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低成長の長期化が大きく立ちはだかり、持続可能な開発の前進を 阻害するおそれ — 国連の主要な経済報告書が警告(2024年1月4日付 国連経済社会局プレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 24-002-J 2024年01月12日

© IMF/Yam G-Jun

世界貿易の鈍化、高い借入コスト、公的債務の増加、継続的な低投資、
地政学的緊張の高まりによって、世界の成長が危ぶまれている

ニューヨーク、14 世界経済の成長率は2023年の推計2.7%から2024年には2.4%に鈍化する見通しであり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前の成長率である3.0%を下回る見込みだと、本日発表された国連の『世界経済状況・予測2024(World Economic Situation and Prospects (WESP) 2024)』報告書は指摘しています。この最新の予測は、2023年の世界経済のパフォーマンスが予想を上回ったことを受けて発表されたものです。しかし、昨年のGDP成長率が予想を上回ったことで、短期的なリスクや構造的な脆弱性が覆い隠される格好となりました。

この国連の主要な経済報告書は、当面の経済見通しが厳しいものであることを示しています。継続的な高金利、紛争のさらなる激化、国際貿易の低迷、気候関連災害の増加が、世界の成長にとって大きな課題となっています。

金融引き締めと借入コスト上昇の長期化見通しが、負債を抱えた世界経済にとって強い逆風となる中で、成長を回復させ、気候変動と闘い、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた前進を加速させるための、さらなる投資が必要になっています。

「2024年は、この泥沼から抜け出す年にしなければなりません。大規模かつ大胆な投資を実現することで、私たちは持続可能な開発と気候行動を推進し、世界経済をすべての人々にとってより力強い成長に向けた軌道に乗せることができるのです。私たちは、持続可能な開発と気候行動への投資のために、少なくとも年間5,000億ドルの無理のない長期融資を行う『SDG刺激策』に向けた昨年の前進を足掛かりとしていかなければなりません」アントニオ・グテーレス国連事務総長は、このように述べました。

先進国・開発途上国ともに低成長

高金利、個人消費の鈍化、労働市場の低迷を受けて、米国をはじめとするいくつかの主要先進国の経済成長は、2024年に減速する見通しです。多くの開発途上国、特に東アジア、西アジア、ラテンアメリカ・カリブ海諸国の短期的な成長見通しも、金融引き締め、財政余地の縮小、外需の低迷によって悪化しています。脆弱な低所得国は、収支の逼迫度や債務の持続可能性リスクの増大に直面しています。とりわけ小島嶼開発途上国の経済見通しは、重い債務負担、高金利、気候関連の脆弱性の増大によって制約を受けることが予想されるため、これまでに得たSDGsの前進が阻害され、場合によっては逆行するおそれもあります。

インフレ率は低化傾向だが、労働市場の回復状況は依然としてばらつきが残る

世界のインフレ率はさらに低下し、2023年の推計5.7%から2024年には3.9%となる見込みです。一方で、物価圧力は多くの国で依然として高まっており、地政学的紛争リスクがさらに高まれば、インフレ率が再び上昇するおそれがあります。

報告書によると、2024年のインフレ率は、開発途上国の約4分の1で年率10%を超える見通しです。2021年1月以降、開発途上国の累積の消費者物価上昇率は21.1%に達し、COVID-19からの復興に伴う経済的利益が大きく損なわれました。供給サイドの混乱、紛争、異常気象の中、多くの開発途上国で地域の食料価格のインフレが高止まりし、最も貧しい世帯に不当に大きな影響を及ぼしています。

「継続的な高インフレが貧困撲滅に向けた前進をさらに後退させ、特に後発開発途上国に深刻な影響を及ぼしています。脆弱な国々が持続可能かつ包摂的な成長軌道に向けて加速するのを支援するために、グローバル協力と多国間貿易システムを強化し、開発金融を改革し、債務問題に取り組み、気候変動対策資金を拡大することが絶対に不可欠です」李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長は、このように述べました。

報告書によると、世界の労働市場では、パンデミック危機からの復興にばらつきが見られます。先進国では、成長こそ鈍化しているものの、労働市場はレジリエンス(強靱性)を維持しています。一方で、多くの開発途上国、特に西アジアとアフリカにおいては、失業率などの主要な雇用指標がいまだにパンデミック前の水準には戻っていません。世界では男女の雇用格差が依然として大きく、男女間の賃金格差が根強く残っているばかりか、職業によっては拡大さえしています。

成長を刺激し、グリーン移行を推進するため、国際協力の強化が必要

世界的な金融引き締めが続く際は、各国政府は自滅的な財政再建を避け、成長を刺激するための財政支援を拡大させる必要があります。各国の中央銀行は、インフレ、成長、金融安定など目標間のバランスを取る上で、引き続き、難しいトレードオフに直面しています。特に、開発途上国の中央銀行は、マクロ経済政策やマクロプルーデンス政策の手段を幅広く展開して、先進国の金融引き締めの悪影響が波及するのを最小限に抑える必要があります。

さらに報告書は、債務危機を回避し、開発途上国に十分な資金を供給するためには、強固で効果的なグローバル協力イニシアティブが今すぐ必要であると強調しています。脆弱な財政状況にある低・中所得国については、投資の低迷、低成長、大きな債務返済負担というサイクルの長期化を避けるために、債務免除や債務再編を実施する必要があります。

加えて、世界的な気候変動対策資金の規模を大幅に拡大させなければなりません。世界各地で気候行動を強化するためには、化石燃料への補助金を削減して最終的には廃止すること、開発途上国を支援するための1,000億ドルの誓約などの国際的な資金拠出の約束を最後まで守ること、そして技術移転を推進することが不可欠です。報告書はまた、イノベーションを推進して生産能力を強化し、レジリエンスを構築し、グリーン移行を加速する上で、産業政策が果たす役割がますます大きくなっていることも強調しています。

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報告書の全文は、以下より入手できます。
https://desapublications.un.org/

ハッシュタグ:#WorldEconomyReport

報道関係者のお問い合わせ先:
Sharon Birch
UN Department of Global Communications
birchs@un.org

Leah Kennedy
UN Department of Economic and Social Affairs
kennedy1@un.org

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原文(English)はこちらをご覧ください。