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移住について

プレスリリース 18-062-J 2018年09月18日

©IOM/Muse Mohammed

• 移住は世界の現実です。現時点で、世界には約2億5,800万人の移民がいます。移民全体を合わせると、世界で5番目に大きな国ができ上がります。

• 移住は複雑な現象です。これによって、国家主権、何をもって自発的移動とみなすか、社会的一体性を確保するにはどうしたらよいかなど、奥の深い問題が提起されます。

• 多くの中心的な移住問題は、簡単に説明できるものではありません。

  • 正規移民が誰かを特定することは簡単であるものの、現実の問題として、何をもって非正規移民とするかを判定することは、より難しい可能性があります。
  • 開発と移住の関係も複雑です。移住が開発にとって利益になるという主張を裏づける証拠は数多くあるものの、開発が移住に与える影響は、それほどはっきりとしていません。
  • 移住の決定は、プッシュ要因(経済的な豊かさの追求、劣悪なガバナンスや深刻な貧困からの逃避、気候変動の影響など)とプル要因(フォーマル、インフォーマル経済双方の就業機会など)が相まって下されるもので、移住の動機を単一の要因に求められることはほとんどありません。
  • 移民と難民の法的な区別ははっきりとしているものの、実際の現場では、さほどはっきりとした区別ができないことも多くあります。

• 移住によって受ける影響は、国によって異なります。人口増加(または減少)、労働市場のニーズ、最近の歴史的経験、現状、将来的なニーズなど、あらゆる要因が、この問題に関する各々の考え方や理解を左右するからです。

• 移民の大半は、国内法に従い、統制の取れた形で移動しています(ただし、この場合でも、虐待的労働慣行などを通じ、移民が脆弱な立場に置かれることもあります)。

– 移住の多くは南南間で生じています。2017年の時点で、国際移民全体の38%は、開発途上地域の国に生まれ、別の開発途上国に居住している(南南移民)のに対し、開発途上国に生まれ、先進国で暮らす移民(南北移民)は、全体の35%となっています。

– 国家を出身国か目的地国に分ける考え方は、いささか短絡的すぎます。より多くの国が、その両方の様相を呈してきているからです。2017年の時点で、ギリシャは93万3,155人の移民の出身国となる一方、122万395人の移民の目的地国にもなっています。エチオピアは、80万879人の移民の出身国である一方で、122万7,143人の移民の目的地国となっています。

• 移民は全世界のGDPの10%近くを生み出し、世界人口の3~4%を占めています。

• 移民の収入の85%以上は、目的地国で使われています(非正規移民も、納税や通常の消費などを通じ、受入国の経済に貢献しています)。

• 移民による開発途上地域への送金額は、政府開発援助(ODA)の3倍に上ります。

• 2000年以来、移動中に死亡した移民は6万人を超えています。

• 非正規移住は、国家主権に挑戦を投げかけると同時に、非正規移民自身にとっても脅威となります。人身取引や略奪的な密入国あっせん業者、虐待的雇用主に対する立場が弱くなる一方で、移住を否定的に見る意見に勢いを与えるからです。

• こうした課題と脅威をどう減らすかは、複雑な問題です。国家には、非正規移民を送還する権利がありますが、これがすべての解答ではありません。合法的な道を広げることにも、労働市場の需給ギャップをあらゆる技能水準で埋めたり、庇護制度に対する圧力を和らげたり、移民が直面する危険を減らしたりといった点で、利益があるからです。

• 移住は必ずしも永住である必要はありません。移住の歴史を見ても、そこには季節的または循環的な動きが多く見られます。技能訓練に対する革新的なアプローチには、この手法に回帰するための方法を示唆するものがあります。西アフリカでは、循環的な移住が、経済生活と文化生活の根幹をなしています。例えば、ニジェール人はコートジボワールやナイジェリアに移住し、農作業や季節労働に従事しながら、その技能も高めています。

• 2カ国の政府間覚書(MOU)を通じて運営される非季節的臨時労働移住プログラムの一例として、雇用許可制度(EPS)が挙げられます。20世紀の大半を通じ、移民の正味流出国となっていた韓国は、21世紀に入ると、特に中小・中堅企業や農業部門で働く他のアジア諸国からの労働者を中心に、移民の明らかな目的地国へと変わっています。

技能パートナーシップの創出も、将来性のあるアイディアと言えます。これは、ある国の政府または雇用主が、その具体的な労働市場でのギャップを埋めるために、他国での訓練に資金を提供できる仕組みで、これによって最終的に「頭脳循環」を活発化できる可能性があります。

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