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デジタル金融はCOVID-19対応の根幹を成しSDGs達成の長期的財源に(メディア・リリース日本語訳)

プレスリリース 20-027-J 2020年08月27日

国連事務総長が招集した金融、ビジネス、政府、開発界のリーダーは、デジタル金融の潜在力を活かすことで、持続可能な開発に大きな変化をもたらすインパクトが生まれる可能性を指摘

ニューヨーク、826 ― 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)によって生じた未曽有の社会経済危機は、何百万もの人々を救済し、ビジネスを支援し、雇用と生活を守る上で、デジタル金融が果たす役割を浮き彫りにしています。

このパンデミックにより、デジタル金融が直ちにもたらす有益性が示されましたが、デジタル化が金融の既成概念を打ち破りそのあり方を革新する可能性も計り知れません。モバイル決済技術により、携帯電話は10億人以上にとって、金融ツールへと変容しました。デジタルは仮想通貨や暗号資産、ソーシャルレンディング、クラウドファンディング・プラットフォーム、電子市場を前進させるビッグデータや人工知能(AI)を支えています。新興技術の開発、統合、取得に対する銀行の投資は1兆ドルを超えました。2018年には「フィンテック」投資額が1,200億ドルと、全世界のベンチャー投資額の3分の1を占めました。

国連事務総長のデジタル金融に関するタスクフォースがきょう発表した新たな報告書『人々の資金:持続可能な未来のための資金供給に向けたデジタル化の活用(People’s Money: Harnessing Digitalization to Finance a Sustainable Future)』は、野心的かつ実践的な行動指針を定めています。行動指針は、納税者であり、投資家でもある市民のエンパワーメントを通じ、持続可能な開発目標(SDGs)で示された人々全体のニーズと、その資金をより良い形で整合させる大規模なデジタル・トランスフォーメーションを描くような形で、デジタル金融をどのように活用できるかを明らかにしています。

報告書は、世界中で何十億もの人々が、どのように仕事や支出、社交にデジタル・ツールを用いて、COVID-19パンデミックに対応しているかを強調しています。そして、デジタル化を活用することで、世界の金融資産の究極的所有者である市民が、今、そして将来の自分たちのニーズを満たすために財政を管理できるようにする歴史的な機会が訪れていると指摘しています。

同タスクフォースは、金融をSDGsに沿ったものとするため、デジタル化を触媒として活用できる機会を5つ示しています。これらは、世界の金融の大部分を占めます。

  • グローバル資本市場における巨額の資金の流れをSDGsと整合させる
  • グローバル経済の大きな部分を占める公共財政の有効性と責任を増加させる
  • デジタル金融で集まった国内貯蓄を長期的開発金融に活用する
  • 自らの消費支出をSDGsと関連づける方法を市民に伝える
  • 雇用と所得を創出できる零細・中小企業に不可欠な資金の提供を加速する

タスクフォースの行動指針は、企業や政策立案者、金融規制当局に対し、これら機会の実現に必要な行動を取るよう呼びかけています。そして、すべき「こと」だけでなく、その「方法」も明らかにしています。投資や新たな能力、ガバナンスのイノベーションによって、それは可能になるからです。

タスクフォースは、良いことへのデジタル化の活用はあくまでも選択肢であり、技術があれば必然的に実現されることではないと結論づけています。行動指針では、そのままにしておけば、排除や差別、格差を広げ、包摂的で持続可能な開発のニーズから金融をさらに遠ざけてしまいかねないデジタル・リスクの克服に必要な対策についても述べています。

 

タスクフォースのリーダーたちのコメント

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「金融市場に革命を起こしているデジタル技術は、私たちの共通の目標の達成に向けた流れを一変させる可能性があります。持続可能な開発目標に向けたデジタル金融に関するタスクフォースは、デジタル革命を活用するためのリーダーシップを発揮しています」と述べています。

デジタル金融に関する事務総長タスクフォースのマリア・ラモス共同議長は、「私たちには、変革をもたらせるデジタル化のインパクトを加速し、拡大するための歴史的機会が訪れています。特に、この危機下で世界の何百万もの人々にとって生命線となったデジタル金融は、貯蓄や投資、借入、貸付、納税の主体である市民に、その資金を使うための選択肢と力を与えることにより、金融による包摂の領域を広げています」と述べています。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁兼デジタル金融に関する事務総長タスクフォース共同議長は、次のように述べています。「コロナ禍により、変革につながるインパクトを及ぼしうるデジタル金融の劇的な潜在力が実証されつつあります。デジタル送金により、政府は困窮した人々を支援できるようになり、クラウドファンディング・プラットフォームにより、医療用品と緊急援助のために資金が集められるようになるとともに、アルゴリズムを使った貸付によって、中小企業もより迅速に資金の貸出を受けられるようになりました。こうした技術は最近になって、驚くべきスピードで普及していますが、これは自動的に進むプロセスではありません。デジタル化を持続可能な開発目標達成に向けた真の原動力とするためには、市民のエンパワーメントを図り、金融システムがより良い未来を実現するために克服せねばならない喫緊の投資課題に取り組めるようにする健全な政策を、技術的進歩と組み合わせねばなりません」

 

報告書

報告書全文と要旨は米東部夏時間2020826日午前10時(日本時間午後11時)から、
www.digitalfinancingtaskforce.orgで入手できます。

 

メディアのお問い合わせ先

さらに詳しい情報またはインタビューのご要望は、下記にお問い合わせください。

ニューヨーク

Dylan Lowthian   dylan.lowthian@undp.org   +1 646 673 6350

Duygu Celik   duygu.celik@uncdf.org   +1 646 939 6645

ジュネーブ

Sarah Bel   sarah.bel@undp.org   +41 79 934 11 17

  

編集者注

報告書の発表はニューヨークで、アントニオ・グテーレス国連事務総長のほか、タスクフォースの共同議長を務めるアヒム・シュタイナーUNDP総裁とマリア・ラモスASBAグループCEOが行います。

さらに、下記4人のタスクフォース・メンバーも加わり、タスクフォース事務局長のサイモン・ザデック氏が進行するディスカッションも開催します。

  • パトリック・ンジョロゲ氏、ケニア中央銀行総裁
  • ナタリー・ジャバングウェEcoCash最高経営責任者(CEO
  • 井賢棟(エリック・ジン)氏、Antグループ取締役会長
  • ジェイラ・パザルバシオル氏、世界銀行グループ公正な成長・金融・組織担当副総裁

 

タスクフォースについて

デジタル金融に関するタスクフォースは、SDGs達成のための資金供給を加速するためにデジタル化を活用する方法を提言し、その実施を促進するために事務総長が設置しました。タスクフォースには金融、技術、政策、規制、国際開発の分野のリーダー17人が結集するとともに、数十カ国で数百の金融機関、政府や規制当局、市民社会団体、シンクタンク、専門家集団との意見交換を行いました。

タスクフォースはアヒム・シュタイナー(UNDP総裁)、マリア・ラモス(元ABSAグループCEO)の両氏が共同議長を務めています。そのメンバーには、マイアバ・アタリナ・エマ・アイヌー=エナリ(サモア中央銀行総裁兼理事長)、ヘンリエッタ・H・フォア(UNICEF事務局長)、マッツ・グランリッド(携帯通信事業者の業界団体GSMA事務局長)、ピユーシュ・グプタ(DBS銀行CEO)、ナタリー・ジャバングウェ(EcoCash CEO)、井賢棟(Antグループ取締役会長)、ブラッドリー・カツヤマ(IEX設立者兼CEO)、プーマ・キミス(Autonomous Research所長)、劉振民(国連経済社会局担当事務次長)、プムズィレ・ムランボ=ヌクカ(UN Women担当国連事務次長)、アバリーン・ムサ(Souqalmal設立者兼CEO)、パトリック・ンジョロゲ(ケニア中央銀行総裁)、ジェイラ・パザルバシオル(世界銀行副総裁)、リチャード・サマンス(世界経済フォーラム常務取締役兼理事)、オレリー・アダム・スール・ズマル(ベナン政府デジタル経済・通信大臣)の各氏が名を連ねています。

メンバーはいずれも、個人の資格でタスクフォースに参加しています。

タスクフォースに多大なる資金と支援を提供して下さったドイツ、イタリア、スイスの各国に感謝申し上げます。

タスクフォースとの関連で、行動指針の実施を図る野心的な行動の模範例として、数多くの「パスファインダー・イニシアティブ(草分け的イニシアティブ)」が発足しています。

  • バングラデシュは、国内の少額貯蓄を道路や橋、衛生設備、病院など、持続可能なインフラへの投資に向けるため、いかにデジタル化を活用できるか模索しています。この手法により、資本コストを大幅に引き下げるとともに、バングラデシュの比較的貧しい市民に対し、地域の改善の恩恵に加え、配当も提供し、経済的乗数効果を生み出す可能性があります。
  • ジンバブエ最大の決済プラットフォームEcoCashは、デジタル証券取引所IEXと国連資本開発基金(UNCDF)からの支援を受け、自動的に生成された企業からの決済データを用いて、将来の上場向けに厳格なデュー・ディリジェンスと信用格付けを提供する 世界初の証券取引所を立ち上げました。今後は、急速な成長を遂げる革新的なジンバブエの中小企業からの要望が大きい借入と株式発行による資金調達窓口の提供を図る予定です。
  • ガンビアのパスファインダー・イニシアティブは、支援的な政策環境を確保し、デジタル・インフラや市民中心の革新的なデジタル金融商品とサービスへの民間投資を促進することにより、金融の包摂を発展させることに重点を置いています。このイニシアティブはタスクフォースのメンバーであるEcoCashUN Women、携帯通信事業者の業界団体GSMAが、UNCDFからの支援を受けて展開しています。
  • ケニア中央銀行は、地域的デジタル金融エコシステムを育成することで、現地の需要を強化し、より大きな市場へのアクセスを提供することにより、デジタル金融のイノベーションを奨励しようとしています。中央銀行はまた、国際協力を促進し、シンガポール金融管理局(MAS)との強力な絆を作り上げることで、シンガポールと東アフリカの協力の推進を図っています。
  • Refinitivは、デジタル・インフラ・ガバナンスの取り組みとして「インフラストラクチャー360」を進めています。このイニシアティブは、プロジェクト金融、取引、貸付、デュー・ディリジェンス、リスク特性のほか、マクロ経済リスク、地政学的リスク、オペレーショナル・リスクをESG指標に統合し、6万件以上のプロジェクトに関して信頼できる情報と知見を提供することで、投資家や政府、市民による持続可能な投資決定を支援しています。
  • グリーン・デジタル金融アライアンスは、持続可能なデジタル金融を可能にするインフラや政策、投資を査定する測定枠組みを開発しました。ここで収集された情報は、デジタル金融を各国の優先的SDGs分野と整合させることを目指す政策と規制のデザインを定め、持続可能なデジタル金融にまつわる知識を作り出すことに役立っています。
  •  ケニア、スイス両国政府の主導で開発されたグローバル・デジタル金融に関する国際的対話は、特に開発途上国の参加を促しながら、SDGsと整合するグローバル・デジタル金融プラットフォームのガバナンスに関し、バランスの取れた、さらに包摂的な対話の促進を目指しています。

 

数字が語るデジタル金融の現状

  • 世界の国内貯蓄は、総額で3兆ドルに上ります。
  • 世界の金融市場に投資される民間資本は、200兆ドルを超えていますが、その多くの投資収益率は極めて低いです。
  • 米国の公開市場での株取引のうち3分の1以上(35%)はすでに、コンピュータで管理されるファンドが行っています。
  • 過去10年間で、市民に情報が行き渡ったことにより、持続可能な投資に対する需要は2018年に30兆ドルを超え、これまでに発行されたグリーンボンドの金額も7,700億ドルを上回っているほか、インパクト投資の規模も2019年に7,150億ドルに達したものと見られています。
  • 米消費者金融保護局による最近の調査では、デジタル強化型信用度採点により、あらゆる顧客層で貸付承認率が27%上昇する一方で、金利は16%低下しています。
  • IMFの推計によると、開発途上国で、政府による各種支払いをデジタル化することで、年間2,200~3,200億ドル(歳入のおよそ5%に相当)の効果が生み出さます。政府の給付金支給を現金から電子送金に変えることで、1件当たりおよそ40%のコスト削減が実現しています。
  • ブラジルでは、ボルサ・ファミリア(社会福祉手当)の給付を現金から電子カードに変更したことで、行政コストの割合が7%からほぼ2.6%へと、7分の1に削減されました。
  • Alipay Ant Forest(アント森林)プラットフォームの利用者55,000万人は、20203月までに炭素排出量をほぼ1,100万トン削減しました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。

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