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原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告書:大人と子どもの被ばく後リスクに違い

プレスリリース 13-076-J 2013年10月28日

*以下は、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書発表に関するプレスリリースの日本語訳です

ウィーン、2013年10月25日(UN Information Service) – 「同じ電離放射線源から受けた放射線量は、子どもと大人で異なる影響を及ぼしかねないため、子どもにとっての被ばく後リスクをより正確に予測するためには、この2つを分けて考えるべきである」。10月25日にニューヨークの国連本部で発表された報告書『Effects of radiation exposure of children(子どもに対する放射線被ばくの影響)』は、このように強調しています。この報告書は、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が(2011年以来)2年がかりで作成したもので、UNSCEAR第60会期報告書の一部として、国連総会に提出されました。

「身体構造的、生理学的な違いから、放射線被ばくは子どもと大人に異なる影響を及ぼします」。子どもに対する放射線被ばくの影響に関するUNSCEAR報告書専門家グループのフレッド・メトラー議長は、報告書の提出にあたってこのように述べました。そして、子どもが疫学調査で原則的に大人と同じように評価を受け、子どもに対する放射線の影響の全体像が把握しにくくなっている現状を考えれば、今回の報告書は国際的な医療・科学関係者にとって貴重な資料になるという見解を示しました。

報告書はいくつかの重要な問題点を指摘しています。例えば、被ばく線量が同じでも、各種の腫瘍ができる可能性は大人よりも乳児や子どものほうが高くなります。概して、このリスクは被ばく直後に現れるとは限らず、子どもが成長してから現れることもあります。委員会は報告書で計23種類のがんについて検討を加えていますが、その中には、原発事故や一部の医療処置の放射線影響の評価への適合性が高いものも含まれています。この調査で、子どもは白血病、甲状腺がん、脳腫瘍、乳がんを含む各種腫瘍のうち25%につき、大人よりも発症可能性が高くなっていることが判明しました。状況によっては、このリスクが大幅に高くなるおそれもあります。一方、大腸がんなど、がんの15%程度については、子どもと大人の放射性感受性が等しく、肺がんなど10%のがんについては、子どもの感受性が大人よりも低いことも明らかになりました。食道がんなど20%のがんについては、何らかの結論を下せるようなデータが得られておらず、前立腺がん、直腸がん、子宮がん、ホジキン病など30%のがんについては、どの年齢層についても、被ばくとリスクの間に関連性はほとんど、またはまったく見られませんでした。

極めて高い線量を受けた後に生じかねない組織への影響に関し、委員会は発がん現象と併せて考えた場合、子どもの被ばくが大人の被ばくよりも大きなリスクを提起する事例(脳への影響、白内障や甲状腺結節のリスクなど)があったと結論づけました。その他、大人と子どものリスクがほぼ同じと見られる事例(神経内分泌系や腎臓への影響など)も確認されたほか、子どもの組織のほうが抵抗力に勝る事例(肺、髄質、卵巣)もわずかながら見られました。

「幼少期の放射線被ばくのリスクと影響を考える場合、大人と同じような一般化を行うことは勧められません」。メトラー議長はこのように述べ、「どのような被ばくがどのような状況で起こったかが重要な役割を演じる」と付け加えました。

報告書はまた、幼少期の原爆による被爆者の子孫を含め、親の幼少期における放射線被ばくが子孫に遺伝性の影響を及ぼす可能性は、ヒトについては明確に認められなかったとも結論づけています。

さらに、健康への影響は多くの物理的要因によっても左右されることが指摘されました。事実、内部被ばくに関しては、環境中の放射線物質の分布が同じ状態で被ばくがあっても、子どもと大人で受ける線量に違いが出てきます。例えば、子どもは大人よりも牛乳を多く摂取するため、環境中の放射性ヨウ素から受ける線量が高くなりかねません。

同様に、乳児と子どもの身体は細く、臓器を覆う組織も少ないため、同じ被ばくがあっても、内臓が受ける線量は大人よりも高くなります。加えて、年齢によって新陳代謝と生理機能が違うことも、各臓器における放射線核種濃度に影響を与えるため、摂取量が同じでも、受ける線量は臓器によって異なることになります。

技術的な設定を適正に調節しない場合には、医療被ばくのような状況においても、乳児と子どもは大人よりもはるかに多くの線量を受けることになりかねません。

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さらに詳しくは、下記にお問い合わせください。

Jaya Mohan

Communications, UNSCEAR

電話:(+43-1) 26060-4122

携帯:(+43-699) 1459-4122

メールアドレス: jaya.mohan@unscear.org

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編集者向け注記:UNSCEAR第60会期報告書 は2013年10月25日(金)の午後、国連総会に提出されました。この報告書は、下記の2つのテーマに関する科学研究結果をまとめたものです。

  1. 子どもに対する放射線被ばくの影響(UNSCEARウェブサイトwww.unscear.orgで閲覧可能)
  2. 2011年の東日本大震災を受けた原発事故による放射線被ばくの水準と影響(科学研究結果を裏づける詳細な学術的附属書は今後公表予定)

1955年に設立された原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、電離放射線源および人体と環境へのその影響を幅広く検討する任務を担っています。その評価結果は、国連機関や各国政府が電離放射線からの保護に関する基準とプログラムを策定する際の科学的根拠を提供しています。ただし、原子力安全や緊急時計画の問題の検討や評価は行っていません。ウィーンに設置された事務局は、国連環境計画(UNEP)と機能的に連携し、年次会合の開催や、委員会が精査すべき文書の作成管理を行っています。

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