各国の新たな国別気候計画、COP30に先立つハイレベルサミットで発表(UN News 記事・日本語訳)
2025年10月08日

2025年9月24日 ― クリーンエネルギーへの移行の加速から大規模な植林に至るまで、国連総会のハイレベルウィークの一環として開かれた会合で、約100カ国の指導者たちが新たな国別気候行動計画を発表、または再確認しました。
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この画期的なサミットは、アントニオ・グテーレス国連事務総長と、11月にアマゾンの都市ベレンで開会する気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30会議)の議長国であるブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領によって招集されました。
世界最大の排出国である中国やナイジェリアを含む主要経済国は、力強いモメンタムを示し、すべての温室効果ガスと部門にわたる排出削減を目指す経済全体の目標を発表し、ディープデカーボナイゼーション(Deep Decarbonization)に向けたより統一された取り組みを誓いました。
一方で、他の国々も大胆なコミットメントを打ち出しました。再生可能エネルギーの拡大、メタン排出の取り締まり、重要な森林の保護、化石燃料の段階的廃止の加速などです。これらの発表は、世界の気候野心における転換点となり、COP30と決定的な行動の10年の基盤をつくります。
ハイレベルサミットの冒頭、気候科学の第一人者であるヨハン・ロックストローム氏とキャサリン・ヘイホー氏は、の世界の気温上昇を産業革命以前の水準と比べて1.5℃に抑えることを目指すために2015年に締結された画期的な条約であるパリ協定の履行に向けたこれまでの世界的な取り組みについて、厳しい評価を示しました。
「深刻な懸念」
パリ協定が採択されて10年が経過した今も、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの排出量は増加し続けており、昨年、世界の年間の気温上昇は初めて1.5℃を超えました。
「これは深刻な懸念事項です。さらに深刻な懸念は、温暖化が排出量の増加を上回るペースで加速しているようだということです」コンサベーション・インターナショナルのチーフ・サイエンティストであるロックストローム教授は、このように述べました。
しかしながら、1.5℃の目標は依然として達成可能であり、2人の専門家は、化石燃料からクリーンエネルギー源への移行や、廃棄物を削減するための食料システムの変革を含む解決策を強調しました。
「私たちはこの大惨事を単独で防ぐことはできません。しかし、共に協力すればできるのです。より強力な目標を設定し、より迅速なタイムラインで前進し、より一層コミットすることで」2019年国連「チャンピオン・オブ・ジ・アース」の受賞者であるヘイホー教授は、こう述べました。

グテーレス事務総長「更なる行動が必要」
パリ協定の下、各国政府は今後10年間の大胆な行動を提示した「自国が決定する貢献(NDC)」と呼ばれる気候計画を提出することが義務付けられています。
事務総長は、協定が変化をもたらしていると述べています。現在の計画が完全に実施された場合の予測される世界の気温上昇は、この10年間で4℃から3℃未満にまで低下しています。
「今、私たちには2035年に向けてより先へ、より迅速に進める新たな計画が必要です。1.5℃目標に沿った劇的な排出削減を実施すること、すべての排出と排出部門を網羅すること、そして世界的に公正なエネルギー移行を加速させることです」事務総長は、このように述べました。
事務総長は、COP30が「私たちを軌道に乗せるための信頼できるグローバルな対応計画で締めくくられなければならない」と強調し、次の5つの重要な行動分野を示しました。それは、クリーンエネルギーへの移行の加速、メタンガス排出量の大幅な削減、森林の保全、重工業からの排出量の削減、そして開発途上国のための気候正義の確保です。

ルーラ大統領、「宿題」を済ませるよう求める
COP30が数週間後に迫る中で、ルーラ大統領は「世界は宿題を済ませてベレンに到着するだろうか」と疑問を呈しました。
「エネルギー移行は、産業革命に匹敵する生産的・技術的変革への扉を開く」ものであり、NDCは「その変革においてそれぞれの国を導くロードマップ」だと大統領は述べました。
ブラジルとしては、その経済の全部門を対象としてすべての温室効果ガス排出量を59%~67%削減することをコミットしており、2030年までに森林破壊を終わらせるための取り組みを継続すると述べました。
中国と欧州によるコミットメント
中国の習近平国家主席はこの会合で、2035年までに、経済全体の温室効果ガスの純排出量をピーク時から7~10%削減すると発表しました。
習主席はまた、ビデオメッセージの中で、総エネルギー消費に占める非化石燃料の割合を30%超に引き上げ、風力・太陽光発電容量を2020年比で6倍に拡大し、「新エネルギー車」を新車販売の主流とする方針を語りました。
一方、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州連合(EU)では「クリーンな移行が進んで」おり、1990年以降、排出量は40%近く減少したと述べました。
フォン・デア・ライエン委員長は、欧州諸国はまた「国際的なパートナーシップを強化」しており、今後も気候変動対策資金の世界最大の提供者であり続けるとともに、世界のクリーンエネルギー移行を支援するために、最大3,000億ユーロの資金も動員する予定であると説明しました。
脆弱な国々は、希望と困難の狭間に
ベリーズのジョン・アントニオ・ブリセーニョ首相は、同国にとって1.5℃目標は、「単なる願望ではなく、希望と苦難、コミュニティーの繁栄と強制移住、共有の繁栄と取り返しのつかない損失を分ける閾値(いきち)」なのだと述べました。
ベリーズの新たなNDCには、2035年までに国内需要の80%を再生可能エネルギー発電で賄うこと、約2万5,000ヘクタールの劣化した森林を回復させること、今後3年間に100万本の植林を行うことなど、具体的な行動が盛り込まれています。
「しかし明確に申し上げたいのは、ベリーズのように気候変動に脆弱な小さな国々への支援を伴ってこそ、野心は成功するということです」
ブリセーニョ首相は「それは、予測可能な資金の拡大、アクセス可能なテクノロジー、そして真のパートナーシップを意味します。成功は、私たち全員が前例のないほどの緊急性、連帯、そして気候正義をもって行動できるかにかかっているのです」と語りました。
「指導者たちは大胆になる必要がある」
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原文(English)はこちらをご覧ください。