SDGs は過去10年間で何百万もの人々の生活を向上させたが、前進は依然として不十分 ― 国連報告書が指摘(2025年7月14日付プレスリリース・日本語訳)
2025年07月18日

残された5年間にSDGsを成功に導くには 国際協力と持続的な投資が不可欠
ニューヨーク、7月14日 — 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択から10年が経過し、国連は本日、10回目の年次進捗報告となる『持続可能な開発目標(SDGs)報告2025』を発表しました。報告書は厳しい評価を下すとともに、行動を起こすよう強く呼びかけています。
保健、教育、エネルギー、デジタル接続性で得られた成果によって何百万もの人々の生活が向上したものの、2030年までにSDGsを達成するためには、変化のペースは依然として不十分です。入手可能な最新のデータによると、全ターゲットのうち、順調に進んでいるまたはある程度前進しているものは35%にすぎない一方、半数近くは進捗があまりにも遅く、18%は後退しています。
「私たちは、開発における緊急事態に直面しています。しかしこの報告書は、単に今日の状況を捉えたものではなく、前進に向けた道を指し示す羅針盤でもあるのです。報告書はSDGsがまだ達成可能であることを示しています。ただしそれは、私たちが緊急性、団結、揺るぎない決意と共に行動した場合に限られます」アントニオ・グテーレス国連事務総長は、このように述べています。
逆境の中での前進
グローバル課題が連鎖的に発生している中でも、報告書は下記のような注目すべき世界的な成果も確認しています。
- 2010年以降、HIVの新規感染は40%近く減少した。
- 2000年以降、マラリアの予防によって22億件の感染が回避され、1,270万人の命が救われた。
- 現在、社会的保護は世界人口の半数超に提供されており、10年前と比べて大幅に拡大している。
- 2015年以降、新たに1億1,000万人の子どもや若者たちが学校に通えるようになった。
- 児童婚は減少傾向にあり、世界中でより多くの女児が教育を受け続け、より多くの女性が議会に参加している。
- 2023年には、世界人口の92%が電気にアクセスできるようになった。
- インターネット利用率は、2015年の40%から2024年には68%に急増し、教育、雇用、市民参加の機会が開かれた。
- 保全の取り組みによって、重要な生態系の保護が2倍に拡大し、グローバルな生物多様性のレジリエンス(強靱性)に寄与している。
厳しい現実と連鎖的に存在する多様なリスク
報告書は同時に、持続可能な開発の前進を妨げ続けている課題に対して、注意を喚起しています。
- 8億人超が、依然として極度の貧困の中で生活している。
- 何十億もの人々が、依然として安全な飲料水、衛生施設、手洗い設備にアクセスできていない。
- 気候変動により、2024年の気温は産業革命以前の水準と比べて1.55℃上昇し、観測史上最も暑い年となった。
- 2024年には紛争で5万人近くが死亡し、同年末までに1億2,000万人超が避難を余儀なくされた。
- 2023年に、低・中所得国は1兆4,000億米ドルという記録的な債務返済コストに直面した。
加速に向けたロードマップ
報告書は、取り組みの強化が変革的な影響を生み出し得る、6つの優先分野において行動を呼びかけています。その分野とは、食料システム、エネルギーへのアクセス、デジタル・トランスフォーメーション、教育、雇用と社会的保護、気候行動と生物多様性対策です。
また、各国政府やパートナーに対し、2024年の国連世界データフォーラムで採択されたロードマップである「メデジン行動枠組み」を実施し、迅速な政策立案に不可欠なデータシステムを強化するよう求めています。
成功事例は、SDGsは達成可能だと示している
さまざまな目標にわたり大幅な前進を遂げた多くの国々での意義ある成果は、世界平均で見ると影に隠れてしまうかもしれません。例えば、過去10年間に45カ国において誰もが電気にアクセスできるようになり、2024年末までに54カ国において少なくとも1種類の「顧みられない熱帯病(NTDs)」が根絶されました。こうした国レベル・地方レベルの成功は、健全な政策、強力な制度、包摂的なパートナーシップによって後押しされたものであり、前進の加速が可能なだけでなく、すでに現実に起こっていることをも証明しています。
2030年までの最後の5年間は、SDGsの約束を実現する機会です。2030アジェンダは願い事ではなく、譲れないものなのです。
「今は絶望している時ではなく、断固とした行動を起こす時です。私たちには、変革を推進する知識、ツール、パートナーシップがあります。私たちが今必要としているのは、緊急のマルチラテラリズム(多国間主義)の構築、つまり共有の責任と持続的な投資を改めて約束することです」李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長は、このように語りました。
その他の重要な事実と統計
前進
- 2012年から2024年にかけて、5歳未満児の発育阻害の有病率は、4%から23.2%に減少した。
- 2000年から2019年にかけて健康寿命は5年超延びたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってこうした平均寿命の延びが一部反転し、8歳短くなった。
- 世界の妊産婦死亡率は、2015年の出生10万人あたり228人から2023年には197人に減少した。5歳未満児の死亡率は、2023年には出生1,000人あたり37人となり、2015年の44人から16%減少した。
- 2024年末までに、54カ国において少なくとも1種類の「顧みられない熱帯病」が根絶された。
- 2019年から2024年にかけて、差別的な法律の撤廃やジェンダー平等の枠組みの確立に向けた99の前向きな法改正が行われた。
- 2025年1月1日現在、国会議員に占める女性の割合は2%であり、2015年から4.9ポイント上昇した。
- 再生可能エネルギーは、現在最も急速に成長しているエネルギー源であり、2025年には石炭をしのぐ主要電力源となる見通しである。
- 5Gのモバイル・ブロードバンドは、現在世界人口の51%に利用されている。
後退
- 取り組みを大幅に加速させなければ、2030年までに世界人口の9%が依然として新しい国際貧困ラインを下回る極度の貧困の中で暮らすことになる。
- 2023年には、世界で11人に1人近くが飢餓に直面した。
- 2023年には、2億7,200万人の子どもや若者たちが依然として学校に通えなかった。
- 女性が行っている無給の家事やケア労働は、男性の5倍である。
- 2024年には、22億人が安全に管理された飲料水に不足し、34億人が安全に管理された衛生施設なしで生活し、17億人が自宅で基本的な手洗い設備を利用できなかった。
- 2024年半ばまでに、世界の難民の数は3,780万人へと急増した。
- 世界では、11億2,000万人がスラム街やインフォーマルな居住地に暮らしており、基本的サービスを受けられていない。
- 2024年には、それまで5年連続で増加していた政府開発援助が1%減少し、2025年にかけてさらに削減される見通しである。
詳細については、https://unstats.un.org/sdgs/report/2025をご覧ください。
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原文(English)はこちらをご覧ください。