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G8諸国首脳および政府に宛てた
アナン国連事務総長の書簡

プレスリリース 00/64 2000年07月12日

 まもなく開幕する沖縄サミットに、世界中の人々が強い関心と期待を寄せています。今回のサミットは、これまで以上の重要性をもつことになるでしょう。というのは、そのすぐあとに国連ミレニアム・サミットが予定されており、G8諸国並びに世界中の政府の首脳陣がニューヨークに集まり、21世紀の国連の役割について話し合うからです。

 ご存知のように、私は、国連総会の要請に基づき、ミレニアム総会とミレニアム・サミットで検討していただくために『われら人民』と題する報告書を提出しました。この報告書には、G8諸国が憂慮している問題点の多くも反映されていると思います。私たちは、この報告書の作成に当たって、とりわけG8各国の政府から助言をいただきました。

 私のミレニアム報告書の中でG8諸国の皆様に特に注目していただきたいのは、貧困国の債務免除の問題と、開発における情報技術(IT)の役割です。

 援助国は、ずいぶん前から、債務免除が不可欠であることに原則として合意しています。重債務貧困国(HIPC)を救済するイニシアチブが初めて国際通貨基金(IMF)と世界銀行によって導入されたのは、1996年にさかのぼります。

 しかし、これまでに債務の軽減が認められたのは5カ国にすぎません。しかも、そうした国々でも、債務の35%が免除されただけです。世界で最も貧しい地域であるアフリカでは、政府歳入の40%が合計およそ3,500億ドルにのぼる債務の利息の支払いに当てられています。それが、医療、教育をはじめとする重要な社会サービスを低下させているのです。

 ですから、G8諸国の皆様には、緊急行動を目指すうえで、私が報告書に記した以下のような債務免除促進案を是非ともご検討いただきたいと思います。

 

  • 援助国および国際的な金融機関は、HIPCからの貧困削減への明白な約束と引き換えに、すべてのHIPCの公的な債務を帳消しにする。
  • ナイジェリアなどの国が債務免除を申請することができるよう、HIPC救済策の該当要件を緩和する。
  • 大規模な戦闘や自然災害に苦しんでいる国の債務を帳消しにする。
  • 債務の返済は、外国為替利益の最大の率に固定する。
  • 現在、債務免除の進展を阻んでいる論争を打開するために、債権者と債務国の利益のバランスを図り、両者の関係により強固な秩序を導入する形で、債務仲裁プロセスを制度化する。

 

 私たちはみな、債務問題の解決が容易ではないことを認識しています。しかし、このような新しいイニシアチブを実行しなければ、私たちはいつまでも現在の難局を打開することができません。

 注目していただきたい第2の問題は、新しい情報技術(IT)の役割です。G8諸国の皆様が、来たる沖縄サミットで、公平かつ持続可能な開発を促進する上でのITの役割に注目するつもりでおられることを知っています。ITそれ自体が開発途上国の問題を解決できるわけではありませんが、医療や教育の向上、より透明性の高い統治、農業や産業の支援などにおいて、ITが大きな利益をもたらす可能性はますます顕著になっています。しかし、何より重要なのはアクセスです。ほとんどの人がITへのアクセスを持たない国は、新しい世界経済において十分な役割を果たすことができません。

 私たちがITの可能性を十分に認識しているならば、ITへのアクセスを持つ国と持たない国との溝に橋を架ける必要があります。そして、それが可能なのは、世界的なリーダーシップを取ることができる国、すなわち世界で最も豊かで、最も強力なG8諸国だけなのです。私は、皆様に対し、世界中の人がITにアクセスできるよう真剣に取り組み、そのために財政面でも大きな貢献をしてくださるよう要請いたします。

 最後に、もう1つお願いがあります。国連ミレニアム・サミットの準備と実施にできる限りのお力添えをいただきたいのです。この会議は、人類にとって、新しい世紀に直面する課題をじっくりと考え、国連――世界中の人々がこの課題に立ち向かう戦略を案出・実行することができる組織――を強化するまたとないチャンスです。この会議の成功は、G8諸国の構想力とリーダーシップにかかっています。

 私が報告書に記した目標はすでに広く支持されています。しかし、皆様の積極的な支援がなければ実現することができません。口先や身振りだけではなく、国連ミレニアム・サミットまでの2ヶ月間、世界的な合意の実現に向けて、皆様が時間とエネルギーを注ぎ、私が示した目標が達成できるよう支援していただきたいと強く希望いたします。

 皆様へ心より敬意を捧げます。

コフィー・A・アナン
国連事務総長