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核兵器の人道的影響に関するウィーン会議に寄せる事務総長メッセージ(ウィーン、2014年12月8日)

プレスリリース 14-084-J 2014年12月11日

アンゲラ・ケイン軍縮担当上級代表が代読

第3回核兵器の人道的影響に関する会議でご挨拶できることを、嬉しく思います。

私は、幅広い出席者を集めたノルウェーとメキシコでの先駆的会議に続き、今回の会議でホスト国を務めていただいたオーストリア政府に敬意を表します。

この会議の取り組みは、人道的な配慮を核軍縮問題の前面に押し出し、市民社会と各国政府の双方に活力を与えるとともに、私たちに対し、核兵器が使用されれば、恐ろしい結末が待っていることを否応なしに認識させました。

核兵器を、世界的な緊張状態の高まりへの合理的な対応と考えたり、国家の威信の象徴とみなしたりする人々に対峙するうえで、この観点は欠かせません。それは、私たちが貧困や気候変動、過激主義、情勢を不安定化させる通常兵器の蓄積が提起する課題に対応できないでいる中で、私たちを相互に破壊する手段の現代化に資金を注ぎ込むことの愚かしさを強調することになるからです。

私たちが核の時代に突入してから、70年目を迎えようとしています。歴史は私たちに、核兵器が本来備えている危険性について、多くの教訓を与えてくれました。

核兵器の保有は、国際紛争の発生を防ぐどころか、紛争の危険度を高めます。軍を警戒態勢に置いても安全は得られず、逆に事故の可能性が高まります。核抑止の原則を標榜しても、核の拡散に対応することはできず、兵器を保持したいという欲求が高まるだけです。核兵器保有国が増えれば、世界の安定は確保されるどころか、根底から損なわれてしまいます。

この会議によって、核兵器使用のリスクと、私たちの緊急対応システムの根本的な能力の欠如に対する認識は高まりました。人道的な影響について理解が深まれば深まるほど、私たちが喫緊の課題として、軍縮を進めねばならないことが明らかになります。

核兵器のない世界の実現が望ましいことに対し、異議を唱える国はありません。それはそもそも、国連総会が最初に明らかにした目標でもあります。国際司法裁判所(ICJ)が、軍縮の義務はいかなる条約も超越する、慣習国際法上の要件であるという判断を下したのも、この目標が普遍的に受け入れられていたからです。

私は参加者全員が、核軍縮を達成するために有効な措置を追求するという新たな決意を胸に、この議場を後にすることを期待しています。

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潘基文(パン・ギムン)事務総長は2010年8月に広島と長崎を訪れ、被爆者との対話や資料館の視察などを通じ、「核兵器のない世界の実現」への想いをさらに強くした©UN Photo/Eskinder Debebe