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変革のためのマンデート:国連、主要な改革アジェンダの一環として、業務の合理化のための提言を発表(UN News 記事・日本語訳)

2025年09月02日

かつて国連では毎日数千ページに及ぶ文書が印刷されていた©UN Photo/Yutaka Nagata(1969年6月)

202581日 -国連に付託されたマンデートによって、これまで多くの人々の生活が改善されてきました。しかしながら、重複、細分化、時代遅れの任務によって国連のリソースが圧迫され、最も支援を必要とする人々に対する支援能力が損なわれています。アントニオ・グテーレス国連事務総長は「UN80イニシアチブ」の一環として、国連をより効率的で、一貫性があり、影響力のある組織にするための一連の提言を加盟国に提示しました。

「マンデート」(総会、安全保障理事会経済社会理事会によって発出される要請または指示)は、1945年以降著しく増加しています。現在、効力のあるマンデートは4万件を超え、約400の政府間組織が遂行しています。これらは全体で、年間27,000回超の会議を必要とし、毎日約2,300ページ分の文書が作成され、年間約36,000万ドルの費用がかかっていると推定されます。

増大する課題

マンデートは、平和維持から人道対応や開発に至るまで、190を超える国と地域での国連の活動の指針となっています。しかし、その多くは時代遅れか重複し、その複雑さが増しています。2020年以降、総会決議の平均単語数は55%増加しており、現在の安保理決議の長さは30年前と比べて3倍になっています。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、8月1日に開かれた総会へのブリーフィングでこのように述べました。「事実を直視しましょう。遂行するための手段(人材と資金)がなければ、より一層大きな成果を期待することはできません。自分たちの能力をあまりにも薄く引き伸ばしてしまうと、結果よりもプロセスを重視してしまう恐れがあります」

調整不足が負担をさらに増大させています。複数の国連機関が、同じマンデートを根拠に別々のプログラムや予算を正当化しており、それが重複や、成果の低下を招いています。マンデートの85%超には、見直しや終了に関する規定が含まれていません。グテーレス事務総長は「効果的な見直しがなされることの方が珍しく、一般的ではありません。同じマンデートが毎年議論され、既存の文書にわずかな変更しか加えられていないケースがほとんどです」

国連は1989年のナミビアの選挙の認証をはじめ、世界中でマンデートを実施してきた© UN Photo/Milton Grant

UN80イニシアチブ」:体系的なアプローチ

7月31日に発表された「マンデートの履行に関するレビュー報告書」は、国連の運営方法を複数年かけて刷新するための、事務総長によるより広範な「UN80イニシアチブ」の一環です。報告書はマンデートを個別に評価するのではなく、マンデートの策定・実施・見直し方法を評価し、各段階における改善方法を提言するという「ライフサイクル」アプローチを採用しています。

グテーレス事務総長は、総会に対してこのように述べました。「極めて明確に申し上げます。マンデートは、加盟国が担うものです。それは、各国による意思の表明であり、加盟国のみが所有し、責任を負うものです。それらを作成し、見直し、廃止する重要な任務は、各国のみに委ねられています。国連の役割は、それらを完全に、忠実に、そして効率的に実施することです」

「この報告書はその役割分担尊重しています。加盟国が国連に委ねたマンデートを、国連がどう遂行するかを検討しているのです」事務総長はこう付け加えました。

作成から実施まで

この報告書は、重複や複雑化に対処するため、さまざまな組織にわたって何が採択されてきたのかを追跡しやすくするマンデートのデジタル登録の導入を呼びかけています。また、現実的なリソース要件を明示した、より簡潔で、より明確な決議を奨励しています。「遂行するための手段がなければ、より一層大きな成果を期待することはできません」グテーレス事務総長は、このように指摘しました。

この報告書はまた、会議の開催と報告書の策定による運営上の負担増も強調しています。昨年、国連システムは、27,000回もの会議を支援し、1,100件の報告書を作成していますが、そのうち6割は繰り返し取り上げられるテーマに関するものでした。グテーレス事務総長はこう述べています。「会議と報告書は不可欠なものです。しかし、こう問わなければなりません。私たちは、国連の限られたリソースを最も効果的に活用しているでしょうか?」

南スーダンにおける国連の平和維持活動、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)は、安全保障理事会によってマンデートを与えられた© UNMISS

資金調達と成果

提言には、報告書や会議の数の削減、形式の合理化、そしてその妥当性を確保するための報告書の利用状況のモニタリングが含まれています。事務総長はまた、国連の組織間で調整を強化して重複を回避し、それぞれのマンデートが明確な成果に結びつくようにすることも求めています。

この報告書は、資金調達の細分化が、一貫した実施を妨げていると警告しています。2023年、国連の資金の80%は任意拠出金で賄われましたが、その85%は用途が指定されたものでした。グテーレス事務総長はこう述べています。「細分化された資金調達と細分化された実施からは、細分化した成果しか生まれません。私たち一人ひとりに、この問題に対処するために果たすべき役割があります。そして、私たち一人ひとりが、自分がコントロールできる部分で行動を起こさねばなりません」

人々を最優先に

グテーレス事務総長にとって、改革はプロセスだけでなく、その成果も対象にしています。事務総長はこう指摘しています。「マンデートはそれ自体が目的ではありません。人々の実生活において、現実の世界の中で、真の成果をもたらすためのツールなのです」

事務総長はまた、この取り組みにおいて中心的な役割を果たしている国連職員たちを称えました。「国連の女性および男性職員がいなければ、マンデートを実施するためのいかなる活動も不可能です。この取り組みには、職員たちの専門知識、献身、そして勇気が不可欠なのです。マンデートをどのように実施するかを改善するためには、それを実行する人たちを支援し、エンパワーメントすることも必要です」グテーレス事務総長はこのように述べました。

国連のマンデートの多くは、ニューヨークの国連本部で開かれる安全保障理事会で合意される©UN Photo/Rick Bajornas

加盟国への呼びかけ

事務総長は結びの言葉として、次の行動は加盟国が起こすものであることを強調し、このように述べました。「進むべき道は、あなた方が決めるものです。私の責任は、あなた方が選択した行動指針が必要とするる能力や意見を国連事務局から提供できるようにすることです」

この報告書は、加盟国に対し、提言を前進させるための期限付きの政府間プロセスを検討し、過去の改革努力がなし得なかった分野において今回の取り組みを成功させるよう促しています。そして報告書は、その成果として、よりよくプログラムやサービスを提供する、より機敏で、より一貫性と影響力のある国連になるだろうと述べています。

UN80

  • UN80イニシアチブ」は、国連の運営を合理化し、成果を高め、急速に変化する世界における国連の適切性を再確認するための、システム横断的な取り組みです。このイニシアチブは、以下の3つのワークストリームに分類されます。
  • 1に、内部の効率性と有効性の向上、官僚的な手続きの削減、一部の機能をより低コストの勤務地に移転することで国連の世界的なオペレーションコストを最適化することに焦点を当てています。
  • 2はマンデートの履行状況の見直しであり、これは国連事務局の業務の基礎となっている何千ものマンデート文書の検証を伴います(マンデートとは、通常は総会や安全保障理事会などの主要機関によって採択された決議を通じて、加盟国から国連に与えられた任務や責任を指します)。
  • 3に、国連システム全体における構造的な変革やプログラムの再編成の必要性を探ります。
  • 最初の2つのワークストリームに基づく作業は、国連システム全体の構造的な変革とプログラムの再編成についてより広範な検討をする際に情報を提供します。

 

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原文(English)はこちらをご覧ください。