国連特別報告書日本語版発表記念シンポジウム「自然エネルギー:転換の好機をつかむ」に寄せるセルウィン・ハート国連事務総長特別顧問(気候行動および公正な移行担当)兼 事務次長補(気候行動チーム担当)ビデオ・メッセージ
プレスリリース 25-064-J 2025年10月06日
ご来賓の皆様、ご列席の皆様、
はじめに、自然エネルギー財団の皆様に対して、本イベントの開催、並びに新エネルギー時代への移行の加速に関する先般の国連事務総長の報告書へのご支持に、感謝を申し上げます。
パリ協定から10年が経過し、私たちは重要な局面に立っています。それは機会の時です。
化石燃料への依存から脱却する機会。
クリーンで手頃な価格のエネルギーを原動力とした、新たな産業、雇用、成長の波を解き放つ機会。
クリーンエネルギー革命は、もはや明日の約束ではありません。今日の現実なのです。
昨年、世界の再生可能エネルギーへの投資額は、化石燃料への投資額を8,000億ドル超上回りました。
再生可能エネルギーによる新規の電力の90%超は、今や化石燃料による電力よりも安価です。
10年足らずのうちに、電気自動車が新車販売台数に占める割合は、1%未満から昨年には20%超にまで急増しました。
10年前、1ギガワット分の太陽光発電の設置には、1週間近くかかりました。今ではわずか19時間です。
転換点は、すでに超えています。
これは、特に日本に当てはまることです。
再生可能エネルギーは、日本のエネルギー安全保障と経済競争力に多大な可能性をもたらします。
現在、日本の電源構成に占める非化石燃料の割合は、G7で最も低くなっています。
しかし、太陽光発電は2014年以降5倍に拡大し、日本は世界第4位の太陽光発電国になりました。
今こそ、その野心を他の技術にも広げるべき時です。例えば、風力が日本の電力に占める割合はわずか1%にとどまり、G7平均の11%を大きく下回ります。しかし、洋上風力だけでも、日本が現在消費している電力の最大50倍を発電できる可能性があります。この潜在能力を解き放ったら、エネルギー主権、エネルギー安全保障、産業におけるリーダーシップは強化されるでしょう。
経済的機会は明らかです。
日本は毎年、GDPの約3%を価格変動が激しくコストの高い化石燃料の輸入に費やしています。ガスも含め、新たな化石燃料インフラに投資し続けるのは、成功戦略ではありません。それは、さらなる依存と経済の不確実性への移行を意味します。
再生可能エネルギーを拡大させることは、資金を国内にとどめて国内市場で循環させ、成長、雇用、イノベーションを後押しすることにつながります。
皆様、
この新エネルギー時代の支柱となるのは、最新の送電網、先進的な蓄電設備、そして人工知能(AI)などのデジタル技術でしょう。日本のような国にとって、これらの部門は製造業、サプライチェーン、国際的な競争力において多大な機会を約束するものです。
友人の皆様、私たちはクリーンエネルギー時代の入り口にいます。しかしそれは、自然に訪れるものではありません。大胆なリーダーシップ、スマートな政策、団結した行動が必要なのです。
今こそ、行動を起こす時です。
クリーンエネルギー時代の到来を傍観するだけの世代ではなく、それを築く世代となろうではありませんか。
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(2025年10月3日、気候変動イニシアティブ・自然エネルギー財団による共催)