インタビュー:2025年大阪・関西万博の来場者、国連の「希望のあるビジョン」に共感(UN News 記事・日本語訳)
2025年08月28日

執筆者:ダニエル・ディッキンソン(日本・大阪)
2025年6月22日 —大阪で開催されている国際博覧会、2025年大阪・関西万博。多くの来場者は、国連が掲げる「分かち合う世界の未来」に向けた希望のあるビジョンに共感を示していると、国連パビリオンの市川奈緒美館長は話します。
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来場者たちは、平和、人権、持続可能な開発、そして気候行動への対応などといった分野で、国連が80年にわたって果たしてきた役割をたどりながら、国連システムの活動が世界中のあらゆる人々の生活にどのように影響を与えているかを知ることができます。
国連パビリオンの展示はどのような内容で、どのような目的があるのでしょうか?
展示ゾーンは4つあります。ゾーン1「タイムライン・ウォール」では国連の80年の歩みを紹介し、1945年から今日に至るまでの重要な節目を取り上げています。
また、日本と国連との関係の変遷についても紹介しています。1940年代、第二次世界大戦後の日本は、当時、国連の支援を受ける立場にありました。しかし、日本は(1956年に)国連に加盟すると、次第に様々な分野でリーダーシップを発揮するようになり、その例として気候変動問題、防災、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)など多くの分野で重要な役割を担うまでになっています。
ゾーン2では、国連機関の多様な活動を紹介しています。来場者は、トイレや交通系ICカード、車のチャイルドシート、郵便受けといった日常の身近なアイテムが数多く壁面に展示されていることに目をひかれるでしょう。一見、国連とは無関係に思えるこれらのアイテムが、実は国連の活動に密接に関わっていることを展示を通じて学んでいただけます。

モニターをタップするとアイテムが点灯し、国連の活動との関係についての説明が表示されます。
このゾーンの目的の一つは、国連は紛争解決のためだけの組織ではないと示すことです。日本では、国連というと、安全保障理事会を思い浮かべ、日本がなぜ常任理事国ではないのかと思う人が多いのではないでしょうか。
この展示は、国連の活動はその他にもたくさんあるということを、興味を引くインタラクティブな方法で伝えています。
未来を表現したゾーン3では、没入型映像を通じて、人類が団結すれば実現できる「持続可能な未来」のビジョンを紹介しています。アントニオ・グテーレス国連事務総長は映像の中で、こうした未来は自動的に訪れるものではないが、私たちが共に声をあげ行動することで実現できるものであると語っています。
パビリオンの最後には、さまざまな国連機関の活動を週替わりで取り上げる特別展ゾーンが設けられています。
なぜ国連が万博に参加することが重要なのですか?
日本人のおよそ9割が持続可能な開発目標(SDGs)のことを知っていますが、SDGsに貢献するために自分たちの生活の中で何ができるのか、そして国連がグローバルな文脈においてSDGsの実現に向けて前向きな役割を果たしていることを知る人は少ないでしょう。そのため、私たちはそうした活動を紹介したいと考えました。
万博には約160カ国が参加しており、それぞれ自国の文化を紹介しています。
しかし、各国に対して、平和と持続可能な世界の実現への協力を促せるのは、国連です。そのため、協働とマルチラテラリズム(多国間主義)が、国連パビリオンの主要テーマとなっています。
なぜそうしたメッセージが重要なのですか?
現在、世界は分断されており、日本においてもそれに対する不安が感じられます。そうした不安は、政治的な問題に限ったものでなく、環境問題や、国レベルを超えたその他のクローバル課題にも向けられています。国連パビリオンでは、そうした課題、そしてそれらに対する解決策についても学んでいただけます。
グローバルな課題の解決に貢献する国連の取り組みを紹介する国連パビリオンチームの一員であることを、私はとても誇りに思います。来場者の方々と直接交流し、国連への理解を深める手助けができることに、大きなやりがいを感じています。
多くの来場者が国連が関わる活動の幅広さに驚き、私たちのメッセージに心を動かされながら会場を後にしています。
来場者の方々からの反応で予想外だったことは何ですか?
体験型の展示以上に、事務総長のメッセージと「持続可能な未来」のビジョンを描いた没入型映像が、多くの来場者の強い関心と共感を呼んでいることです。「団結」というとてもシンプルなメッセージが込められているので、年齢や背景の異なる人々にも理解しやすいのではないでしょうか。
多くの人々がそのメッセージに心を動かされ、中には涙を浮かべる方もいらっしゃいました。

パビリオン内の映像やその他の展示を体験することで、来場者の方々は国連をより身近に感じていただけると思います。また多くの来場者にとって国連で働く日本人に直接出会うことは初めての経験であり、それもまた、国連の活動を身近に感じてもらうことにつながっています。
今日の世界の中で、万博にはどれほどの重要性や意義があるのでしょう?
トルクメニスタン出身の人々と出会える場所のすぐ近くに、マルタの人々と出会える場所がある、実際そのような場所は他にはありません。とりわけこのインターネットの時代において、これほど多くの国々の文化や価値観を直接知ることができるのは、めったにない機会だと思います。
当初は、「インターネットであらゆる情報が得られるのだから」と考え、万博の開催意義と費用に対して懐疑的で、批判的な見方をする方もいらっしゃいました。
しかし、実際に会場を訪れると、さまざまな文化を直接見て、感じて、学べることを実感されます。インターネットで記事を読んだり、YouTubeで動画を見たりするのとは全く異なる体験です。
万博会場はとても特別な場所であり、人々は心を開き、探究心を持って訪れています。
不確実性や紛争が世界に多くある中、この万博開催のタイミングは大変意義深いです。国連として、私たちは、平等、尊厳、平和を基盤として、自然との調和の中で暮らし、私たちの地球を支えながら、すべての人々にとってより良い世界を推進するためにここにいます。10月中旬の万博閉幕まで、できるだけ多くの来場者の方々と、この希望に満ちたビジョンを共有できればと願っています。
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原文(English)はこちらをご覧ください。