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気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、第5次評価報告書を発表

プレスリリース 13-068-J 2013年10月01日

IPCCプレスリリース

IPCC報告書:気候に対する人の影響は明らか

ストックホルム、9月27日 – 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は最新の評価報告書を発表し、気候システムに人が影響を与えていることは明らかだとしたうえで、この事実が世界のほとんどの地域ではっきりと表れていると結論づけました。

20世紀中頃から観測されている地球温暖化の主因は、人の影響にある可能性が極めて高まっています。観測の量的、質的改善と、気候システムの反応に対する理解や気候モデルの向上によって、その証拠はますます固まりつつあります。

気候システムが温暖化していることは疑いのない事実であり、1950年以来、気候システム全体で過去数十年から数百年の間に見られていない変化が多く生じるようになっています。IPCCメンバー国政府が27日、スウェーデンのストックホルムで承認したIPCC第1作業部会評価報告書『気候変動2013:自然科学的根拠』の政策決定者向け要約によると、過去30年間を10年ごとに区切ってみても、1850年以来のどの10年間よりも地球の平均気温が高い状態が続いています。

「気候システムにおける変化の観測は、複数系統の独立した証拠に基づいています。私たちの科学的評価では、大気と海洋は温暖化し、雪と氷の量は減少し、世界の平均海水面は上昇し、温室効果ガスの密度は高まっています」こう語るのは、IPCC第1作業部会の秦大河(チン・ダヘ)共同議長です。

同じく第1作業部会のトーマス・シュトッカー共同議長は、次のように述べています。「温室効果ガスの排出が続けば、さらなる温暖化と、気候システム全要素の変化が生じるでしょう。気候変動を抑えるためには、温室効果ガス排出量の大幅かつ持続的な削減が必要です」

「最も低いシナリオが実現した場合を除き、21世紀末の地球の平均気温は、1850年から1900年の水準に比し、1.5度上昇するものと見られており、2つの最悪のシナリオでは、その差が2度を超える可能性が高くなっています」トーマス・シュトッカー共同議長はこのように語り、次のように付け加えました。「熱波がより頻繁に生じ、より長く続く可能性が非常に高いと見られます。地球温暖化が進むにつれ、一部の例外を除き、現在の湿潤地域では降水量が増大する一方で、乾燥地域の降水量は減少することになりそうです」

気候変動予測は、将来の温室効果ガス濃度とエアロゾルに関する新たな4組のシナリオに基づいていますが、こうしたシナリオが描く将来像は幅広い範囲に及んでいます。第1作業部会の報告書は、21世紀序盤、中盤、終盤につき、世界規模と地域規模の気候変動の評価を行うものです。

「海洋が暖まり、氷河や氷床が減少するに中で、地球の平均海水面は、過去40年間の経験よりもさらに早いペースで上昇し続けるでしょう」秦大河共同議長はこのように語っています。評価報告書によると、海洋の温暖化は、気候システムに蓄えられたエネルギー増大分の大半を反映しており、1971年から2010年にかけて蓄積されたエネルギーの90%以上を占めています。

トーマス・シュトッカー共同議長は次のように結論づけています。「私たちの過去、現在、そして将来予測されるCO2排出の結果、私たちはすでに気候変動を避けられない状態にあり、仮にCO2の排出がストップしたとしても、その影響は数世紀にわたって続くことになります」

ラジェンドラ・パチャウリIPCC議長は次のように語ります。「今回の第1作業部会の政策決定者向け要約は、気候変動の科学的根拠につき、重要な知見を提供しています。また、人と自然のシステムに対する気候変動の影響と、気候変動という課題に立ち向かう方法を検討するうえで、しっかりとした基盤を提供するものでもあります。」こうした側面は、2014年3月と4月に発表予定の第2作業部会および第3作業部会の報告書でも評価されます。IPCC第5次評価報告サイクルは、2014年10月の統合報告書の発表により締めくくられることになります。

「私は作業部会の共同議長、および、包括的でしっかりとした科学的根拠を備えた要約の作成にあたり、著者や校閲編集者の役割を果たされた数百人の科学者と専門家の方々に感謝したいと思います。また、今回の評価報告書作成にノウハウを提供いただいた1,000人を超える全世界の専門的校閲者の方々にも謝意を表します」パチャウリIPCC議長はこのように語りました。

IPCC第1作業部会第5次評価報告書(WGI AR5)政策決定者向け要約は、www.climatechange2013.orgまたはwww.ipcc.chでご覧になれます。

 主な評価結果

「WGI AR5政策決定者向け要約概要ファクトシート」(www.climatechange2013.org)を別途ご覧ください。

背景

第1作業部会は中国・北京気象局の秦大河氏とスイス・ベルン大学のトーマス・シュトッカー氏が共同議長を務めています。第1作業部会の技術支援ユニットは、スイス政府の資金提供により、ベルン大学に設置されています。

2008年4月のIPCC第28会期において、IPCCメンバーは第5次評価報告書(AR5)の作成を決定しました。2009年7月にはスコーピング会合が開催され、AR5の対象範囲と概略が定められました。これを受け、2009年10月のIPCC第31会期では、AR5で3つの作業部会が作成する報告書の概略が承認されました。

IPCC WGI AR5の政策決定者向け要約は、2013年9月23日から26日にかけスウェーデンのストックホルムで開催されたIPCC第1作業部会第20会期の会合で承認され、9月27日に発表されました。

技術要約、本文14章および地球・地域気候予測地図を含む第1作業部会報告書最終案(2013年6月7日に各国政府に配布されたもの)の未編集版は、930日(月)にオンラインで公開されます。第1作業部会報告書全文は、整理編集、レイアウト、最終的な校正および政策決定者向け要約の変更点に合わせた調整を経たうえで、2014年1月にオンラインで公開されるとともに、数カ月後にケンブリッジ大学出版会から書籍として出版される予定です。

第1作業部会による評価報告書の本文は約2,500ページからなっていますが、これは数百万回に及ぶ観測と、気候モデル・シミュレーションによる200万ギガバイトを超える数値データに基づいています。また、9,200点を超える学術書が引用されていますが、そのうち4分の3以上は、2007年の前回のIPCC評価報告書発表以後に出版されたものです。

このIPCC評価報告書では、所産または結果の可能性の評価に特定の用語が用いられています。上記の文中でも、「ほぼ確実(virtually certain)」とは99~100%の発生確率を指し、「可能性が極めて高い(extremely likely)」とは95~100%の発生確率を指し、「可能性が非常に高い(very likely)」とは90~100%の発生確率を指し、「可能性が高い(likely)」とは66~100%の発生確率を指しています。詳しい情報については、IPCC不確実性ガイダンス・ノート(https://www.ipcc-wg1.unibe.ch/guidancepaper/ar5_uncertainty-guidance-note.pdf)をご覧ください。

さらに詳しくは、下記にお問い合わせください。

IPCC Press Office, Email: ipcc-media@wmo.int

Jonathan Lynn, + 41 22 730 8066またはWerani Zabula, + 41 22 730 8120

IPCC Working Group I Media Contact, Email: media@ipcc.unibe.ch

Pauline Midgley, +41 31 631 5620

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