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「国連と日本のPKO20年」シンポジウム開催:これまでの成果と今後の課題を議論

2012年11月08日

国連の平和維持活動(PKO)に日本が初参加してから20周年を迎えた今年は、国連にPKO局が設立されて20周年の節目の年でもあります。この機に、これまでPKOが果たしてきた役割を振り返り、今後の日本の貢献のあり方を考えようと、東京・渋谷の国連大学で11月5日、記念シンポジウム「国連と日本のPKO20年-新たな課題への対応-」(外務省・国連広報センター主催)が開かれました。平日にもかかわらず、会場にはこれまでPKOに関わってきた国際機関や行政の担当者、NGO関係者、学生らが多数詰めかけて満席となり、登壇者に鋭い質問を投げかけて、議論を盛り上げました。

シンポジウムは玄葉光一郎外務大臣のあいさつで開幕。玄葉大臣はこの20年間で、自衛官、警察官その他の文民を合わせて、日本からのべ7,800人が13のPKOに参加した実績を紹介し、9月末現在、G8でもイタリア、フランスに次いで3番目の規模である点を強調しました。また、現在要員を派遣しているゴラン高原、ハイチ、南スーダンでも、プロ意識や規律の高さなど「質」が評価されていることを挙げ、「わが国の技量、力量を国連PKOへの積極的参加のためにいかに活用するか、PKO法改正も含めて大いに検討していく必要がある」と力を込めました。

続く第1部では、国連エルベ・ラドスーPKO担当事務次長「PKOの最近20年~国連の視点から」と題して基調講演をしました。世界の危機が多様化する中で、国連PKOの役割が平和維持だけでなく、平和構築、文民保護も含む形で多面化していると解説。特に、90年代のルワンダやボスニアの教訓からその重要性が強調されるようになった文民保護については、現行PKOの半数ですでに実施されており、今後ますます需要が高まると予想しました。一方、加盟国からの要員派遣については、開発途上国がその大半を担う形で南北格差が広がっていると指摘。日本に対しては、高度な専門技能を持った自衛官の派遣を継続するだけでなく、他国の部隊の能力向上や、PKOへの協力を取り付けるための政治的な役割も果たしてほしいと、さらなる協力を求めました。

これに対し、コメンテーターを務めた神余隆博・関西学院大学副学長は、外務省の担当者としてカンボジアやモザンビークへの自衛隊派遣に携わるなど、長年PKOに関わってきた立場から、現状の課題を指摘。中でも文民保護については、PKOが大量虐殺を食い止めるといった「保護する責任」を担うことまで想定しているのかなど、国連安全保障理事会とPKO局の認識について疑問が投げかけられました。

第2部では髙橋礼一郎・内閣府国際平和協力本部事務局長が、「日本のPKO参加20年の歩み」を報告。法的な制約の中でも着実に実績を積み重ね、国民の支持も高まっている日本のPKOの現状に触れ、今後は「国連PKO自体の変化に即した協力が日本にできるような改革を行わなくてはならない」と主張しました。ともに登壇した折木良一・防衛大臣補佐官は、最近まで統合幕僚長を務めた経験から、自衛隊がより多様な任務を果たし、他国の部隊を防護できるようにするための政策、法制整備を求めました。

第3部のパネル・ディスカッションでは、日本、国連および関係国の実務家・有識者を交え、3つの論点のもとで議論が行われました。モデレーターを務めるのは星野俊也・大阪大学教授です。

はじめに「国連PKOの抱える課題」について、米ニューヨーク大学国際協力センターリチャード・ゴーワン氏と、国際大学学長政策研究大学院大学教授北岡伸一氏が意見を述べました。ゴーワン氏は、アフリカでのPKOの多くが長期化している現状を指摘し、PKOは恒久的であってはならず、出口戦略をいかに描くかを課題に挙げました。北岡氏は、政治的争いによる部隊派遣の困難さから、政治的秩序をいかにつくり出すかが課題だと述べるとともに、PKOは当事国の意思を尊重し、その国民が主導して平和構築を行う必要があるとしました。

第二に「PKOにどのような改革が求められるか」という問いに対し、ラドスーPKO担当事務次長ゴーワン氏が意見を述べました。ラドスー氏は、国連がいかに地域機構と協力しながら平和構築に取り組むかが改革の要だと指摘し、パートナーシップを尊重した協力の必要性を訴えました。ゴーワン氏は、PKOと国連政治局の主導する特別政治ミッション(SPM)のすみ分けについて言及。明確に区別することよりも、重要なのは異なるツールを異なるケースで柔軟に使いこなすことだと述べました。

第三に「今後のPKOと日本の役割」について、防衛大学校幹事の田邉揮司良氏国連日本政府代表部特別代表を務める西田恒夫氏が意見を述べました。田邉氏は、これまで日本が培ってきたPKOでの経験を内外へいかに発信していくか、また、派遣要員の人材育成の重要性について強調しました。西田氏は、PKOの課題である「国づくり」と「女性と紛争」のテーマは、すなわち国連の課題である「開発」と「人権」に密接に関係していると指摘。政府開発援助(ODA)、PKO法の改正なども含めて、日本はどこまで世界の平和と安全にコミットするのかを、大きな観点で考えるべきだと述べました。そして、日本が主要なステークホルダーであり続けるためには何が必要かを、議論しなければならないと締めくりました。

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開会挨拶を行う玄葉光一郎 外務大臣
第一部・基調講演を行うエルベ・ラドスー国連PKO担当事務次長
基調講演のコメンテーターを務める神余隆博・関西学院大学副学長(左)
平日の開催にも関わらず、会場の国連大学ウ・タント国際会議場には300人を超える参加者が詰めかけ、熱心に議論に耳を傾けた
第二部「日本のPKO参加20年の歩み」では、髙橋礼一郎内閣府国際平和協力本部事務局長(右)と折木良一・防衛大臣補佐官が報告を行った
第三部パネル・ディスカッションでは、5人のパネリストが登壇し、国連PKOの課題や日本の役割について議論を交わした
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