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2011年 国連の8つの優先課題

プレスリリース 11/011-J 2011年02月23日

2011年に国連が掲げる8つの優先課題

「国連の加盟国である皆さんは、今までよりも更に多くを国連に求めることによって、この組織に対する信頼を示していることを承知しています」。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は1月14日、年初の国連総会演説の中でこのように切り出し、気候変動から核軍縮、持続可能な開発に至るまで、また、人権の推進から女性のエンパワーメント、そして国連自身の強化に至るまで、広範囲の課題に取り組む上で加盟国の継続した連携が欠かせないと呼びかけました。潘事務総長は、2011年の8つの優先課題を挙げ、協調的な取り組みによって特に大きな成果が期待できる同分野での協力を訴えました。以下は事務総長による演説からの抜粋です。なお、演説の全文(英語)は以下のサイトで読むことができます。
http://www.un.org/apps/news/infocus/sgspeeches/search_full.asp?statID=1044

1.インクルーシブで持続可能な開発

グローバルな景気低迷の影響は、今も世界の隅々で感じられます。人々は仕事、治安、子どもの未来に不安を感じ、特に最も貧しく弱い立場に置かれた人々の状況は深刻です。私たちは、昨年のMDGサミットで決まった5カ年行動計画の実現に努めます。その中には、「女性と子どもの健康の実現に向けたグローバル戦略」の推進、HIV/エイズ、マラリア、結核など致死的な疾病への対策を継続することが含まれます。

後発開発途上国(LDCs)は深刻な貧困と飢餓に直面し続けています。5月にイスタンブールで開催予定の国連LDC会議では、食料と栄養の安全保障、ディーセント・ワーク、災害リスク軽減などを支援する「LDC開発のための新10カ年行動計画」の採択を図ります。また、来年のリオ+20会議に向けて、持続可能な開発とその経済、社会、環境面の柱を政策立案の中心に据えるための機会となります。

2.気候変動交渉と国家レベルの行動

昨年、名古屋で開催された生物多様性に関する会議での前進や、メキシコ・カンクンでの気候変動に関する重要な進展など、今後の取り組みに向けた土台は数多く存在しています。私たちはこうした動きを、12月に南アフリカで開催される国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)へと引き継いでいきます。

3.女性のエンパワーメント

気候変動や開発、平和と安全など、どのような課題を考えた場合も、女性をビジョンに組み入れた方が、世界はより良い成果を得ることができます。だからこそ、UN Womenという主要な新機関とともに新年のスタートを切れることを誇りに思います。UN Womenは、私たちが共通の価値観に基づき、共通の努力を続けてきた産物です。UN Womenを世界各地での変革と女性のエンパワーメントを推進する原動力へと発展させる必要があります。

4.より安全で安心な世界

私たちは世界各地で、危機や重大な移行期を迎えている加盟国と地域パートナーに対する支援を増大すべく協力していきます。現在、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)やアフリカ連合(AU)とともに、コートジボワール国民の意思を支持しているのもこのためです。私たちは、アフリカ全土で民主主義を支援するという強力なシグナルを送ります。

スーダンでも、国際パートナーとともに、和平に向けた密接な協力を行っています。国民投票は大きな事件もなく、順調に行われました。投票率も極めて高くなっています。しかし、最大の難関はこれからです。私たちは国境線、人々の移動、資源の共有、アビエなど、多くの困難な問題の解決を支援せねばならないからです。

ダルフールでも警戒を続けています。国連による民間人保護、治安確保および人道援助提供の取り組みは、当事者間の恒久的和平交渉に対する支援とともに、休みなく続けられています。アフガニスタンからイラク、ソマリアから中東、ネパール、さらにその先に至るまで、困難な課題への対応を続けていきます。

5.人権とアカウンタビリティ

国連は世界をアカウンタビリティ(説明責任)の時代へと導くため、国際刑事裁判所(ICC)の強化をはじめ、努力を続けています。旧ユーゴスラビアやルワンダなど、各地に設けられた裁判所は正義をもたらしてきました。

この1年間、私たちは加盟国と協力し、人権の擁護と人道法の前進に努めていきます。保護の責任を遂行できるよう、加盟国や地域・小地域グループとの連携も図っていきます。人権理事会の見直しにより、加盟国には、国際舞台での人権問題の検討を飛躍的に向上させ、勧告のフォローアップを確保できる機会も訪れています。

6.重大な人道危機への対応の改善

昨年はハイチからパキスタンに至るまで、抗し難い災害が頻発しました。こうした危機の規模の大きさから、重要な教訓を改めて学ぶことになりました。

資源の最も効果的な利用と、危機に対する真にグローバルな対応を最も効率的に管理するためには、さらに努力が必要です。今後、学んだ教訓を生かし、リーダーシップの強化や現地での活動を迅速に本格化できる能力の育成に努めます。また、災害リスクの軽減、災害への備え、そして気候変動への適応措置をよりよく統合することにも取り組んでいきます。

7.核軍縮・核不拡散

核不拡散条約(NPT)再検討会議の成果、核軍縮と核不拡散に関する事務総長の5項目行動計画の前進、米国とロシアの戦略兵器削減交渉(START)など、昨年は大きな進展が見られました。引き続き、私たちは包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准と、2010年NPT再検討会議で合意された公約の全面履行を強く求めていきます。

さらに具体的な行動のために、私は軍縮会議(CD)の活動を再活性化すべく、加盟国への働きかけを続けていきます。核セキュリティーと核テロの問題にも、さらなる取り組みを図っていきます。

8.国連の強化

より現代的で柔軟な、かつ、21世紀の課題によりよく立ち向かうことのできる国連の構築を決意し、2011年をスタートさせています。具体的には、国連がその人材と資金を管理する方法を刷新する、移動性と機動性の高い人員体制を構築する、若手専門職員の能力を活用するための取り組みを活発化させる、加盟国の協力を求めながら予算プロセスを改善することなどが挙げられています。

【2011年の優先課題に関連する今後の予定】

1/24:軍縮会議・第1セッション開始(ジュネーブ)
2/24:UN Women 発足記念イベント(ニューヨーク)
2/28-3/25:人権理事会第16会期(ジュネーブ)
3/7-8:国連持続可能な開発委員会第2回準備委員会(ニューヨーク)
5/9-13:第4回国連後発開発途上国(LDC)会議(イスタンブール)
5/29:国連平和維持要員の国際デー(世界各地)
9/12-30:人権理事会第17会期(ジュネーブ)
11/28-12/9:国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)(ダーバン、南アフリカ共和国)
12月:地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル報告(ニューヨーク)

会議予定に関する国連サイト(英語)www.un.org/en/events/

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8つの優先課題を掲げる潘基文(パン・ギムン)国連事務総長
2010年9月に開催されたMDG サミット
国連の気候変動交渉(COP17)は12月、南アフリカのダーバンで開催予定
新機関のロゴを掲げるミチェル・バチェレUN Women初代事務局長(2011年1月)
南部スーダンの独立の是非を問う住民投票が行われた(2011年1月)
安全保障理事会に報告を行うルワンダ国際刑事裁判所所長(2010年6月)
食料配給を受けるパキスタン洪水の被災者たち(2010年8月)
長崎の原爆落下中心碑に献花を行う潘基文(パン・ギムン)事務総長夫妻(2010年8月)
21世紀の課題に立ち向かうことのできる国連を構築する