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人権理事会ハイレベル・パネル協議での事務総長挨拶 「持続可能な開発のための2030アジェンダと人権」 (ジュネーブ、2016年2月29日)

プレスリリース 16-022-J 2016年03月08日

©UN Photo/Jean-Marc Ferré

ここジュネーブの人権理事会に再び出席できることを嬉しく思います。

人権理事会は、人権の保護に欠かすことのできない機関です。皆様の機構は、被害者や人権擁護者に場所と手段と発言力を与えています。その報告書は、多くの国々で、また、多くの状況で生じている人権侵害に、世界の関心を引きつけています。

皆様のプログラムが拡大を続けていることは、この10年間、皆様の活動の権威が増してきたことの証と言えます。

人権理事会は、他の機関が取り組みに難色を示してきた困難な問題に対処する柔軟性と勇気を示しました。

皆様の支援とコミットメントに感謝します。

各国代表の方々、
皆様、

つながりを強める私たちの世界で、平和と安全、開発、人権という国連の3本柱の間の関連性が、これほど明白となったことも、重要な意味を持ったこともありません。

長期的な平和と安全は、すべての人に人権が認められない限り、存在しえません。平和と安全がなければ、持続可能な開発は不可能です。そして人権は、私たち人間に共通の根底部分をなすものです。

こうした根本的な連関に鑑み、国連は人権の幅広いアドボカシーと擁護を展開しています。

私は事務総長就任以来、人々が投票を通じてその声を政治に反映させる権利をはじめ、民主的実践の必要性を強調してきました。リーダーは国民の声に耳を傾けることによって、正当性を獲得するからです。

私は民族や宗教、障害、カーストその他の区別にかかわらず、すべての人の権利を繰り返し、はっきりと主張してきました。多くの国々では、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャル、インターセックスの人々が残虐な、そして時には死に至る暴力を受けています。私は、性的指向と性同一性に関する2件の歴史的決議を採択した人権理事会に賛辞を送ります。そして皆様に対し、この問題に関する立場を崩さないよう強く訴えます。

私は国際刑事裁判所(ICC)、各種法廷、特別裁判所その他の機関を通じたものを含め、正義の重要性を強調してきました。人権理事会の特別手続きや調査委員会、調査ミッションは、不処罰を終わらせるために不可欠な手段です。しかし、一貫したフォローアップを確保するためには、これよりもはるかに多くの取り組みが必要です。

私は「UNiTE(団結しよう、女性への暴力を終わらせるために)」キャンペーンをはじめ、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントを擁護してきました。イラクからシリア、さらにはナイジェリアに至るまで、暴力的過激主義の特徴となっている女性に対する恐ろしい権利侵害については、その責任を追及しなければなりません。

昨年12月、第2次世界大戦中に大きな苦痛を受けたいわゆる「従軍慰安婦」の問題につき、日韓の合意が成立したことは、どれほど年月が経とうとも、被害者の苦痛に取り組む必要性を如実に物語っています。私は、国連の人権メカニズムの勧告に沿った真摯な合意の履行が、このような傷を癒すことに役立つものと期待しています。

国連の3つの柱を統合し、人権を羅針盤として用いることは、私にとって優先課題のひとつとなってきました。

「Human Rights Up Front(人権を最優先に)」イニシアティブには、権利の侵害を来るべき危機の初期兆候として捉える価値を認識することにより、この課題に取り組む狙いがあります。

Human Rights Up Frontは、国連憲章に謳われた予防と保護の責任に関する国連の考え方と対応を変えるものです。

紛争が多発し、人道的ニーズが急増している今この時こそ、私たちは危機の予防と人々の保護にさらに一層取り組まねばなりません。5月23日と24日にイスタンブールで開催される国連史上初の「世界人道サミット」では、そのための呼びかけも重要項目のひとつとなります。このサミットは、人間の尊厳と私たちに共通の人道性を堅持するための解決策やパートナーシップを共に考える機会です。

持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、人権にとって重要な前進といえます。

2030アジェンダは、人権には開発の権利が含まれること、そして、社会の強さとは、それぞれの社会で最も脆弱な人が身を置く立場の強さに比例するものであることを、私たちに気づかせてくれます。17項目からなる「持続可能な開発目標(SDGs)」の統合的、不可分的、普遍的性質は、普遍的な人権に深く根差すものです。

“誰も置き去りにしない”という2030アジェンダの約束は、女性や少数者、先住民その他数百万の人々を虐げている構造的な不正をなくすことを意味します。

「最も大きな後れを取っている人々に手を差し伸べる」という公約は、社会的に最も弱い立場に置かれている人々、すなわち不平等と不正の被害者に対する支援から取り組みをスタートさせねばならないことを意味します。

その中には、紛争に巻き込まれた人々が多く含まれています。国家や非国家主体が全世界で、民間人を保護する原則と法律を守っていないからです。

目標16は、より安全で、より豊かな世界の基盤として、平和で包摂的な社会の推進を求めています。強靭かつ包摂的な制度を維持し、腐敗と闘い、法の支配に従うことが欠かせません。

最も大きな後れを取っている人々の中には、気候変動の影響を受ける数百万人が含まれていますが、中でも貧しく疎外された人々には、最も大きな影響が及んでいます。こうした人々にとっては、権利に基づくアプローチが解決策となりますが、このことは2030アジェンダにも盛り込まれています。

最も大きな後れを取っている人々には、移住者や難民、避難民、無国籍者も多く含まれています。壁を高くしたり、庇護基準を厳しくしたりすることで、膨大な数の人々が移動する理由に取り組むことはできません。こうした理由はしばしば、開発やガバナンスに関する問題の深刻化に根差しているからです。

加盟国は2030アジェンダで、移住者のプラスの貢献を歓迎し、人権が全面的に尊重されるような移住を確保することを公約しています。私たちは移住者や難民の役割について、もっと前向きに語る必要があります。

そして最後に、最も大きな後れを取っている人々の多くは、組織的かつ致死的な権利の拒絶を受けています。

朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)での組織的で広範な人権侵害は、調査委員会の報告書でも明るみに出されたほか、人権高等弁務官も昨年12月、安全保障理事会に対するブリーフィングでこの事実を明確にしています。

国連システムは2030アジェンダの精神に則り、日常的に人権を拒絶しているすべての国々の政府に働きかけ、こうした課題への取り組みを続けなければなりません。

2030アジェンダが私たちの開発活動の中心に人権を据えたことに鑑み、国連システムは、皆様の専門能力をSDGsの進捗状況審査にどう活用できるかを検討しなければなりません。

私は先週、武力紛争と人道ニーズの前線をいくつか訪問しました。アフリカの危機地帯でお会いした人々は、極めて脆弱な状況で暮らし、人道援助を必要としている全世界で数百万の人々のごく一部にすぎません。

私はこうした脆弱なコミュニティーで、様々な表情を次々と目にしました。そこには笑顔もあれば、不安で取り乱した表情もありました。長きにわたる苦闘を続けてやつれた顔もあれば、苦難の中でも若々しい輝きに満ちた顔もありました。

こうした顔の中には、私自身の家族の顔、そして朝鮮戦争を逃れた私の経験を思い出させるものもありました。私は個人的にも、そして事務総長として10年間、社会的弱者を擁護してきた人間としても、こうした人々に親しみを感じました。

私はとりわけ、こうした人々の顔に自由と豊かさ、そして正義を望む表情を見て取りました。

それは国連に対し、自分たちの苦難を和らげ、より良い未来の構築に協力することを期待する顔でした。

こうした人々の夢や期待を叶えるという大きな任務を考えるとき、私はいつも恐れ多い気持ちになります。

しかし、私には希望もあります。それは、心強い新たな開発アジェンダ、人権が持つ恒久的な力、そして人間の最高の精神が与えてくれた希望です。

私はさらに数カ月間、平和や正義、すべての人の尊厳を目指す人権の旅を皆様と共にすることを楽しみしています。

ありがとうございました。

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