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2014年を締めくくる事務総長の記者会見 (ニューヨーク、2014年12月17日)

プレスリリース 14-088-J 2014年12月19日

皆様、ようこそお出でくださいました。年末に当たり、皆様にお目にかかれることを嬉しく思います。国連の活動に対する皆様の好意、協力、そして支援に感謝しています。本当にありがとうございます。

皆様、

私はちょうど、リマの気候変動会議から帰ってきたところなので、まず気候変動の話から始めたいと思います。

各国政府はリマで、私が今年9月に招集した気候サミットの成功を土台に、来年、パリで採択すべき有意義で普遍的な気候変動協定の基礎を築きました。

加盟国は、いくつかの点で前進を遂げました。

第一に、2月からジュネーブで行われる次回の交渉のたたき台となる素案に合意しました。

第二に、3月に提出すべき各国の自主的な行動計画、いわゆる約束草案(INDC)に盛り込むべき緩和その他の約束を明確化しました。

[第三に、]とりわけ「グリーン気候基金(GCF)」に当初動員額100億ドルを拠出することにより、信用と信頼を築き上げました。

そして第四に、低炭素社会への道筋によって生まれる豊富な機会を示すための行動アジェンダも前進させました。

これらの成果は全体として、パリ会議に向けた勢いを保つことになりました。資金その他の困難な問題については、さらに多くの作業が残っています。しかし、すべての政府は、企業や市民社会などとともに、排出量の増大を抑えねばならないことに同意しています。8年間、事務総長を務めている私は、8回の締約国会議(COP)を経験していますが、今回の会議は、私がこれまで出席した中でも、最も勇気づけられる会議となりました。

皆様、

私たちは今年、ミレニアム開発目標(MDGs)という大きな仕事を仕上げ、一連の持続可能な開発目標と、これを達成するために必要な資金を含め、新たなアジェンダに向けた基盤を整備するという点でも、前進を遂げました。

来年はアディスアベバ、ニューヨーク、パリで開催されるハイレベル会合が、持続可能な開発の新時代のあるべき姿を描く機会となります。皆様もご存じのとおり、7月には開発資金に関するハイレベル会議が予定されているほか、12月に向けた行程のちょうど半ばに当たる6月には、総会議長が気候変動に関するハイレベル会合を招集することになっています。そして第三に、私たちは9月、持続可能な開発に関する首脳級の特別会合を開きます。

今月上旬に発表した報告書『The Road to Dignity by 2030』で示唆したとおり、世界が生活を一変させ、地球を守るための歴史的な行動を起こす機は熟しているのです。

こうした成果の一方で、世界はこの1年間、不和や病気、混乱にも見舞われました。

平和活動や外交、人道援助の能力は限界に達しています。援助を必要とする人々は1億人、家を追われた人々は5,000万人をそれぞれ超え、戦後最悪の水準に達しました。

西アフリカでのエボラ出血熱の蔓延は、国際社会にかつてない課題を突きつけました。

国連はシステム全体として、初の緊急保健ミッションとなる「国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)を立ち上げました。

私は今夜、エボラの流行で最も大きな影響を受けているギニア、リベリア、マリ、シエラレオネの4カ国と、UNMEER本部があるガーナの訪問に出発します。よって、今回は5カ国の訪問となります。マーガレット・チャン世界保健機関(WHO)事務局長と、デビッド・ナバロ・エボラ担当特使も私に同行します。また、トニー・バンベリー特別代表もガーナから、この5か国歴訪に加わります。私は、自分の目で対応状況を確認し、影響を受けた人々との連帯を示すとともに、さらに本格的なグローバル対応を強く促したいと思っています。

エボラ対応要員は、勇気ある活動を展開しています。地域社会と各国政府も対策に本腰を入れています。アフリカ、そして全世界から、命を救うために多額の拠出金が集まっています。エボラ対応戦略は機能しており、状況は改善の兆しを見せています。

しかし、まだ手を緩めることはできません。たった1件でもエボラの症例があれば、リスクは残っています。私たちはこれをゼロにするよう、全力を尽くさなければなりません。

同時に、人材と資金も依然として不足しています。しかも、エボラの影響で食料価格が上昇を続け、子どもたちは学校に通えず、事業活動が窒息する状態が続いています。

皆様、

シリアでは今年、化学兵器の全廃が無事完了しましたが、激しい戦闘を経験してきた人々にとって、これはほとんど慰めになっていません。

南スーダンでは、国連の「門戸開放」政策で、数千人の命が救われましたが、10万人が避難している国連平和維持部隊の基地は、国内全土と同様、引き続き脆弱な状態に置かれています。

ナイジェリアとイラクでは、過激主義者の反乱が広がりました。

ウクライナでは膠着状態が続き、地域的、世界的な影響が懸念されます。

アフガニスタンとサヘルでは、情勢不安が続いています。

今年、戦闘が起きたガザ地区では、イスラエルとパレスチナのリーダーが、瀬戸際から一歩退き、緊張状態を和らげ、実現の可能性が遠のきつつある二国家共存の解決策を復活させる責任を負っています。

皆様、

2015年は、グローバルな行動の年としなければなりません。私は4つの必須課題を挙げたいと思います。

第一に、世界は新たな開発アジェンダを作り上げ、気候変動協定を確保するという強い意欲を保たなければなりません。

第二に、2015年は、私たちがシリアの悪夢を終わらせ、その他の憂慮すべき情勢の悪化を回避する年にしなければなりません。

第三に、私たちは過激主義のほか、少数者や移住者、特にイスラム教徒の排斥を訴える極右政党の台頭にも立ち向かう努力をさらに続けなければなりません。

第四に、私たちは国連自体を、新たなグローバル情勢に適応させる取り組みを続けます。

国連の活動の主な見直し作業の多くは、2015年に完了します。その中には先月、私が立ち上げた平和活動に関するパネルのほか、総会による平和構築の見直し、人道援助活動の資金調達、さらには女性と平和、安全に関する画期的な安全保障理事会決議1325の履行が含まれています。こうした評価は、私の任期中に追求されてきたその他の改革をさらに進める機会になります。

バンギからガザ、そしてダダーブ難民キャンプに至るまで、私は今年、行く先々で多くの苦難を目の当たりにしました。私は、生命の危険に直面している人々、自分自身と家族の生活改善のために苦闘している人々にも多くお会いしました。

国連創設70周年を来年に控え、私たちには、豊かさの共有と、すべての人のための持続可能な未来を求める人々の声に応える義務があるのです。

それでは、よいクリスマスをお過ごしください。そして、よいお年をお迎えください。

* *** *

気候サミット(9月23日)に先立ってニューヨークで行われた大規模なデモ「People’s Climate March」 には31万人を超える人々が参加した©UN Photo/Mark Garten
新たに国連ピース・メッセンジャーに任命された俳優のレオナルド・ディカプリオさん。気候サミットでは演説を行い、「気候変動はフィクションではなく、現実の喫緊の問題」だと警鐘を鳴らした©UN Photo/Mark Garten
事務総長は12月4日、報告書『The Road to Dignity by 2030』の先行版を総会に提出。すべての人にとって持続可能な開発の時代を実現するため、包摂的、機敏かつ協調的な行動を求めた。報告書は、人間と地球を中心に据え、人権に裏付けられた新たなグローバル・アジェンダ策定に向けた交渉の指針となる
西アフリカでのエボラ出血熱の蔓延は、国際社会にかつてない課題を突きつけた。国連はシステム全体として、初の緊急保健ミッションとなる「国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)を立ち上げ、対応に全力を挙げている©UN Photo/Martine Perret
エボラ対応要員による勇気ある行動、地域社会と各国政府による対策の本格化により状況は改善の兆しを見せつつあるものの、まだまだ手を緩めることはできない©UN Photo/Mark Garten
南スーダンでは、国連の「門戸開放」政策で、数千人の命が救われたが、10万人が避難している国連平和維持部隊の基地は、国内全土と同様、引き続き脆弱な状態に置かれている©UN Photo/JC McIwaine
ナイジェリアでは4月、女子生徒 200 人以上がイスラム過激派組織ボコ・ハラムに連れ去られる事件が発生。ラゴスでは、生徒の返還を求めるデモが行われた©UN Photo
8月に戦闘が起きたガザ地区。イスラエルとパレスチナのリーダーは、瀬戸際から一歩退き、緊張状態を和らげ、実現の可能性が遠のきつつある二国家共存の解決策を復活させる責任を負っている©UN Photo/Shareef Sarhan