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『NDC統合報告書』最新版を発表:気候計画は依然として不十分 さらに野心的な行動が今すぐ必要(2022年10月26日付 UNFCCCプレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 22-065-J 2022年11月01日

COP27は、世界の指導者たちが気候変動への取り組みに再び弾みをつけ、交渉から実行に転換し、気候緊急事態に対処するために社会のすべての部門を通じて起こすべき大きな変革の促進に着手する機会だ

UNFCCC/2022年10月26日 - 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が発表した新たな報告書によると、各国は世界的な温室効果ガス排出量を減少に向かわせつつあるが、今世紀末までの世界の気温上昇を1.5℃に抑えるには、こうした取り組みでは依然として不十分だとしています。

報告書によると、パリ協定の193の国・地域の締約国の各国の削減目標を足し合わせた場合、今世紀末までの世界の平均気温の上昇がおよそ2.5℃となる見通しが明らかになりました。

また、現行のコミットメントでは2030年までに排出量が2010年比で10.6%増加する見通しとなっています。これは、2030年までに排出量が2010年比で13.7%増加する方向に各国が向かっているとした昨年の評価よりも改善しています。

昨年の分析では、排出量が2030年以降も増加し続けると予想されていましたが、今年の分析では、排出量が2030年以降に増加しないものの、2030年までに科学的に必要とされる急速な減少傾向を示すものにはなっていません。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2018年の報告書は、2030年までに二酸化炭素排出量を2010年比で45%減少させる必要があるとしました。今年初めにIPCCが発表した最新の報告書では、2019年を基準として2030年までに温室効果ガス排出量を43%減少させる必要があるとしています。これは、今世紀末までの気温上昇を1.5℃に抑え、干ばつや熱波、降雨の頻度と深刻度の増加など、気候変動の最悪の影響を避けるという、パリ協定の目標を達成する上で極めて重要です。

サイモン・スティルUNFCCC事務局長は、次のように述べています。「2030年までの予想排出量が減少傾向にあることは、各国が今年いくらか前進したことを示すものです。しかし、科学は明白であり、パリ協定に基づいた気候目標もまた明白です。私たちは、1.5℃の気温上昇という世界に向けた軌道に乗るために求められている排出量削減の規模とペースからは、いまだにかけ離れています。1.5℃目標を維持するためには、各国政府が今まさに、自国の気候行動計画を強化し、それを今後8年間で実行する必要があるのです」

UNFCCCでは、英国グラスゴーで開催されたCOP26以後、2022年9月23日までに提出された24件の更新または新規のものを含む、「自国が決定する貢献(NDC)」と呼ばれるパリ協定の締約国・地域の気候行動計画を分析しました。それらの計画を足し合わせると、2019年の全世界の温室効果ガス総排出量の94.9%に相当します。

スティル事務局長は次のように述べています「グラスゴーで昨年開かれたCOP26で、すべての国が自国の気候計画の見直しと強化に同意しました。しかしCOP26以降、新たに作成されたもしくは強化された気候計画が、わずか24件しかなかった事実は残念です。各国政府の決定や行動は、緊急度や私たちが直面している脅威の重大さ、そして急激に悪化する気候変動による壊滅的な影響を回避するために私たちに残された時間の短さを反映したものでなければなりません」

今回の報告書は、昨年初めて発表されたNDC統合報告書に重要な更新を行ったものであり、UNFCCCによるこうした報告書の第二次のものとなります。報告書の調査結果は全体として厳しいものですが、かすかな希望の光も見えます。

新たなもしくは強化されたNDCを提出した国々の多くは、2025年および/あるいは2030年までに温室効果ガス排出量を削減または制限するコミットメントを強固なものとしており、気候変動にさらに野心的に取り組む姿勢を明らかにしています。

本日合わせて発表された、長期の低排出発展戦略に関するUNFCCCの第二次報告書では、今世紀半ばまで、または半ば頃における排出量正味ゼロに移行する各国の計画に注目しています。同報告書によると、長期戦略がすべて予定通りに実行されれば、2050年時点の各国の温室効果ガス排出量は、2019年比で約68%低減させることが可能です。

現行の長期戦略は、パリ協定締約国・地域のうち62の国・地域を代表するもので、世界のGDPの83%、2019年の世界人口の47%、2019年の総エネルギー消費量の約69%を占めます。これは、世界が排出量正味ゼロを目指して進み始めたことを示す強い兆候です。

一方、報告書は、多くの正味ゼロ目標が不確実なままであり、今すぐ取りかかる必要があることが未来の重要な行動として先送りされていると指摘しています。パリ協定の長期目標を達成するには、2030年に至るまでの野心的な気候行動が緊急に必要とされています。

国連の気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)を目前に控え、スティル事務局長は各国政府に対し、排出量の今後の推移と科学的に2030年までに留めておくべきと示されているところの間のギャップを埋めるために、自国の気候計画を見直し、強化するよう呼びかけました。

スティル事務局長は次のように述べています。「COP27は、世界の指導者たちが気候変動への取り組みに再び弾みをつけ、交渉から実行に転換し、気候緊急事態に対処するために社会のすべての部門を通じて起こすべき大きな変革の促進に着手する機会です」

スティル事務局長は、各国政府に対し、法律、政策、プログラムを通じて自国でどのようにパリ協定を機能させるか、そして、実施に向けてどのように協力し、支援を提供するかをCOP27で示すよう要請しています。また、COP27において(気候変動の)緩和、適応、損失と損害、ファイナンスという4つの優先分野を進展させることも各国に呼びかけています。

COP27の次期議長であるエジプトのサーメハ・シュクリ外相は、次のように述べました。「COP27は、気候行動における世界の重大な分岐点となるでしょう。UNFCCCの報告書、そして以前のIPCCによる報告書は、私たち全員にとって適時な注意喚起です。気候危機に対処するには、強い野心を持つことと緊急に実行することが不可欠です。これには、気候変動による、より深刻な被害および壊滅的な損失と損害から私たちを守るための経済部門のより広範囲で、より迅速な排出の削減、除去が含まれます」

シュクリ氏は次のように続けました。「統合報告書は、私たちがパリ協定の目標を達成し1.5℃を手の届く範囲におく軌道から外れている事実を示す証拠です。今、目を覚ます時です。私たちは時間と闘っているのです。もっと行動を期待されている国々の中にはまったく十分ではない国もあり、その影響は世界中の人々の生活と生計に影響を与えています。私は、それが2030年まで、次に2050年まで続く行動であり、そうであるべきと意識しています。しかし、これら憂慮すべき調査結果はCOP27において対応の変革が必要であることを示しています」

COP26のアロック・シャルマ議長は、次のように述べました。「私たちは、グラスゴー気候合意で約束したように、気温上昇の1.5℃目標を確保するためにできることのすべてを行うことが重要です。これらの報告書は、私たちがいくらかは進展していることを示しており、ほんのわずかな変化も重要です。しかし、さらに多くのことが緊急に必要です。私たちは、主要な排出国に対し、COP27に向けて、立ち上がり、さらに野心的に取り組むことを求めます」

国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)は、今年11月6日から18日まで、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されます。
https://unfccc.int/cop27

詳細について:

2022年のNDC統合報告書は、こちらからダウンロードできます。

2022年の長期低排出発展戦略統合報告書は、こちらからダウンロードできます。

報道関係者のお問い合わせ先:

Alexander Saier
Lead, Media and Digital Communications | UN Climate Change
Email: press@unfccc.int

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原文(English)はこちらをご覧ください。