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Expert Voices ― 国連経済社会局職員からのメッセージ *障害者権利条約締約国会議が6月13-15日に開催されます*

2023年06月13日

“世界中の13億人のために、より良い対応を図っていかなければなりません”

「ほぼあらゆる面において、障害者は健常者よりも悪い状況に置かれています。私たちは、より良い対応を図っていかなければなりません」 国連事務局の経済社会局(UN DESA)に勤務する小野舞純(おの・ますみ)氏は、2023年6月13日から15日に開催される障害者権利条約締約国会議について語る中で、こう述べました。
*原文(English)はこちらをご覧ください。

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1)世界各地の障害者を取り巻く状況についてお聞かせください。

「世界中で13億人にのぼる障害者にとって、現状は受け入れられるものではありません。私たちは、より良い対応を図っていかなければなりません。

ここ数年で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やウクライナでの戦争、気候変動に関連する災害や経済的苦境によって、世界は後退を余儀なくされました。根深い不平等や不公正により、障害者をめぐる状況は悪化するばかりでした。障害者は往々にして、COVID-19のパンデミック対策から締め出されました。COVID-19に伴う社会的保護の救済策を表明した国々のうち、障害者向けの対策を講じたのは、44%にすぎませんでした。

多次元の貧困、食料不安、失業、保健、教育といった、ほぼあらゆる面において、障害者の状況は健常者に比べて悪化しています。障害者は、気候変動や自然災害、パンデミックや保健危機、人道的状況、紛争や紛争後の状況から不当に大きな影響を受けています。社会的保護の欠如や、インフラ、情報、社会・金融サービスへのアクセスの欠如に苦しんでいます。そして障害者は、差別され、排除され続けています。

調査結果の詳細は、「障害と開発に関する報告(Disability and Development Report)」の更新版でご覧いただける予定です。国連経済社会局に所属する私たちのチームは、国連パートナーや他の専門家と緊密に協力し、2018年に発行されたこの報告から基準となるデータを用い、さまざまな情報源から集めた情報データを加えて、いくつかの傾向を示すことができました。一部の分野には進展が見られますが、大多数の分野の数値は、改善を切に必要としている厳しい状況を表しています。

報告はまた、真に誰一人取り残さないためには、政策や意思決定に情報を提供する、より細かく分類された比較可能なデータが依然として必要であることも明らかにしています」

2)2008年に障害者権利条約が発効しました。この条約の各国の実施状況はどうでしょうか。

「障害者権利条約は、公平で、包摂的で、レジリエント(強靱)な世界を構築し、障害者の生活に変化を起こすことのできる基盤をもたらしました。186カ国が条約を批准しています。

条約は、障害の概念を、内的な特性から人の経験として捉えるようになり、障害が『機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずる』ものと認めています。

こうした権利に基づくアプローチが制度や政策の転換を推進し、多くの国で法律が制定され、規制制度が導入されています。

例えば教育においては、2018年までに75%の国が、障害を持つ生徒の普通学校への統合を保証する法律を制定しました。これは、障害を持つ生徒が過去に経験してきた排除をなくすための重要な一歩であり、それによって、あらゆる人々が学校に入学しやすくなりました。2013年から2021年にかけて、障害を持つ生徒も使用できる教材を備えた国の比率は、17%から47%へとほぼ3倍になりました。労働規制では、2021年までに79%の国が採用時の障害者差別を禁止しており、その割合は、2016年の74%から上昇しています。

しかし、条約に規定された権利を完全に実現するためには、依然として多くの課題が残っています。障壁は、差別、先入観、スティグマ(偏見)の形で根強く残っています。女性と女児は特に、搾取、マルトリートメント(不適切な養育)、暴力、虐待のリスクが高くなっています」

3)障害者権利条約の今年の締約国会議で達成したいことは何ですか。

「条約が発効してから15年を超えています。この重要な履行段階において、締約国会議では、各国の政策や戦略と障害者権利条約とを調和させる上での成果や課題について振り返ります。同会議史上初めて、障害者向けの性と生殖に関する健康のサービスをめぐる問題に取り組みます。障害者のインクルージョン(包摂性)と権利を推進するためのギャップや機会も含め、障害者のデジタル・アクセシビリティについても取り上げます。会議ではまた、弱い立場に置かれ普段あまり顧みられることのない少数集団にも焦点を当て、障害者のさまざまなニーズや貢献について認識することの重要性を浮き彫りにします。

締約国会議は、生きた経験を共有して行動を結集するための包摂的な空間を提供します。会議には、180カ国超から約40人の閣僚級参加者を含む代表団・オブザーバー1,500人が参加するほか、国会議員、国連機関、国内人権機関や多くの障害者団体を含む100近い非政府組織(NGO)も参加します。

議長国(チュニジア)と会議事務局のリーダーシップの下、すべての参加者が、連帯、インクルージョン、そしてパートナーシップの精神を会議から持ち帰り、障害者権利条約の履行におけるマルチラテラリズム(多国間主義)と国際協力の重要性を再確認することを私たちは期待しています」

4)SDGサミットを見据え、持続可能な開発のための2030アジェンダを達成するための変化に貢献し、変化をもたらす主体として障害者に参画してもらうために、私たちは何ができるのでしょうか。

「SDGサミットは、2030年に向けた中間地点となる重要な節目に開かれます。あらゆることが後退している中でも、私たちに持続可能な開発目標(SDGs)をあきらめるわけにはいきません。

条約は、持続可能な開発のための戦略の不可欠な要素として、障害に関する問題を主流に組み入れることの重要性を強調しています。障害者インクルージョンを主流化させ、持続可能な開発に対する障害者の貢献を認識せずにSDGsの達成はないのです。

障害者に関連するSDGsの目標とターゲットを達成するには、的を絞った取り組みが必要です。7つのターゲットが明示的に障害者について言及し、6つのターゲットが脆弱な状況に置かれた人々に言及しており、更にいくつかのターゲットが障害者を含む普遍的なものとなっています。

「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」という原則を実行すべきです。障害者の完全かつ効果的な社会への参加とインクルージョンを、あらゆる企画や計画におけるプロセスの指針とすべきです。障害者と障害者団体、とりわけ開発途上国の障害者と障害者団体が、関係する各国・地域・グローバルなSDGs実施プロセスに参加しやすくするためには、より多くの支援が必要なのです。

「国連障害者インクルージョン戦略」は、国連の業務において障害者インクルージョンを主流化させ、誰一人取り残さない、包摂的でアクセス可能な世界に向けた国連の取り組みを導く上で、大きく役立っています。

国連の活動分野全体に、障害者による貢献を活用することを組み入れる必要があります。そのために私たちは、能力、資源、イノベーションの強化に、真剣に投資する必要があるのです」

詳細については、「障害者権利条約締約国会議」(英文)をご覧ください。

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