅威であり、それに見合った対応が必要であることを私たちは理解すべきなのです。

世界のほとんどの人々にとって、もっとも緊急かつ実質的な課題は、自分たちとその家族にとっての切実な願いと直結しています。それはすなわち、教育と医療が受けられ、十分な食糧ときれいな飲み水が得られるような健康的な環境で人間らしい生活を送るための課題です。これらの課題は、世界各国の政府が21世紀によりよい世界を構築するための設計図として2000年に合意した「ミレニアム開発目標(MDGs)」で明らかにされています。

2003年の出来事は、これら課題への対応から世界の指導者たちの関心をそらしてしまいました。私たちは今年、ミレニアム開発目標を実現させるために必要なモメンタムを再び作り出します。そして経済や社会開発に焦点を当てて行きます。

この関連で、企業には極めて重要な役割があります。私が「グローバル・コンパクト」を提案し、経済界の指導者の皆さんに人権、労働、環境の分野での普遍的原則を受け入れていただくよう呼びかけてから、もう5年が経ちました。

私がグローバル・コンパクトを提案したのは、グローバル市場が共有の価値と責任ある実践に根ざしたものとならなければ、世界経済は脆弱で、反発を招きやすいものになるだろうとの懸念を抱いていたからです。もう一つ付け加えて言うならば、この提案はシアトルそして世界中で起きた反グローバル化のデモよりも前に提示されたものです。

この理由から、私は企業に対し、国連と協力して社会的な支柱を構築、強化することを求めたのです。私は財界の方々に、啓発された利益追求を実践するための手段としてグローバル・コンパクトに参加し、より安定的で包括的な市場の実現に貢献するよう呼びかけました。

喜ばしいことに、グローバル・コンパクトへの参加企業は現在、日本を含めて、70カ国以上で活動する1,200社以上に及んでいます。

日本でもグローバル・コンパクトが花開いていることは、喜ばしい限りです。日本企業はすでに、幅広い産業およびセクターで世界経済の指導的地位を確立しているばかりでなく、企業市民という分野でもますますリーダーシップを発揮しつつあります。

全世界で、日本企業は革新性に富み、極めて高品質の製品を生産することで知られています。そのことと普遍的価値への真摯なコミットメントとを結びつければ、日本企業はいわゆる「責任ある競争力」からさらに大きな利益を得ることになるでしょう。

そして喜ばしいことに、グローバル・コンパクトはその達成に向けた絶好の場を提供しているのです。

グローバル・コンパクトの基本的な使命は、私が5年前に提案したものとまったく変わりありません。それは、

  • 各国政府によって古くから認識されているものの、まだ十分には行きわたっていない普遍的な原則(人権、労働基準、そして環境の分野)を受け入れることにより、グローバルな倫理的枠組みを構築すること
  • 今日、社会が直面する幅広い課題を解決する上で、企業がどのようにしてその一翼を担えるかを示すこと
  • 実際的なプロジェクトとイニシアチブを明らかにし、これに重点を置くこと
  • そして、社会のその他あらゆるアクターとどのように協力できるかを学ぶことにあります。

多くの多国籍企業を抱える日本にとって、安定的で包括的なグローバル経済が極めて重要であることは明白です。

2001年1月、日本企業としては初めて、キッコーマン株式会社がグローバル・コンパクトに加わりました。今日、日本の参加企業は14社に上っています。これは心強い限りですが、まだできることはたくさんあると思います。

私は本日、すべての日本企業と企業グループに対し、グローバル・コンパクトの原則への明確なコミットメントを示すことによって、グローバル・コンパクトを支持していただくよう呼びかけたいと思います。ニューヨークでの大規模なグローバル・コンパクト・サミットを今夏に控え、私はさらに多くの日本企業に参加いただけることを期待しています。このサミットにはコンパクトに参加されている取締役会長や経営最高責任者(CEO)を招き、この五年で何が得られ、コンパクトをどう改善していけるかを検討します。

私は日本経団連がその大きな影響力を行使して、会員企業全社に参加を呼びかけていただけるものと確信しています。

日本企業の多くはすでに、グローバル・リポーティング・イニシアチブ(GRI)を活用しています。このことはさらに大きなはずみとなるはずです。なぜなら、グローバル・コンパクトとGRIは車の両輪の役割を果たすからです。コンパクトが責任ある企業市民のための価値観に基づくプラットフォームであるとすれば、GRIは人々に対する公の説明責任を果たす上でのモデルとなります。

日本企業やその他のステークホルダーの積極的なご参加により、グローバル・コンパクトが企業市民を発展させる有益な場を提供するとともに、「より持続可能な、かつ、包括的な世界経済」を生みだす手助けとなり、その結果、グローバリゼーションの恩恵が世界の貧困層を含め、あらゆる人々に行きわたるものと、私は楽観しています。

最後に2003年に創設されたグローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークについて一言言わせて下さい。このネットワークは私たちのパートナーシップをさらに前進させる上で、重要な役割を果たすことになるでしょう。ネットワークは、財界の方々のニーズに応えるとともに、日本国内、国外の企業およびその他の企業責任集団とのパートナーシップを構築することを具体的に目指すアプローチを作り出すことになります。

経験の共有を通じ、ネットワークはグローバル・コンパクトの諸原則を前進させる一方で、日本の企業社会独特の価値体系と風土にこれを適切な形で組み込んでゆくことでしょう。

ご清聴ありがとうございました

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