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『持続可能な開発目標(SDGs)報告2023:特別版』発表に関するプレスリリース(2023年7月10日付・日本語訳)

プレスリリース 23-040-J 2023年07月24日

履行を加速させる措置を講じなければ、世界はSDGs全体を
大幅に達成できないおそれがある、と国連が警告

ニューヨーク、7月10日 — 『持続可能な開発目標(SDGs)報告2023:特別版』によると、すべての人にとってより良い世界を約束するSDGsの達成に向けたグローバルな取り組みを一層強化できなければ、政情不安をさらに高め、経済に大きな打撃を与え、自然環境に不可逆的な被害を及ぼすおそれがあります。

SDGsの約束

世界の指導者たちは2015年に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17のSDGsに合意した際に、健全で豊かな地球においてあらゆる人々の権利と福祉を確保するという歴史的な約束を交わしました。しかし、気候危機、ウクライナでの戦争、世界経済の暗い見通し、長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の余波という複合的な影響によって、システミックな(連鎖的な)脆弱性が明らかになるとともに、目標達成に向けた前進が大きく阻害されています。

目標の履行にはあと7年しか残されておらず、その危険性は甚大です。各国がSDGs達成のために講じている具体的な行動を披露する「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」(7月10日-19日)が開催されている中、報告書は、入手可能な最新のデータと推計を基に、SDGsをめぐる厳しい現状を示しています。同フォーラムは、世界の指導者たちがただちに針路を逆転させ、SDGs達成に向けた取り組みを加速するための決定的瞬間である、「SDGサミット(9月18日-19日)」に先立って開催されています。

危機に瀕しているSDGs

評価が可能な約140のターゲットのうち半数で、望ましい軌道から「中程度~重度」の逸脱が起きていることが示されています。さらに、これらのターゲットの30%超が2015年の基準値から何ら前進しておらず、さらに深刻な場合、2015年の基準値よりも後退しています。

報告書によると、COVID-19のパンデミックの影響によって、極度の貧困の削減において30年続いた着実な前進が止まるとともに、極度の貧困下で暮らす人々の数がこの30年で初めて増加しました。

もし現在の傾向が続けば、2030年までに、実に5億7,500万人が極度の貧困に陥ったままとなり、8,400万人の子どもと若者が依然として通学できない状況になると推計されます。2022年に119カ国で集計されたデータによると、56%の国々が、女性に対する直接的・間接的な差別を禁止する法律を制定していませんでした。世界の気温は、産業革命以前の水準と比べてすでに1.1℃上昇しており、重大な転換点である1.5℃に2035年までに到達するか、それを超えてしまう可能性もあります。

報告書はまた、全般的に前進が見られない一方で、こうしたかつてない世界的課題がもたらす最悪の影響を受けているのは、世界で最も貧しく最も脆弱な立場に置かれた人々であるとも警告しています。

突破口を開く可能性

一方で、2015年以降に一部の分野で見られた前進は、さらなる進展の可能性を示唆しています。電気にアクセスできる世界人口の割合は、2015年の87%から2021年には91%へと増加し、新たに8億人近くがつながりました。

報告書はまた、2021年までに133カ国が5歳児未満の死亡率に関するSDGターゲットをすでに達成しており、2030年までにさらに13カ国が達成する見込みであることも示しています。世界の製造業の成長は鈍化していますが、中間ハイテク産業やハイテク産業は堅調な成長率を示しています。開発途上国では、2021年に、過去最大となる一人当たり268ワットの再生可能エネルギー発電設備が導入されました。さらに、インターネット利用者数は、2015年以降65%増加しており、2022年には世界人口のうち53億人に達しています。

これらの重要な開発成果が示しているのは、一致団結した行動と強い政治的意思、そして利用可能なテクノロジー、資源、知識の有効活用が組み合わされることで、あらゆる人々にとってより良い未来を築くための突破口が開かれるということです。こうした前進によって、何億もの人々が貧困から抜け出し、ジェンダー平等が改善され、2030年までに世界を低排出への軌道に乗せることができるのです。データ・エコシステムを強化することも、世界が置かれている現状と、SDGs達成のために実施すべきことを把握する鍵となります。

その他の主な事実と統計は、以下のとおり。

  • これまでの傾向を踏まえると、2030年までに国民の貧困率を2015年と比較して半減できる国は、3分の1にとどまる見通し。
  • 2021年には、3人に1人近く(23億人)が、中程度から重度の食料不安に直面した。
  • 2015年から2022年の間に、安全に管理された飲料水、安全に管理された衛生施設、基本的な手洗い設備へのアクセスが改善し、これらの必要不可欠なサービスを新たに利用できるようになった人は、それぞれ6億8,700万人、9億1,100万人、6億3,700万人に上った。
  • 効果的なHIV治療法のおかげで、2010年以降、世界のエイズ関連死亡者数が52%と大幅に減少し、47カ国において少なくとも1種類の「顧みられない熱帯病(NTDs)」が根絶された。
  • 2020年時点で、11億近くの人々が、都市部のスラムかそれに類する環境で暮らしていた。
  • 国レベル・地方レベルの災害リスク削減戦略を策定した国の数は、2015年以降倍増した。これは、災害による影響を管理・削減する意識が高まり、準備が進んだことを示している。

詳細については、https://unstats.un.org/sdgs/report/2023/ をご覧ください。
ハッシュタグ:#SDGreport、#SDGs、#GlobalGoals

報道関係者のお問い合わせ先(ご要望に応じて取材可能)

 Sharon Birch
 UN Department of Global Communications
 E-mail: birchs@un.org

 Helen Rosengren
 UN Department of Economic and Social Affairs
 E-mail: rosengrenh@un.org

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原文(English)はこちらをご覧ください。