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COVID-19:国連、文化の力で希望と連帯をつなぐ(COVID-19関連記事・日本語訳)

2020年05月21日

国際ジャズ・デーのバーチャル・グローバル・ジャズコンサートで、自宅から演奏をライブ配信するアーティストたち©UNESCO

COVID-19:国連、文化の力で希望と連帯をつなぐ

2020年5月6日 ー 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により今年の国際ジャズ・デー記念コンサートが中止になると、4月30日に南アフリカのケープタウンで開かれるはずだったコンサートに出演を予定していたミュージシャンたちは、自宅から生演奏をライブ配信することに決めました。

著名なジャズ・ピアニストのハービー・ハンコック氏は、このバーチャル・コンサートで開会の辞を述べ、2011年に国連教育科学文化機関(UNESCO)が初めて宣言した国際ジャズ・デーには「年齢や民族、ジェンダー、信条を異にするあらゆる人々が力を合わせ、私たちの共通点は間違いなく、相違点よりもはるかに強いことを立証する」という目的があると述べました。

UNESCOの文化間対話担当親善大使も務めるハンコック氏は、ジャズを「勇気を勇気づける」存在と捉えています。全世界のミュージシャンたちは、最前線の対応者として「来る日も来る日も、私たちのために自らの安全を危険にさらしながら、たゆまぬ努力を続ける」医師や看護師、科学者、医療従事者の一人ひとりに敬意を表し、楽曲を披露しました。

出演者の一人で、ジャズ界の伝説的サックス奏者のウェイン・ショーター氏は「音楽が与えてくれるのは、勇敢な恐れを知らぬ心」だと語っています。

音楽に世界的な連帯を促す力があることを実証したこのイベントは、国連が支援する数多くの文化的なCOVID-19対策の一つです。

UNESCOによると、128カ国で文化施設が閉鎖されています。全世界に6万カ所ある美術館や博物館のおよそ90%が全面的、部分的または最終的な閉鎖の危機に直面していると見られます。伝統的なフェスティバルのほか、多数の幅広いイベントが中止に追い込まれ、コミュニティーの文化的生活や、季節労働者的な性質の強いクリエイティブ専門職の所得に影響が出ています。

こうした困難にもかかわらず、アフリカのアーティストたちは、政策のためのイノベーション財団(i4Policy)とのパートナーシップでUNESCOが立ち上げた#DontGoViralキャンペーンを通じ、COVID-19とウイルスに関するデマの克服に向けて結集しています。

ウガンダのミュージシャンで国会議員も務めるボビー・ワイン氏はキャンペーンの発足にあたり、自身の最新ヒット曲『Corona Virus Alert(コロナウイルスにご用心)』をオープンライセンスとしていることを発表しました。また、その他のアーティストにも追随を促すとともに、全世界のクリエイティブの仲間にもキャンペーンへの参加を呼びかけました。このキャンペーンの主眼は、COVID-19の流行対策に関する認識を高める手段として、アフリカの現地語で文化的に適切な公開情報へのアクセスを確保する必要性を訴えることにあります。

キャンペーン参加者に対しては、表現するテーマとガイドラインをすべて、それぞれの正式な保健機関と国際保健機関(WHO)の提言に適合させることが求められています。

「イノベーターやアーティストの発言力と影響力や、文化・クリエイティブ産業が情報発信と啓発に果たす役割は、どれだけ評価しても足りません」UNESCOはこのように述べています。アーティストは、その才能と多様な文化的表現形態を活用することにより、ファンやフォロワーとの間で不可欠な情報を共有、拡散するとともに、膨大な数の聴衆にリーチすることにより、人々を危機への対応に巻き込むことができるからです。

同様に、WHOとGlobal Citizenが4月18日に開催したバーチャル・コンサート「One World: Together At Home(世界は一つ:家で一緒に)」では、COVID-19に対応する組織に対する支援として、1億2,700万ドルを超える寄付が集まり、その中にはWHOの連帯対応基金への拠出金5,500万ドルが含まれています。レディー・ガガ氏がキュレーターを務め、ライブ配信とTV放送されたこのイベントでは、医師や看護師のほか、パンデミックを乗り切ろうとする家族の姿も映し出されました。

World Digital Library Photo: UNESCO

その他、ミュージシャンやダンサー、視覚芸術家や作家も、オンラインで作品を披露し、全世界で数限りない取り組みを展開しています。

本の読み聞かせ

人気の高い児童文学作家たちは、COVID-19の世界的流行を受け、隔離状態で暮らしている数百万人の子どもと若者向けに、自作の本の抜粋を朗読するイニシアティブ「Read the World(世界を読む)」に参加しています。この取り組みは、国際出版連合(IPA)、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)の協力によって実現しました。

「子どもたちの暮らしと日課は、わずか数週間の間に大混乱に陥りました」ヘンリエッタ・フォアUNICEF事務局長はこう語っています。「外の世界に出られなくなっても、子どもや若者は読み聞かせによって、本が与えてくれる無限の疑似体験の力を改めて実感できるのです」

博物館・美術館

レバノンの博物館と美術館は、バーチャル・ツアーとモバイルアプリを一般公開しています。「私たちはこの苦境を切り抜けます。私たちは今、COVID-19が去った後の博物館や美術館のプログラムの再編を念頭に置いています」博物館会議のアンヌ・マリー・アフェシュ事務局長はこう語っています。「私たちは文化を救うことで、社会とその多様性、活力、そして創造性を救っているのです」

Photo: UNESCO

セネガルのダカールにある黒人文明博物館も、早急に行動を起こしました。ハマディ・ボクーム館長は、COVID-19の影響で閉館してから、専門家を動員し、全展示品のガイドツアーを撮影したと語っています。「数回に分けてセネガルのテレビで放映し、オンラインでも公開する予定です」

世界遺産

約9割の国が、UNESCO世界遺産登録地を全面的または部分的に閉鎖しています。

ンゴロンゴロ・クレーターの絶景を誇り、多数の野生生物の群れが暮らすタンザニア連合共和国の世界遺産ンゴロンゴロ保全地域は、地球上でも最大級の自然の驚異に数えられています。フレディ・マノンギ保全委員によると、パンデミックによっても閉鎖されることなく、ウェブカメラを駆使したバーチャル見学を企画し、オンラインでその景色を楽しめるようになっています。

UNESCOは#ShareCultureキャンペーンを通じ、芸術を愛する気持ちを伝え、できるだけ多くの人々と共有するよう、あらゆる人に呼びかけています。同じくUNESCOによる「ResiliArt(芸術の復元力)」運動は、著名なアーティストや専門家との世界的なバーチャル討論シリーズを制作し、文化的生活を支援する必要性に関心を集めています。

文化の重要性を訴える連帯を表明するため、130人を超える文化担当の大臣と副大臣がUNESCOのオンライン・ディスカッションに参集し、文化部門を支える方法について話し合いました。文化は今回の危機で真っ先に影響を受けた部門の一つであるにもかかわらず、財政支援が最も後回しになることが多いからです。

多くの参加者は、文化が共有の人間性を集団的に体験する手段であり、安全性が確認され次第、人と人との触れ合いを再び活性化することが重要だと指摘しました。中には「仮想世界で簡単に再現できない」文化に対する支援の必要性を強調する向きもありました。

芸術家への支援

数人の大臣は、芸術家とクリエイティブ専門職の暮らしを短期的に守るため、国内で緊急資金援助策が導入されていることを明らかにしました。

「文化がなければ未来はありません。」UNESCOのエルネスト・オットーネ・ラミレス文化担当事務局長補はこう語ります。「文化がなければ、共にレジリエンスを育てることも、私たちが連帯することもできないのです」

執筆者について

グローバル・コミュニケーション局

国連グローバル・コミュニケーション局(DGC)は、国連の活動に対するグローバルな認識と理解を推進します

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原文(English)はこちらをご覧ください。