本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

国際司法裁判所:「各国には排出量を削減し、気候を守る法的義務がある」(UN News 記事・日本語訳)

2025年08月05日

ハーグの国際司法裁判所(ICJ)の外で意見を主張する気候活動家たち© ICJ-CIJ/Frank van Beek

2025723 オランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)は本日、気候変動に関する国家の義務について勧告的意見を発表し、岩澤雄司裁判所長が読み上げを行いました。

国連の主要な司法機関であるICJは、国家には温室効果ガス(GHG)の排出から環境を守る義務があり、この義務を履行するために相当の注意を払うと共に、協力して行動する義務があるとの判断を下しました。

この中には、気候変動に関するパリ協定に基づいた、地球温暖化を産業革命以前の水準と比べて1.5℃に抑える義務も含まれます。

ICJはさらに、もし国家がこれらの義務に違反した場合、法的責任を負い、不法行為の中止、再発防止の保証、および状況によっては全面的な補償を求められる可能性があると判断しました。

「私たちの地球にとっての勝利」

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、この歴史的な判断を歓迎するビデオ・メッセージを発表しました。事務総長は前日に加盟国に向け特別演説を行い、再生可能エネルギーへの世界的な移行は止められないと強調しました。

「これは、私たちの地球、気候正義、そして変化をもたらす若者たちの力にとっての勝利です」グテーレス事務総長は、このように述べました。

ICJの論拠

ICJは、今回の判断の根拠として、加盟国による環境および人権に関する諸条約へのコミットメントを挙げました。

まず、加盟国はオゾン層に関する諸条約、生物多様性条約京都議定書パリ協定などのさまざまな環境条約の締約国であり、そのため世界中の人々と将来世代のために環境を保護する義務を負っています。

さらに、「クリーンで健全で持続可能な環境は、多くの人権を享受する上での前提条件である」ため、加盟国は世界人権宣言などの数多くの人権に関する条約の締約国であることから、各国はこうした権利の享受を保障するためにも、気候変動に対処することが求められています。

事案の背景

2021年9月、太平洋島嶼国のバヌアツは、気候変動に関してICJの勧告的意見を求める意向を表明しました。このイニシアチブは、若者団体「気候変動と闘う太平洋島嶼国の学生たち(Pacific Island Students Fighting Climate Change)」に触発されたもので、同団体はとりわけ小島嶼国において、気候変動に対処すべく行動を起こす必要があることを強調しました。

バヌアツが他の国連加盟国に対し、総会でこのイニシアチブを支持するよう働きかけた後、2023年3月29日、総会は次の2点について、ICJに勧告的意見を求める決議を採択しました。(1)環境保護を確実なものとする上で、国際法上で国家が負っている義務とは何か、そして、(2)これらの義務の下で国家が環境に被害を及ぼした場合、その国に生じる法的な結果とはどのようなものか、という点です。

国連憲章においては、総会または安全保障理事会は、ICJに勧告的意見を求めることが認められています。勧告的意見に法的拘束力はないものの、相当の法的・道義的権威を持ち、加盟国の法的義務を規定することで国際法の明確化や発展に寄与しています。

今回は、ICJがこれまでに扱った中でも最大の事案であり、それは陳述書の数(91件)や口頭審理に参加した加盟国数(97カ国)からも明らかです。

「世界法廷」

ICJは非公式には「世界法廷」としても知られ、国連加盟国間の法的紛争を解決し、国連の主要機関や専門機関から諮問された法的問題について勧告的意見を与えます。

ICJは、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、事務局と並ぶ国連の主要6機関の一つであり、その中で唯一、ニューヨーク以外に本部を置いています。

* *** *

原文(English)はこちらをご覧ください。