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国連海洋サミット、押し寄せるコミットメントの波とともにニースで閉幕(UN News 記事・日本語訳)

2025年07月24日

フランスとコスタリカが共催した国連海洋会議(UNOC3)では、60名を超える各国首脳も含め、約1万5,000人が参加してフランスの地中海沿岸都市ニースで開催された © Taryn Schulz

執筆者:ファブリス・ロビネット(フランス、ニース)

2025613日 — ニース港に停泊した多くの船が汽笛を鳴らし、第3回国連海洋会議の閉幕に世界が一致団結した貴重な瞬間を祝いました。この直前に、170を超える国々が、海洋保護のための緊急行動を約束する包括的な政治宣言をコンセンサスで採択しました。

「私たちはこの歴史的な1週間を、単に希望だけでなく、具体的なコミットメント、明確な方向性、そして確かな気運の高まりとともに締めくくります」国連海洋サミットの事務局長を務めた李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長は、記者団にこう述べました。

フランスとコスタリカの共催による5日間のサミットでは、60名を超える各国首脳も含め、約15,000人が参加者がフランスの地中海沿岸都市に集結しました。

450を超えるサイドイベントが開催され、10万人近いビジターを集めたUNOC3と呼ばれるこの会議は、ニューヨーク2017年)とリスボン2022年)で開催された過去の海洋サミットの気運を継承したものです。海洋保護を拡大させ、汚染を抑制し、公海を規制し、脆弱な立場に置かれた沿岸国や島嶼国への融資を動員する共同呼びかけで締めくくられました。

ニースにて閉会の記者会見を行う、李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長。UNOC3の事務局長を務めた ©UN DESA

野心的な誓約

「ニース海洋行動計画」と呼ばれる本会議の成果は、1つの政治宣言と、前回のサミット以降に各国政府、科学者、国連機関、市民社会から提出された800を超える自主的なコミットメントからなる、二部構成の枠組みです。

「これらは、若者によるアドボカシーから、深海生態系に関する知識の向上、科学・イノベーションにおける能力開発、政府間条約を批准するための誓約に至まで、多岐にわたります」李事務次長はこのように述べました。

今週発表された誓約は、広範に及ぶ海洋危機を反映する内容でした。欧州委員会が、海洋保護、科学、持続可能な漁業を支援すべく10億ユーロの投資を表明した一方、フランス領ポリネシアは、その排他的経済水域全体(約500万平方キロメートル)にかかる世界最大の海洋保護区域を設けることを誓約しました。

ドイツは、バルト海と北海の水中に沈んだ弾薬を除去するための1億ユーロ規模のプログラムを立ち上げました。さらにニュージーランドは、太平洋の海洋ガバナンスの強化に向けて5,200万ドルを拠出することを約束しスペインは5つの新しい海洋保護区域を発表しました。

パナマとカナダが主導する37カ国の連合は、海中の騒音問題に対処するための「静かな海洋のための高い野心連合」を発足させました。一方、インドネシアと世界銀行は、同国のサンゴ礁保全のための資金調達を支援する「サンゴ債券」を導入しました。

李事務次長はこう述べています。「変化の波が起こっています。私たちの連帯責任として、その波を前進させる必要があるのは今です。人々、私たちの地球、そして将来世代のために。」

ニースにてUNOC3の閉会の記者会見を行う、サミットのフランス特使、オリヴィエ・ポワブル・ダルヴォール氏(右)©UN DESA

外交の舞台

国連海洋サミットは69日に、厳しい警告とともに開幕しました。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、コスタリカのロドリゴ・チャベス・ロブレス大統領と共に、「私たちは、海洋をその本質である“究極のグローバル・コモンズ”として扱っていない」と述べ、科学に根差したマルチラテラリズム(多国間主義)の刷新を呼びかけました。

6月13日、サミットのフランス特使であるオリヴィエ・ポワブル・ダルヴォール氏は、その重要な決定を次のように振り返りました。「私たちはニースで、(中略)変革に賭けたてみたいと考えていました。前進はしたと思いますが、もはや後戻りはできません」

会議の主な目的の一つは、国際水域の海洋生物を保護するために2023年に採択された、BBNJ協定とも呼ばれる「公海条約」の前進を加速させることでした。この条約の発効には、60カ国の批准が必要です。この一週間で19カ国がこの協定を批准し、13日時点での批准国は、計50カ国となりました

ポワブル・ダルヴォール氏はこう述べています。「これは重要な勝利です。米国がほぼ関与していない今、海洋問題に取り組むことは大きな困難を伴います」

同フランス特使は、米国の高官の出席が見送られたこと、そしてドナルド・トランプ米大統領が最近、深海採掘を進める大統領令を発したことを示唆し、今週初めのマクロン大統領の発言を繰り返す形で、「深海は売り物ではない」と述べました。

それでも、ポワブル・ダルヴォール氏は、サミットで達成された幅広い合意を強調し、こう述べました。「1つの国が欠席したかもしれませんが、本日ニースには、『共同所有者』の92%が参加したのです」

サミットのコスタリカ特使を務めたアルノルド・アンドレ・ティノコ外務大臣は、他の国々に向けて、海洋保護のための資金調達を加速させるよう促しました。「一つひとつのコミットメントを果たすことに責任を負わねばなりません」同氏はサミットの閉会式で、このように述べました。

UN Newsの取材に答えるピーター・トムソン海洋担当国連事務総長特使 © UN Video/Brianna Rowe

高まる気運、そして今後の試金石

ピーター・トムソン海洋担当国連事務総長特使にとって、ニースは転換点となりました。特使は、海の豊かさに関する持続可能な開発目標(SDGs)の目標14SDG14)が初めて設定された海洋アドボカシーの初期の頃を振り返りつつ、UN Newsに「会議で何が起きるかよりも、その後に何が起きるかが重要」だと語りました。

「私たちは、2015年当時の『砂漠』のような状況から……今、こうした素晴らしい取り組みが見られるところまで来ました」今後については、2028年にチリと韓国が共催予定の第4回国連海洋会議へすでに注目が移っています。

「そこで再び、大きな進展があるでしょう」トムソン氏はそう予見しており、BBNJ条約、WTOの漁業補助金協定、将来的な国際プラスチック条約を含めた主要な国際協定が、その時までにすべて批准され、履行されていることを期待すると述べました。

2028年のサミットもまた、SDGsの目標142030年の達成期限に近づく中で、重要な分岐点となるでしょう。

トムソン氏はこう述べています。「2030年に目標14が期限を迎えたとき、私たちはどうすべきでしょうか?明らかに、野心をさらに高める必要があります。目標をより強固なものにするのです」同氏は、目標142020年までに海洋の10%を保護することを目標としていたものの、これは達成されなかったとし、新たなベンチマークは2030年までに30%を保護することだと強調しました。

マーシャル諸島から贈られた貝のネックレスを身に着けたフィジー出身のトムソン氏は、小島嶼国や環礁共同体が野心的な海洋保護策を設定したことを称賛しました。

氏はこう述べています。「小さな国々がそうした大きな措置を講じることができるのに、なぜ大国はそれに倣おうとしないのでしょう?」

トムソン氏はまた、サミットに先立って開催された「ワン・オーシャン科学会議」に集まった2,000人の科学者たちを称え、「素晴らしい運営だった」と述べました。

団結の表明

祝賀ムードがあるにもかかわらず、緊張は消えませんでした。小島嶼開発途上国(SIDS)は、「損失と損害」(気候変動によって生じる、人々の適応範囲を超える害)に関して、より強い表現を求めており、ある代表は今週初めに、「SIDSを排除した海洋宣言はあり得ない」と警告していました。

コスタリカのチャベス大統領を含む他の代表たちは、科学的にリスク評価ができるまでは国際水域での深海採掘を一時停止するよう求めましたが、この措置は最終宣言には盛り込まれませんでした。

それでも、ニースで採択された「Our ocean, our future: united for urgent action(私たちの海洋、私たちの未来:緊急行動のための団結)」と題する政治宣言は、2030年までに海洋と陸地の30%を保護する目標を再確認するとともに、昆明・モントリオール生物多様性協定2022年に採択され、各国が野心的な保全目標と持続可能な生物多様性管理を通じて2030年までに自然の喪失を食い止め、逆転させることを約束)や国連の国際海事機関IMO)の気候目標などのグローバルな枠組みを支援するものです。

「真の試金石は、私たちがここニースで何を言ったかではなく、これから何をするかです」と李事務次長は述べました。

海岸遊歩道プロムナード・デ・ザングレの彼方に夕日が沈み、サミットの最終全体会合が閉会を告げた時、その脆弱ながらも共通の約束を、太古から続く、生命に満ち、そして今危機に瀕する海は、ただ静かに見守っていました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。