本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

新たな気候誓約は地球温暖化予測の修正にはほとんど寄与せず、と国連の『排出ギャップ報告書2025』が警告(UN News 記事・日本語訳)

2025年11月12日

風力発電所によって生み出される電力は、石炭エネルギーへの依存度を軽減する© WMO/Pete Stevens

2025114日 - これまでに各国政府から発表されている新たな気候誓約は、今世紀中における世界の気温上昇をわずかに抑えるにとどまり、世界は気候リスクおよび被害の深刻な悪化への道を辿っています。

この警告は、来週ブラジルのベレンで開幕するCOP30気候会議に先立ち、国連環境計画(UNEP)が本日発表した最新の『排出ギャップ報告書2025』のメッセージです。

世界の指導者たちがパリ協定を採択してから10年近くが経過しました。パリ協定は、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃未満に、可能な限り1.5℃の閾値内に抑えることを目標としています。

気候行動計画

各国は、地球温暖化を悪化させる温室効果ガスの排出量を削減する取り組みの概要を、「自国が決定する貢献(NDC)」と呼ばれる行動計画を通じて示し、NDC5年ごとに提出します。

3回目の提出は2035年までの期間を対象としていますが、9月末までに新たなNDCを提出したのは、全体の3分の1を下回るわずか60カ国です。

最新の『排出ギャップ報告書2025』によると、NDCの完全な履行に基づいた場合の今世紀の地球温暖化予測は、2024年版の2.6-2.8℃に対し、現在は2.3-2.5℃となっています。

現在実施されている政策に基づいた場合の予測は、2024年版の3.1℃に対し、2.8℃となっています。

遠のく目標達成

しかしUNEPは、改善幅のうち0.1℃は方法論上の変更によるものであるとともに、米国がパリ協定を脱退したことでもう0.1℃が帳消しになるだろうと指摘しています。「つまり、新たなNDC自体は、ほとんど目立った変化をもたらしていないのです

結果として、各国はパリ協定で掲げられた目標の達成からは、依然として程遠い状況にあります。そのため、2℃目標を達成するためには、2035年の時点で2019年の水準と比べて35%1.5℃目標なら同55%の年間排出量の削減が必要です。

報告書によると、数十年単位の世界全体の平均気温の上昇は、少なくとも一時的には1.5℃を超える見込みであり、それを逆転させることは難しいでしょう

「国別気候計画はある程度の前進をもたらしているものの、十分な速度で進んでいるとは到底言えず、だからこそ私たちは、ますます狭まる時間枠とますます困難さを深める地政学的状況下において、前例のないレベルでの排出量削減を追求することが依然として必要なのです」インガー・アンダーセンUNEP事務局長は、このように述べました。

「しかしまだ、目標は辛うじて達成可能です。すでに実績のある解決策が存在しているのです」事務局長はそう付け加えました。

「すべきことは明白」

最新の『排出ギャップ報告書2025』は、2100年までに気温上昇を1.5℃に引き戻せる可能性を維持するために、より迅速でより大規模な排出量削減を呼びかけています。

「気温上昇がわずかでも回避されるごとに、最も貧しく脆弱な立場に置かれた人々が最も深刻な打撃を受けるものの、すべての国々が受ける損害、損失、健康影響の拡大が抑制されます。また、気候転換点やその他の不可逆な影響のリスクも軽減されます」UNEPはこう述べています。

UNEPは、国際社会がそれを選択するなら、気候行動を加速させることができると断言しています。

パリ協定の採択以降、予測される気温上昇は3℃~3.5℃範囲からは低下しています。さらに、風力や太陽光エネルギーなど、大幅な排出量削減を実現するテクノロジーも利用できるようになっています。

「安価な再生可能エネルギーの急速な成長から、メタン排出に対する取り組みに至るまで、私たちは何を行う必要があるのかはわかっています」アンダーセン事務局長はこう述べています。

「今こそ各国は、より迅速な経済成長、より良い人々の健康、より多くの雇用、エネルギー安全保障、そしてレジリエンス(強靭性)をもたらす野心的な気候行動とともに、全力を賭けて未来に投資する時です」 

グテーレス事務総長「今こそ、行動を加速させよう」

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、この報告書を「明確かつ妥協なきもの」と表現し、各国に対して、今世紀末までに1.5℃目標を達成するための取り組みを“強化し、加速させる”よう求めました。

「私たちのミッションはシンプルですが、簡単なことではありません。気温上昇のオーバーシュート(超過)を可能な限り小さく、かつ短くしなければなりません」事務総長は、ビデオメッセージの中でこのように述べました。

「そのためには、世界の排出量を直ちにピークアウトさせること、この10年でさらに大幅な排出量削減を達成すること、メタン排出を急速に削減すること、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速させること、そして炭素吸収源である森林と海洋を保護することが必要です」

事務総長は「現在、クリーンエネルギーは大半の市場において最も安価な電力源であり、かつ最も迅速に導入できる」と指摘し、各国の指導者に対し、再生可能エネルギーへのアクセス拡大に向けて「この機会を捉え、一刻も無駄にしない」よう呼びかけました。

1.5℃目標達成への道は狭いものの、まだ開かれてはいます。人と地球、そして私たちの共通の未来のために、その道を閉ざさぬよう、行動を加速させようではありませんか」事務総長はこのように語りました。

* *** *

原文(English)はこちらをご覧ください。