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G7各国は「気候行動における中心的役割を担っている」― グテーレス事務総長がグローバルな再編を呼びかけ(UN News 記事・日本語訳)

2023年05月25日

G7広島サミット2023出席のため日本を訪問したアントニオ・グテーレス国連事務総長は、締めくくりにあたり記者会見に臨んだ© UN Photo/Ichiro Mae

 

2023年5月21日-アントニオ・グテーレス国連事務総長は5月21日、広島で記者会見を行い、「世界は先進民主主義国からなるG7ブロックが、グローバルなリーダーシップと連帯を示すことを期待しています」と述べました。そして、広島を、マルチラテラリズム(多国間主義)が放棄され「国と国が協力し合うことを止めた時に起こる悲劇的な結果を世界に示す象徴」であると表現しました。

カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国で構成されるG7、および欧州連合は、1945年に最初の原子爆弾が投下された都市であり、アントニオ・グテーレス事務総長が「人間の精神を証明するもの」と表現した都市、広島に一堂に会しました。

事務総長は、原爆投下という戦争の惨禍を生き延びた人々に触れて、次のように述べました。「訪問の度に、被爆者の方々の勇気と強靭さに打たれるのです。国連は、被爆者の方々とともにあります。私たちは、核兵器のない世界を求めることを決してやめません

持てる者と持たざる者

グテーレス事務総長は、自身がG7各国首脳に向けたメッセージは、明確かつ簡潔であると述べました。「世界の至る所で経済状況が不確実さを増している中で、富裕国は世界の半分以上、つまり大多数の国々が深刻な財政危機に苦しんでいる事実を無視するわけにはいきません

事務総長は、前週のジャマイカへの公式訪問で最初に表明した、開発途上国が直面する問題には道徳、力関係、実践という3つの側面があるという見解を、あらためて繰り返しました。

事務総長は、現在の世界経済および・金融の枠組みにおける「組織的、不公正な偏見」、時代遅れの国際金融アーキテクチャ、そして現在の世界のルールの下でさえも開発途上経済が見捨てられ、軽視されている事実について詳しく述べながら、G7各国には直ちに行動する責務があると指摘しました。

力の再配分

事務総長によれば、第二次世界大戦後のブレトンウッズでの見直しによって生まれた金融システムは、COVID-19のパンデミックによる経済的ショックとロシアによるウクライナ侵攻に直面して、「グローバルなセーフティーネットとしての中核機能を果たせていません」

グテーレス事務総長は、ブレトンウッズ体制を修正し、国連安全保障理事会を変革すべき時が来ていると述べました。

「これは本質的に、今日の世界の現実に沿った形で力を再配分するという問題に他なりません。」

事務総長は、G7各国はもはや傍観者にとどまることはできないと指摘しています。「多極化した世界で、地政学的分断が深まる中、いずれの国も、国のグループも、数十億の人々が食料、水、教育、医療、雇用といった生活の基本となるものを得るのに苦労しているのを看過することはできません」

G7広島サミット2023で岸田文雄内閣総理大臣と会談を行うアントニオ・グテーレス国連事務総長 © UN Photo/Ichiro Mae

「軌道からは明らかに外れている」

事務総長は、気候変動が進むペースを見過ごすことの危険性を強調しつつ、世界の最富裕国が気候行動の成功において中心的な役割を担う具体的な分野の概略を示しました。

現在の予測では、人類は今世紀末までに2.8℃の気温上昇に向かっており、気象に関する国連の機関である世界気象機関(WMO)最新のデータでは、次の5年間の気温は、過去最高を記録することが予想されると、事務総長は報道関係者に語りました。

事務総長は、経済および金融面での巨大な影響力によってG7各国は「気候行動において中心的役割を担っており」、それは行われてはいるものの、「不十分であり、(今世紀末までの気温上昇を1.5℃に抑える)軌道からは明らかに外れている」と述べました。

「国連の『アクセラレーション・アジェンダ』は、その遅れを取り戻すことを目的としています。アジェンダはG7を構成するすべての国々に対し、2040年にできるだけ近い時期に、そして新興国に対しては2050年にできるだけ近い時期に、排出量正味ゼロを達成するよう求めています」

「気候連帯協定」はG7各国政府に対し、地球温暖化を産業革命以前と比べて1.5℃に抑えるために、富裕ではない経済圏を脱炭素化の加速に向けて支援するためのリソースを動員するよう求めています。

世界各国の首脳とともに広島平和記念公園の慰霊碑への献花に向かうアントニオ・グテーレス国連事務総長 © UN Photo/Ichiro Mae

石炭の段階的廃止

「そのためには、化石燃料の利用を段階的に廃止して再生可能エネルギーへと移行するタイムラインを前倒ししなければなりません。炭素に価格を設定して、化石燃料への補助金を廃止させなければなりません。私はG7各国に対し、石炭の利用を2030年までに段階的に廃止するよう求めます」とグテーレス事務総長は述べました。

事務総長はまた、気候危機に最も寄与していないにもかかわらず最も大きな被害を受けている国々のために、気候正義も訴えました。

「私たちは、最前線にいるコミュニティーを支援するために、適応策と早期警報システムを拡大しなければなりません。……先進国が、約束してきた毎年1,000億米ドルの拠出を行うべき時が来ています」とグテーレス事務総長は続けました。

さらに事務総長は、昨年のCOP27開催地のシャルム・エル・シェイクで合意した「損失と損害基金」を「稼働させなければならない」と繰り返しました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。

記者会見のアーカイブ映像は UN Web TV でご覧いただけます。